episode -3- [母の] scene -①-
いつにもなく真剣な表情で、私の方を見つめているパパの名前は、伊東信義と言います。
先程、養鶏場さんから、毎週定期購入している卵を受け取って、そこからの帰り道だったのですが、突然パパが車をコンビニの駐車場に停めたのです。
「これから、俺が言う話……よく聞いて欲しい……」
「う……うん」
度々、パパは……こういった感じの展開で、私に対してホラを吹くことがよくありました。
今朝、パパは出掛けるギリギリまで、お姉ちゃんの件でイライラしている様子だったので、仲良しな私にホラでも吹いて、笑い飛ばしたいのでしょう。
「もう、未來も大きくなったし……お義父さんにも許可貰ったから、話そうと思う」
「え?おじいちゃんも関係してるの?!」
「ああ……未來?実は……未来は、パパとママの子供じゃないんだ……」
「へ?またー!!パパ、ホラ話にしては……今日、凄く内容エグくない?」
「いや……未来は、ママの妹の娘なんだ……」
真剣な眼差しのパパの言葉から、今日ばかりはホラ話ではないのだと、私が理解するのに、時間は要りませんでした。
パパの娘でないということは、私たちに血縁関係はないので、エッチだって、妊娠だって、結婚だって……諦めてたことが、全て合法になるのです。
「やったー!!」
「はあ?!未來、ショックじゃないのか?」
「ううん?だって、私……」
「今から、かなりキモい話するけどいいか?」
『パパのこと……大好きすぎて、パパと結ばれたい……って思ってたもん!!』と……私が続けようとしたところ、パパに話を遮られました。
パパの『かなりキモい話』とは何なのか、私は凄く興味を唆られる反面、何故か急に……緊張してきてしまいました。
「うん、パパのお話なら平気……だよ?」
「未來、ありがとうな……?」
「パパ、それでそれで?」
「俺、分かったことがあってな?俺、未來のことが……異性として好きなんだって、最近気付いたんだ……」
「え!?」
全く……身構えて聞いていれば、ただ単に……パパと私は相思相愛だったという話でした。
まぁ、常日頃からパパには『大好き』と、私の口から伝えてはおりましたが、『好き』の意味をどう捉えていたかは、定かではありません。
「な……?かなり、キモい話だろ?」
「ううん?私も……『パパと結ばれたい』って、ずっと思ってた……」
「お、おい!!み、未來?!泣くなよ!!」
「うぅぅ……」
ずっと、小さな頃から……私の胸の中に秘めていたものたちが、パパへの『告白』が出来たことで、一気に溢れ出てきてしまいました。
すると、慌てたパパは……泣いている私の顔を覗き込みながら、頭を撫で始めたのです。
そんな私のパパは、今年で三十四歳になります。
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「未來さん!!お、俺と……付き合って下さい!!」
血縁関係が無いとはいえ、パパはママこと……伊東蒔夢とは、未だ婚姻関係にあります。
夫婦関係は定かではないのですが、中二になっても、私がパパと一緒にお風呂に入ってることへの当てつけか、ママが仲良しアピールをしてきます。
「あ……」
「はぁ……分かるよ?キモいよな……俺」
どんな経緯で、私がパパとママの養女になったのかの説明がまだないので、よく分かりませんが、妹の娘が夫にベタベタするのが嫌なのでしょう。
ただ、ママの対応で、お姉ちゃんと私の間に、越えられない壁があったのは……実娘かそうでないかだったということが分かって、スッキリしました。
「え?キモくなんか……ないけど」
「て……ことは?!」
もし、ママが……妹のことを、ずっと敵視していたとしたら、その娘である私のことなんて……憎いだけで、可愛いとは思えなかったのでしょう。
それと、私がママにもお姉ちゃんにも似ておらず、早逝した母方の祖母に似ていると、おじいちゃんからは可愛がられていたのも、少し頷けます。
おじいちゃんは……発言や態度から、ママのことは心底嫌いみたいなので、きっと……次女である私の母親のことを、可愛がってたのかもしれません。
「うん。私の返事は……『はい』だよ?」
「俺を……揶揄ってるんじゃないよな?」
「ううん。でも……蒔夢さんとはどうなるの?」
もしも、パパと付き合うとしても……私からすれば、伯母にあたるママとの修羅場だけは避けたいところなので、そこはスッキリして欲しいのです。
それに、その件がクリアになったとしても、パパは三十四歳で、私はまだ……十四歳なので、法律的に……色々とアウトなところが多いと思います。
「お義父さんには……未來とのこれからの事について、話はしてあるんだ。」
「おじいちゃんは、パパが私のこと好きなこと……知ってるの?!」
「ああ。それに、ママとは……離婚するつもりだ……」
「そうなんだ……」
内心では、何度もガッツポーズしてますが、パパの目の前で……そんな真似したら、浅ましい女だと思われそうなので、当たり障りなく返事しました。
ただ、そうなると……パパは婿養子なので、『マルジョレーン』の二代目としてのお仕事が、離婚によって、どうなってしまうのか心配ではあります。
「うん。お義父さんが、『証拠は揃えてあるからな?』って……さ?パパとママの離婚の件、躍起になっててな?」
「おじいちゃん、パパの味方してくれるの?!」
「んー……どちらかと言うと、今回の件って……未來も絡んでるからさ?」
「え……私?!」
「ああ。それで、買い出しから帰ったらな?悪いんだが、お義父さんが……未來と、話がしたいんだってさ?」
急に始まった、コンビニの駐車場に停められた車内での、パパから私へのカミングアウトからの、愛の告白でしたが、黒幕はおじいちゃんのようです。
ですが、私にとってメリットでしかなく、ずっと悩んできた……大好きなパパと、道ならぬ関係ではなく、合法的に交際関係を結ぶ道が開けたのです。
「まぁ……いいよ?でも、おじいちゃんが……私にお話なんて……」
「そうと決まれば、ちゃっちゃと買い物終わらせて、帰らないとな?」
「うん!!あ、ねぇ……?パパ」
「ん?どうした?未來」
「もう、パパと私って……恋人同士でいいんだよね?」
『付き合って下さい』という告白を、パパからされたのですから……それくらい確認したって、良いと思います。
もしも、パパがそういう面では悪い人で、私の『初めて』を奪って弄びたいだけ、だとしたら……最悪なので、疑いたくはないですが……一応です。
「うーん……それについてなんだがな?少し、車走らせながらで悪いが、俺の話……聞いてくれるか?」
「うん……分かった」
「まず、スムーズにママと離婚する為には、俺たちの足元を掬われないよう……暫くの間、今のままの関係でもいいか?」
「うん、まだ……私、十四歳だし?でも、パパの恋人ではいたいから……お互いの認識だけでも、そうでありたいなって思って……」
「ああ、俺も……そうありたいと思ってる。まぁ、最短でも……未來が十六歳になるまでは、お互い我慢しないとな?」
『今のままの関係』でも、私は充分なくらい満たされているので、パパの気持ちや考えについて……確認したかっただけなので、聞けて良かったです。
それに、私はまだ中二女子なので……下手に大人の恋愛に触れてしまうと、多分……学業に身が入らなくなり、高校受験失敗という未来もあり得ます。
「うん……でも、パパが我慢出来なくなったら……言ってね?浮気されるのは……嫌なの!!」
「昨日まで、風呂で裸の未來を前にして、襲いかかってないんだから、大丈夫だろ?」
「あ……確かに?いやいや……それは、パパには……まだ、ママが……」
「あ……それはないぞ?もう長いこと、ママとはしてないからさ?」
「え?!」




