17 人生が終わった人もいた様です
今日は土曜日、由美とミクそして遥がメイド喫茶でアルバイト。
久々に現れた由美の姿に、客のほぼ全員がメール発信したおかげでメイド喫茶『子猫のしっぽ』がテナントとして入っているビルの周りには入店を待つ人たちでトグロを巻いている。中には休日出勤らしいサラリーマン数人も見える。
「あのーもしかしてコーデルコンピューターテクノロジー社の方ですか、僕、東京〇〇通信大学の吉田と言います」
サラリーマン集団の後ろから青年が話しかける。
「うん、そうだけど何で分かったの」
「レナさんの話をしてたんで」
「ああ、よく知ってるね」
「コンピューター関連の世界じゃ有名ですから」
「あ、ああ。そうなんだ」
「僕、コーデル社長の秘書姿のレナさんの姿はネットで見たんですけど、メイド姿のレナさんの姿は見た事なくて。それでそのー皆さんご存知なのかなーと、ちょっと気になりまして」
情報関連企業の中でも世界最大の企業コーデルインターナショナルテクノロジーズの創業者であり、社長のマクシミリアン・コーデル秘書兼日本語通訳兼企画営業本部長のレナはここ日本、コーデルコンピューターテクノロジー社に週一回必ず訪れている事はコンピューター関連、また漫画関連に精通している者にとっては常識である。
「それ知ってるんだ君」
「話だけですけど」
レナが日本に来るときはマクシミリアン・コーデル付きのメイドとして来ていると本人が言い張り、泊まっている皇居近くにある日本でも最高級のホテルから護衛を数人連れて馬鹿でかいリムジンに乗り秋葉原にある社屋にやって来る、当然の様にメイド姿で。
「話すのは良いけど、絶対に写真とか撮っちゃダメだよ。人生終わるから」
「知ってますよ。それよか今日はレナさん来てるんじゃないんですか、何でここにいるんです」
コーデルコンピューターテクノロジー社の男性社員は休日出勤ばかりしている札付きの社畜だと業界や公官庁から問題視されていたが、社員自らレナが訪れる土曜日に勝手に会社に来て仕事をしているのが習慣になってしまい、とうとう本社の指導が入り火曜から日曜出勤に最近なった。
であるので彼らは休日出勤をしていない真っ当な社員のはずなのだが今は午後3時、一応出勤時間が決まっているので立派なサボりをしている社員である。その社員らしき連中が学生の様な若者たちに混じってかなりの人数が居る。
「そりゃそうさ、遠くから見てるだけの美人メイドより近くで話せる美人メイドの方がいいに決まってるじゃん。しかも由美ちゃんが来てるって言うのに、ここに来ないわけにはいかないよ」
「それにしてもうちの社員、何であんなに前にいるんだよ。サボってんじゃねーよなー」
『いや、あなたたちも同類なんじゃないんですか』と思う青年であるが将来の事を考えて、そこは口を噤み疑問を投げかける。
「そんなもんなんですかね。それよりあなた方の会社の社員さんばっかり列の前の方に居るんですけど、何か情報持ってたんですか」
「フッフッフ、コーデルコンピューターテクノロジー社の情報制御技術を舐めて貰っては困るよ」
周りの同僚らしき人たちが一緒に胸を張る。
『そんな事に技術を駆使していいのか』と電子技術系の大学に通っている青年は呆れると同時に、絶対にコーデルコンピューターテクノロジー社に入社すると決意したのであった。




