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嘘つきは水曜日にやってくる  作者: 白川


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14/22

第14話 友人たち

 その翌週の月曜、放課後の教室で、瀬尾灯は桐谷茉莉の机の横で足を止めた。

「茉莉」

「ん?」

「最近、変わったよね」

「ええ、また?」

「うん、また」

「気のせいだよー」

「気のせい、じゃなくて、ね」

 灯は茉莉の机の上の開いたままのノートをちらりと見た。

 見たあと、視線を茉莉の顔に戻した。

「誰か、いるの?」

 茉莉は机の上のシャープペンの後ろを人差し指の腹でちょんと押した。

 カチ、と芯が出た。

「えー」

 短い間。

「別に、いないよー!」

 いつもの教室モードの語尾の伸びだった。

 灯は茉莉の顔をしばらく見つめた。

 茉莉も灯の顔を見つめ返した。

 灯はふっと息で笑った。

 笑って、自分の手帳をふっと肩のあたりで揺らした。

「ま、いいけど、ね」

 灯の手帳の角に最近、一枚シールが増えていた。家のことで灯が自分なりに進めている何かのしるしだ、と教室の何人かがなんとなく気づいていた。茉莉はその一枚のシールに気づくていたが、深くは聞かなかった。それがたぶん茉莉なりの灯への返事だった。

 灯はもう一度頷いて自分の席に戻った。

 戻る後ろ姿に、茉莉はもう舌を出さなかった。

 代わりに机の上のシャープペンの後ろをもう一度押した。

 出た芯を茉莉はしばらく見ていた。


── ◇ ──


 別の日の、放課後の廊下。昇降口の手前のロッカーで新名蓮は自分の靴を履き替えていた。隣では藤代透も同じことをしていた。蓮はロッカーの扉を、ぱた、と閉めた。

「藤代」

「ん」

「お前、最近、笑い方ちょっと変わったぞ」

 軽い口調だったが、目だけはしっかりこちらを見ていた。

「そうか?」

「うん。悪い方じゃないんだよ。いい方の変わり方だ」

「説明になってないな」

「説明できる笑い方の変化なんて、まあ……ろくなもんじゃないだろ」

「確かに」

 蓮はロッカーの前で肩をひと揺すりした。揺すりながら、ふと思いついた、という顔をして付け加えた。

「俺、推薦の書類さ、来週出すよ。サッカー部の枠で行く」

「ああ、そうか」

「お前は東大。頑張れよ」

「ああ」

 蓮の声にはこちらを揶揄う気配はなかった。蓮は蓮で自分の足元を見ていた。透はその『自分で決めたこと』の重さを横からぼんやりと感じた。

「だから、まあ」

 蓮はもう一度肩を揺すった。

「続けろよ、それ」

 短い一言だった。

「え?」

 蓮は笑ってロッカーの前から昇降口の方へ、先に歩いて行った。

 歩いて行く背中を、透はしばらく見ていた。

 見ていたあと、自分のロッカーの扉を、ぱた、と閉めた。

 閉めた音の中で、蓮の言葉だけがまだ耳の奥に置かれていた。

 続けろよ、それ。

 蓮は契約のことを知らない。知らないが何か感じて、それを続けろと言った。

 昇降口を出た先の校庭の風はもう十二月の終わりの風だった。透は口の端がふっと上がるのを自分で感じた。

お読みいただき、ありがとうございました。

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