18 普通はそんな事しません
特にアルバイトもドラムの練習も無いのんびりとした水曜日の放課後で、教室のベランダからミクとぼーっと校庭を眺めるレイジ。本当はアイドル研究会に顔を出したかったが、ミクがそばから離れないのでこうしている。
「なあレイジ」
「なに」
「ここって部活、勢いないなー」
「進学校だしな。こうやって野球とかサッカーしてる方が珍しいみたいだよ」
「部員も足らんとちゃうの」
「野球もサッカーもバスケも試合に出た事ほとんどないんだって、人が足らなくて」
「せやから軽音楽部が音楽室占拠しとんのか」
「そうだろうね、吹奏楽もこの有り様じゃあ部として成り立たないだろうね。男子はみんな大学の事で頭が一杯だし。女子の方が色々やってるみたいだよ、目立たないけどさ。男子が必死な割には女子の方が成績いいって言うのも、男子からすると納得できないみたいだけどさ」
男子学生に比べて、女子学生の方が他校並みに自由に生きている気がするレイジ。部活動は衰退しているが、同好会などは女子学生を中心に活発に活動している。そこはやはり進学校らしく、勉強時間を削られる部活動より同好会の方が融通が効くという合理的な考えから来ているのだと思う。その同好会もほとんど女子学生によって運営されていて、唯一アイドル研究会だけが男子だけで占められる変わったとこだと見られている。
「根つめても煮詰まるだけやのにな」
ミクの言葉に頷くレイジであったが、適当に勉強している人間なので言葉まで出して同意し切れない。
「そろそろいこか」
気がつけば時間が結構経っていた。
夕陽が眩しい。
小柄なミクと背の高いレイジが並んで歩く。
学生服を着ていなければ、お父さんに連れられた小学生の親子に見えるだろう。特に建築現場でアルバイトをしているレイジの肌はすっかり赤銅色に焼けて筋肉も出来てきている。
「なあ肩車しくれへん」
「何で」
「楽しそうやん」
「お前がな」
「ええやん、な、ちょとだけちょっとだけでええねん。そんなレイジを困らす事せーへんから。頼むわー」
「お前なー」
今時の高校生がなに考えてんだと思いつつ、可愛い仕草のミクのお願いを断れないレイジ。
「うわあ!世界が変わるわー、いいなーレイジはいつもこんなしてみんなを見下しとるんやなー」
「いや、みんなに見下されてるの俺の方だと思うよ」
「そんな事あらへん。レイジは男らしゅう頼り甲斐があって優しくて、顔も怖そうやから舐められへん。理想的な彼氏やんか」
「褒められてるのかそれ」
「褒めとる、褒めとるよー」
夕陽に向かって歩く二人の影は長い。
ミクは太腿に感じるレイジの盛り上がった肩の筋肉に感動していた。
『明日、遥に自慢したろー』
遥に対して、妙なライバル心を持つミクの心は晴れやかであった。




