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48 HoursIF3: 台湾海峡 2026ー新空母あかぎとF15Jが挑む極限の防空戦ー  作者: 八咫 日本


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第2話:02:00 洋上の巨大な壁

漆黒の海に、白く長い航跡が幾筋も刻まれていた。

台湾海峡の中央を突き進むのは、中国人民解放軍海軍の075型強襲揚陸艦を中核とした大艦隊である。その周囲を055型駆逐艦などの水上戦闘艦が固め、水平線の彼方まで続く巨大な壁を形成していた。

「洋上迷彩を確認。距離40マイル。敵前衛の駆逐艦隊です」

波濤をかき分けて激走する台湾海軍の「沱江級」ミサイルコルベット艦の船内は、赤い戦闘配置灯に照らされていた。満載排水量わずか700トン弱のステルス双胴船。圧倒的な巨艦の群れに立ち向かうには、あまりにも小さく無謀な存在に見えた。

しかし、彼らの腹の下には、台湾が誇る至宝――超音速対艦ミサイル「雄風III型」が装填されている。

「敵のレーダー波、ますます濃密になっています。本艦のステルス形状でも、これ以上接近すれば捕捉されます!」

「問題ない。データリンクは死んでいる。陸上からの情報支援は期待するな。我々の目で敵を凝視し、我々の手で引き金を引く!」

艦長が叫ぶと同時に、コルベット艦の船体から、凄まじい爆風とともに雄風III型が撃ち出された。低空を這うように飛翔し、マッハ3の超音速で中国艦隊へと突き進む。陸上の移動式発射台からも、残存する対艦ミサイルが同時に放たれ、波間を掠めるように殺到した。

「敵ミサイル接近!」

中国艦隊の旗艦である055型駆逐艦の戦闘指揮所では、迎撃オペレーターが淡々と声を上げた。

中国側が誇るアクティブ・フェーズドアレイ・レーダーは、超音速で接近する台湾側のミサイルを正確に捉えていた。

「新型HHQ-9(海紅旗9)発射。近接防御火器(CIWS)作動」

垂直発射システム(VLS)から、無数の迎撃ミサイルが白い煙を引いて噴き出す。

夜空の随所で、激しい閃光が弾けた。超音速の矢と、それを迎え撃つ盾の衝突。台湾軍が放った雄風III型の多くは、中国軍の幾重にも重なる防空網によって叩き落とされ、海面を爆発の炎で染めるに留まった。ヒット・アンド・ランを試みた沱江級コルベット艦もまた、中国軍のJ-16戦闘爆撃機から放たれた対艦ミサイルの洗礼を受け、漆黒の海へと没していった。

その凄惨な洋上戦のはるか東――太平洋。

海上自衛隊の最新鋭中型空母「あかぎ」の甲板は、戦闘機の発艦作業に追われていた。

カタパルトを持たない自衛隊空母にとって、F-35Bの短距離離陸は緻密な計算の上に成り立っている。しかし、状況は想定よりも遥かに深刻だった。

「先ほど発艦した第1波、早くも燃料が警戒ラインに達しつつあります」

「まだ30分しか経っていないぞ!」

あかぎのCIC(戦闘指揮所)に、焦燥の声が響く。

F-35Bは垂直着陸のための大型ファンを内蔵している分、機内の燃料タンク容量が通常型(A型)より少ない。さらに、中国軍のJ-20による超音速侵攻に対抗するため、アフターバーナーを多用せざるを得ず、燃料の消費スピードは想定を遥かに超えていた。

「おまけに、パーツの初期不良が出た機体が1機着艦。那覇基地が使えない今、本土から部品が届くまで実質的な稼働機数はマイナス1です」

整備員の悲痛な報告。F-35は高度な電子機器の塊であり、一箇所の不具合がシステム全体の停止を招く。稼働率の低さという、最新鋭機の泣き所が最悪のタイミングで露呈していた。

「F-35を前線から引かせるわけにはいかない。彼らのレーダー情報がなければ、南西諸島の防空網は完全に崩壊する」

第1空母機動艦隊の司令官は、大型モニターに映る燃料インジケーターを見つめながら歯噛みした。F-35Bは戦うためではなく、ただ空に留まり、敵のJ-20を見張り続けるためだけに、その貴重な寿命と燃料を擦り減らしつつあった。

その時、通信士が鋭い声を上げた。

「築城および新田原からの『天狗テング』編隊、鹿児島上空を通過! 我が艦隊のデータリンク領域に進入します!」

あかぎの戦術データリンク「リンク16」の画面に、一斉に青い輝点が点灯する。

九州から遥々南下してきた、航空自衛隊のF-15Jイーグル。その数、24機。彼らの大きな翼の下には、これでもかとばかりに詰め込まれた空対空ミサイルの群れが鈍い光を放っていた。

空飛ぶ弾薬庫ミサイル・トラックが、ついに戦域へとその鼻先を突っ込んだ。

残された時間は、あと46時間。

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