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婚約破棄された悪役令嬢は悪魔を飼う  作者: のくと
第1章:悪魔を拾いました

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7/9

現状を整理しましょう③︰契約







「まず、私はこんな感じですの。で、お次は貴方の番ですわ」

「イヤいや、早くないですカ」

「あんまりにも近くに寄ってくるから気になってたのよ」

「来たくて近くに寄ってるワケじゃないデスけどね」

「そもそもこうなった経緯を教えなさい」

「は。話聞かねェタイプじゃん」


 セラフィアは、感情で目的を見失わないタイプだ。要するに、こんなに逆らってきたとしても、気になることを聞くまでは見逃すということである。


「で、ナニを聞きたいんデスか」

「そもそも、私の部屋にいる経緯よ。私は貴方が怪しい呪文を唱えたところまでしか覚えていないわ」

「何が怪しい呪文でしょうかァ……」


 ひとつため息をついてからモルティアスは答えた。


「と、言うより、なんでそこまでしか覚えてないんですカ?」

「え? それ以上なにかあるの」

「……じゃあ、大怪我負ったコトも覚えてないンですか?」

「え!? 私が!?」

「……あのあと、迷い込んだ地点に置いてこうとしたら、ちょうどいたオオカミに食われて、シンだかなと近付いた瞬間に角を掴まれて折られた」

「ナニを言ってるのですか!??」

「……ウン。信じなくてイイです」


 何やらひとりで納得したような言い方をしている。

 記憶の中にはそんなものは一切ない。嘘をついているとも考えられるが、その顔は嘘をついているようには思えない。


「全く記憶にない出来事ですが……嘘をついているようには見えませんの」

「嘘をついてないデスから」

「なら、私の記憶の中に、一切その記憶がないのはどうしてだとお思いになります?」

「知らない、から此処に居るンでしょう?」

「まあ、そうかもしれませんわ」


 聞いたところでなあんにも解決はしなさそうだと感じて、セラフィアは会話を切り上げた。



「それに、違いますわ」


 重要なことを聞けていない。


 そういえば、と思った。初めから呼び捨てで何も言わないのだな、と。ただ、言われないので気にしないことにする。セラフィアだって、彼からの呼び捨てはあまり気にならない。恐らく貴族特有の下に見るあの嫌な雰囲気がないからかとは思う。


「私が一番気になるのは、角が折れたらどうなるのかです。もしかして、魔力が無くなるのですか? まだ半分もあるのに」


 その言葉にピクッとモルティアスの身体が動いた。


「半分も、ダ」

「そんなに半分が大事なのですか?」

「そうデス。まあ、セラフィアは魔法を使ったことがないから分からないでしょうが」

「……残念ながら、その通りね」


 少しだけ、視線を下に向ける。無意識でやっていた。モルティアスになどしなくていい動作だったと、数秒遅れて気がついた。この動作は、社交界などでいい印象を持たせるテクニックだったからである。


「あと、何ヶ月くらい必要なの?」

「……まあ、半年あればなんトか」

「長いわね」

「人間からしたら……そうデすね」

「期間を短くする方法はないの?」

「契約する、トか?」


 セラフィアはパチンッと指を鳴らした。


「それよ」


「は?」


 まあ、狙って言ったけれども、と内心思いながら畳み掛ける。夢のような初めて会った時に、契約の話はした筈だ。



「契約、させてあげましょう」

「……は、?」



 喜ぶどころか訝しむその姿に、セラフィアは改めて既視感を覚えた。




「悪魔は人間の魂を主食とするのでしょう?」

「主食……?」

「ええ。魂を奪う為に、契約をさせて、願いを叶えるのでしょう?」

「まあ、それは合ってますケド……」

「なら、私がそれを叶えましょう。ちょうどいい人達がいるのよ、三人ほど」

「は?」

「紹介いたしますわ。欲にまみれて、とても汚らわしいわ。見目は美しいですが」


 にっこりと笑みを浮かべた。わざとらしくなってないといいが。前、王太子に笑いかけた時は、周りのメイドから怖いと言われたことがあった。あれから特訓をしたのだ。



「お、オマエ……」

「お前じゃありません。セラフィアですわ」


 そうじゃねぇ!と言いたげな口を引き攣らせたモルティアスの顔が見えた。



「セラフィア、オマエ、おかしいだろーーー!!!」


「じゃあ、決定ですね」

「なんでだヨ!」



 契約を無理矢理結ばせる時は、話が通じない相手だと思わせる。これに限る。

 まあ、勝手に居候してきたのだから、これくらいは許されよう。ぎゃあぎゃあ煩いので、耳栓を付けてやった。



 そういえば、と思う。

 時計の針が、戻っている。


 ──セラフィアが、修道院から居なくなる三時間前に。



 もしかしたら悪魔の力なのかもしれないと思った。けれど、おかしい。セラフィアはモルティアスと契約をしていない。



「ねぇ、モルティアス。時間を戻したの?」

「そんなワケねェだろ。オレがやったのはあくまでも場所を動かすだけダ」



 耳栓を抜いて聞いてやれば、怒っているモルティアスは答えてくれる。感情的になった方が人間はいいことを話してくれるものだ。



「そう」



 セラフィアが、時を間違えたのだろうか。けれど、今はモルティアスに何か言うのは面倒だ。

 耳栓を改めて付けると、ざあざあと雨が降る外を眺めて、どうしようかと少し、考えることにしたのである。







お読み頂き誠にありがとうございます!

1日ひとつ更新していきたいなと考えております。


もし、少しでも良いと思って頂けたら、ブックマーク、評価、リアクション、感想など頂けますと幸いです!

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