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27 みんなが待ってたハードロック

「しかし何やねー、あれだけのお嬢様ならバイトせんでもいいんとちゃうの」


「お金持ちは無駄遣いしないんじゃないの、事実お小遣い俺の3倍って・・・多いなぁ」


「あんたの小遣いってなんぼなん」


「純粋に使えるのは1万。いやここの管理費とか光熱費払ったらマイナスだよ、だからバイトしてる。ドラムも買わなきゃいけないし、音楽教室の学費も稼がなきゃいけない。キツいといえばキツいけど自分で決めた事だからなー」


「苦労しとるんやな、すまんなバンドつきおうてもろて」


「結構バンドもバイトも楽しいから気にしなでくれよ。まあもうちょっと時間に余裕が欲しいけどさ」


「あんた良い男や。惚れてまいそうや」


「嬉しいけど今はバンドに夢中なんだろ」


「せや!ビッグにならなー意味ない」


 そんなたわいない会話をしていると由美と遥が来た。


「さてっと、さやかさん居ないけど今後の方針を考えましょう」


 YouTube用の動画も作ったので今後どうするか決めようというのだ。


「オーディションは受けても意味ないで、散々な目におーてるあたいの経験がそう言うとる」


 東京で地獄を見たミクにとってはオーディションと言うのはトラウマである。


「ライブハウス借りてワンマンとなるとチケット捌きが問題ね。YouTubeやTwitterにライブの告知してみたらどうかしら」


「YouTubeで見てくれても実際に足運んでくれる人おらんと思う。チョーしいい事言っとっても実際はこんなもんやったからな」


 東京で地獄を見たミクにとってはYouTubeのコメントは一切信用できない。


「どっかのバンドと仲良くなってツーマンでやるって言うのはどうかしら」


「アタイらのやってる音楽は今流行りとはかけ離れとる。話に乗ってくれるもんが居るとは思えん」


 東京で地獄を見たミクにとっては、温い音で満足しているバンドとオーディエンスに絶望している。


「どうしようか」


「しばらく新曲をアップするしかないんとちゃうの」


「のんびりは出来ないの。来年には私も3年になるわ、今の軽音楽部部長は卒業しちゃうから仕方ないけど同じ学年のあの人達にはギャフンって言わせてやりたいのよ。いえ言わせてやるのよ!」


 相変わらずの由美に呆れる三人。


「大体がギャフンってどうやって言わせんねん」


 具体的な方法を尋ねるミク。


「よく聞いてくれたわミク。いいかしら、私達は来年のサマーショックに出る。お金の力じゃなくて、お呼ばれされてステージに立ってやるのよ!」


「それはちょっと・・・」


 レイジが絶句する。


 サマーショックと言えば真夏のロックの祭典である。お金を事務局に払って小さなステージに上がる事も出来るが、そこそこの大きさのステージは相手に呼ばれない限り出る事などできない。

 今はロック冬の時代で保険の意味もありアイドルなどを呼んで集客に必死なのだが、それでも客の大半はロックを目当てに来るとあって、それなり以上に売れているバンドが呼ばれる。


「そんなん無理やわー」


 ミクの言葉に頷くレイジと遥。


「なんで始める前から言ってんのよ!」


「姉さん現実を見ようよ」と言いながらYouTubeを見る遥の大きな目が、さらに大きくなった。


「うそ」


「なんやなんやどーしたっちゅうねん、え!」


「二百万再生超えてる、登録者数も十二万です由美先輩」


 遥のスマホの画面を食い入る様に見るミクとレイジ。


「バカ言わないでよ。この前アップした・・・アヒャヒャヒャ!」


「なんかのバグですかね」


「アタイはここの数字は信用せーへん、せーへんけど」


「誰かが冗談で再生回数稼ぎをして僕らを馬鹿にするつもりじゃー」


「それにしたってこのコメントの多さ、しかも英語ばっかりなんだからそうとも言えない」


 状況を冷静に分析するレイジ。さすが売れないアイドルを応援してきたアイドル博士である。


「由美、由美どーしたんしっかりせえや」


 呆けている由美の肩をガクガク揺らすミク。


「こんな事になるならもっとお金出して派手なドレスにしとくんだったなー」


 急に鏡に向かう遥。


『コレは不味い。俺一曲しか叩けないんだけど』


 不安に駆られるレイジの携帯が鳴る。


「あ、牧さん。今度の日曜日ですか大丈夫ですバイト休みですから。え、鴻巣プロダクション・・・」


 これから復讐に駆られる綺麗なお姉さんと地獄を見た少女に率いられた負け続けた男たちの逆襲に巻き込まれる、建築現場でバイトするガタイの良い強面ドルヲタ高校生の、世界を駆け巡る冒険が始まるのであった。



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