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15 退部を言い渡された令嬢は復讐の炎を燃やす

「もう君はここには来ないでほしい」


 軽音楽部の部長が、由美に退部を命じている。


「あら、あなたにそんな権限はないと思うけど」


 こういうことは、担当の教師が受け持つのを知っている由美。


「それに部員も3人連れてきたっていうのに、なにが不満なんでしょう」


 レイジ、遥、ミクを紹介する由美。


 レイジを除けば、キラキラするその容貌にくらっと来る部長であったがなんとかとどまる。


「彼らが君のバンドメンバーということでいいのかな」


「ええ、誰も私のバンドに入ってくれなかったから自分で集めました」


 部員が目を背ける。


「いいですよね、部長」


「バンド活動ならどこでもできるじゃないか、勝手に同好会でも作って活動してくれ」


「無理です。私たちのバンドは爆音なので防音室がどうしても必要ですから」


 音楽室か放送室にしか防音室はない。


「ここは軽音楽部だよ、由美くん」


「そうですね」


「はっきり言っておこう、君の君たちのやろうとしていることは軽音楽ではない!。いいか聞き給え、私も何も知らずにモノを言っているわけじゃない。君に聞かせてもらった音楽は『ヘヴィメタル』というものだと判断せざるを得ない。そんなものを軽音楽といえるのか、軽い重いで言えば重い、重すぎるんだよ。しかも鋼鉄!僕らの青春を彩る音楽とは全く言えないと僕は思う。そんな音楽の為に、他の部員の防音室利用の時間を割くわけにはいかないんだ!」


 由美の顔がみるみる赤くなってきている。ハードロックとヘヴィメタルは似ているようでも違うジャンルなのだ。自分の好きなものをいい加減な知識で馬鹿にされたと感じた由美。レイジは正直よくわかっていなかったので、部長の言い分も分かるような気がしたが黙っている。


「あなたがたのケツの穴の小ささには驚きましたわ。辞めますとも辞めて差し上げますとも。ですが部長よく覚えておいてください、この借りは絶対にかえしてさしあげますから」


「わかってくれてよかったよ。明日にでも退部届を先生に提出しておいてくれたまえ由美くん」


 由美の心の中で戦いのゴングが鳴った瞬間である。


 


「これからって時に、これじゃあどーにもならんのとちゃう」


 肩をがっくり落とすミク。


「音合わせの時だけ貸しスタジオを借りるしかないんじゃないの姉さん」


「そうなるとドラム練習はどうしようかしら」


 悩む由美。


「あのー、もし僕の事で足を引っ張るようなことになってるなら気にしないでください」


「なにいってるの!このメンバーであいつらにぎゃふんと言わせてやんのよ!」


 周りが見えなくなっているうえに言葉遣いも変わる由美。


「しゃーない、ここは私とあんたでバイトしてレイジの練習費用出すしかあらへんのとちゃう。そうだ!いっそのこと音楽教室にいれてまお。どうする由美」


 ミクが何かが吹っ切れたような顔で由美に問う。


「それがいいわね、じゃあマネージャーにバイトの予定多めにしてくれるように連絡しておく」


「ちょっと待って下さい。それじゃあ僕が皆さんの・・・」


『ヒモ』という言葉が出かかったが、何とか口にしないですんだ。


「じゃあ僕もレイジの為に」


「なんでお前にまでそんなことさせなきゃなんないんだよ!俺にもプライドってもんがあるんだ」


 三人の顔がレイジの顔を仰ぎ見る。


「おお!」


『おお!じゃねーよ、俺をなんだと思ってんだよ。こいつらー』




 お言葉に甘えておけば良かったと後悔するレイジは今、牧に紹介されてビルの工事現場でコンクリートの詰まった袋を運んでいる。男が、しかも高校生が短時間に稼げるバイトといえばやはりここである。


「あんちゃん、さすがだね。でも無理すんなよ男は腰が命だかんな、腰痛めちゃ将来の嫁にも逃げられちまうからよ!はっはっは!」


 現場の人たちはレイジを高校生とは気づいていないのかどんどん仕事を回してくる。何度か現場に通ううちに、仕事上がりに缶コーヒーを渡されくだらない会話に花を咲かせるようになったレイジであった。



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