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11 成長していくのを応援するのも楽しいものです

 朝6時、営業時間も終わり店の清掃を必死にこなす男たち。


 ここは神竜組が仕切る闇賭博場である。


「おい!今日空いてるやついねーか!」


 神竜組若頭本郷の怒声が飛ぶ。何人かが手を挙げるが、その人数に苦い顔をする本郷の前に牧が進み出る。


「オジキ、すまねえ。今日はちょっと」


「気にするな牧、楽しんで来い」


 今日は牧が押しているヒナギク49が11時から○○スーパーの催物会場でライブを開く。まだまだ売れているとは言えないので見に来る人も少ないのが分かっている。せめて自分が行かなければと、漢気を見せる牧。

 ハードロック、ヘヴィメタル好きが大半を占め「ハードロック・ヘヴィメタル以外、敵だ』と考えている組員の中で唯一ドルヲタを公言する男の中の男である牧は、この組のナンバー3の地位にいる。

 ヒナギク49の応援のあとは、押しているアイドルグループは違うが同志とお互い認めたレイジというライブ会場で知り合ったその筋では『アイドル博士』と一目置かれている少年と、その友達と会うことになっている。


「おいおい、これじゃあ組長が泣くぞ!」


「だって若頭、アイアンメイドでしょ。50人くらいしか集まらねえんじゃねえですかい」


「しょーがねーだろー、親分が押してるバンドなんだからよー。ったく何とかならねえもんかねー」


 賭博場の一室から本郷の困った声が聞こえてくる。


『組長も売れねえバンドばっかすきだもんなーって、俺も似たようなもんか』




 仕事も終わりアイドルグループのライブ会場に向かう牧。現場に行けば『意外と盛り上がっているな』と、○○スーパー催物会場を眺めて牧は満足そうに腕を組む。ステージの近くでは少年や青年たちがお揃いの法被を着て声を併せて掛け声を掛けている。


「頑張っていやがるぜ、こん畜生」


 売れっ子アイドル『ヒナギク49』と言っても、いつも全員がステージに上がっているわけではない。今日はそんなにファンがついてないメンバーばかりである。笑顔を振りまき、必死に会場を盛り上げようと頑張るアイドルたちとファンの男たち。


 買い物客が引いた眼でそれを眺める。


 牧もファンの男たちに混じって応援したかったが、今度のライブの踊りを覚えるために1日3時間数日前から練習しまくっていたため体のあちこちが痛くて立っているのがやっとだ。


「俺も歳くっちまったなー」


 演目が終わると、応援していたファンの中から中心になって声掛けしていた男が牧の元にやってくる。


「牧さん来てたんですか、声かけてくれればいいのに。さみしいなー」


「悪ぃ、ちょっと今日はこれから人と会うんで疲れちまうわけにはいかなくてよ」


「そうですか、それは仕方ありませんね。そうそう、次のライブには牧さんやみんなの分の法被配りますので必ず来てくださいね」


「あったぼうよ!楽しみにしてるぜ会長」


 会長と呼ばれた青年は牧に頭を下げると、ステージ前でたむろしている少年たちに向かっていった。


「おっと、こうしちゃいられねえ」


 牧は腕時計で時間を確認すると、急いでタクシーを拾った。


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