24 二度とその数字には騙されません
当たり前だがYouTubeの様な動画サイトにしても、イラストや漫画、小説投稿サイトにしてもアップした方はアクセス数やコメントが気になり頻繁にチェックする。
由美達が演奏動画を上げた直後から、レイジは休み時間になるとスマホで視聴者数と登録者数を確認していた。最初は千人にも満たなかったが、半年近く更新されないミクのチャンネルだったので悪くない反応だと思うレイジ。コメント欄を見れば英語で書かれているものがほとんどで、時折日本語でポツリと書き込みされているくらいである。スラングが多いので今一つ意味が分からない書き込みだが、悪い感じじゃないと何となく分かる。
『凄え!』
『俺の国じゃロックが死んでるって言うのに』
『コイツは地獄だぜ』
『ドラマーは間違い無く同じ建築労働者なんで、なんか嬉しいぜ!』
『いや、お貴族様一人居るだろう。どこの令嬢なんだ』
『ハードロックは男のもんだ。ガールズバンドには興味ねーよ』
『だったら見に来るな、糞野郎』
『うるせえ!ワパニーズども、ゴミだゴミ!』
『いちいち文句つけねーで無視しとけばいいだろう。暇な奴』
『頭、オカシイだろコイツら』
コメントが増えればディスるコメントも出てくるが、概ね好評である。ディスるコメントがあると言う事は、本気で捉えられている可能性があるので悪くはない。流石にディスられまくりは良くないが、それが1%から5%までなら大丈夫だと思うレイジ。
リアクション動画や演奏カバー動画が出てくれば、弾みになるのでそれもチェック。
特にロックの本場であったイギリスやアメリカの反応が気になるレイジ。アイドルが売れていく過程をマスコミ業界に入った友人のいる、小さい頃に世話になった医師から裏の裏まで知らされてきたレイジにとって、ロックの世界とYouTubeは今までの知識を生かす事も出来ない。だがYouTubeの中で登録者数の多いユーチューバーの誰かがインフルエンサーになってくれれば、連鎖的に多くのリアクション動画が生まれ情報が拡散していくはずだと睨む。仕掛けが出来ない(一部国家規模で再生数稼ぎをしているところもあるが)YouTubeで再生回数を伸ばすには世界中で共感できるものであり、かつユニークなものでなければ一度見られたらそれで終わる。
『コイツらの動画を見るのがやめられねー誰がとめてくれー』などと言うコメントが入る事こそ重要なのだ。
そしてそれが今入った。
ロックが死んだと言われているが、その洗礼を受けた者はキッカケさえ有れば食いついてくる。ロックでやれる事はもうやり尽くしたと言われている。だが、どうであろう。イギリス劇作家シェイクスピアがドラマを全て書き尽くしたと言われても、その後においても新たに多くの演劇作品が生まれ、手塚治虫が漫画でやれる事をすべてやってしまったと言われても、新しい漫画は生まれ続けている。
ミクと共に休憩時間のたびに再生回数を覗けば、元々ミクのチャンネルの登録者数3万人に徐々に近づいて来ている。今までのミクであれば、有頂天になりドヤ顔をレイジに向けるのだろうが一度地獄を見てきた少女に隙はない。
「まだまだやなレイジ」
「最低でも百万は行かないと」
広く薄いYouTubeの世界はリアルの世界との隔離が激しい。再生回数がたとえ百万でも、いざライブを開けばピットはガラガラなんて事もある。実際、日本で売れてるアイドルの動画が再生回数八百万となり世界共通語に実質的になっている英語のコメントがワンサカ入りアメリカの何処どこに来て欲しいと言う熱烈な書き込みを信じて行ってみれば惨敗した事もあったのだ。
登録者数三十万、再生回数二百万が目標である。
薄くて広くてリップサービスに溢れた世界は甘くは無い。
「先は長いなー。学校終わったらウドンでも食べにいこーやレイジ」
「何言ってるんだい、今日は由美さんのご両親に夕食招かれてるだろう」
「そやった、忘れてたわ。きちーっと挨拶せんといかんから、しっかりせーやレイジ」
「・・・・・」




