14話 享楽を求めし【夜叉】なり!
銀色の髪を煌めかせる1人の男が湾岸都市グルートから少し離れた海上に現れた。その男は眼下を見下ろし何かが来るのを待っているようだ。
その直後だった。湾岸都市グルートに1体の怪物の咆哮が響き渡ったのは。大地を揺らし、津波を引き起こした怪物が海中から姿を現した。
蒼き鱗を煌めかせ、金色に輝く瞳は持ち巨大な肉体を見せた“海龍王リヴァイアサン”である。3000年前に神聖マルス国があった土地を滅ぼし国墜としの名で恐れられた封印されたはずの伝説の海龍王が再び現れたのだ。
自我がないように見えるが確実に湾岸都市グルートへ向かっている。リヴァイアサンを上から見下ろすニヤニヤと笑みを浮かべた銀髪の男の視線の奥には湾岸都市グルートがある。
どうやらこの男が海龍王リヴァイアサンを操ってるいようである。伝説の海龍王を操るとはどれほどの力を持っているのだろう。
『グォォォォォォ!』
海龍王は天地を震わす咆哮とともにグルートへ進んでいく。海龍王が進むたびに津波が起き空気が揺れる。
グルートの民は突然鳴り響いた咆哮と海に見える蒼く煌めく化け物を見てパニックを起こした。なぜならこの都市では神聖マルス国が建国されてから1度も海からの魔物被害は起こっていなかったのだから。
それもそのはず、封印されていた海龍王から溢れ出ていた魔力に畏れをなし海の魔物は近寄ってこなかったのだから。大元の原因である海龍王が目覚め、しかも洗脳されているのだ。グルートが被害を被らないわけがない。
グルートの民は警備隊員の指示に従い徐々に避難を始めていく。だがそれを銀髪の男が許すはずがない。
「リヴァイアサンよ、【逃げ惑う民草ごと殲滅せよ】!」
彼は海龍王に指示を出すと再び上空で笑みを浮かべながら海龍王が暴れる様子を見ている。
その時海龍王の口に圧縮された魔力が蒼く輝く。そしてその口から蒼く輝く魔力の波動が一直線に放たれた。
ゴゴゴゴゴゴォォォォォォ!と轟音をとどろかし街に一直線に破壊された跡が残る。まるで世界の終わりかのように唸る化け物は次に天に向けて咆哮する。
その直後、空に暗雲が渦巻き嵐が起こる。S級氷魔法“絶嵐雹雷“だ。空から黒光りする雷と1メートル四方の氷塊が降り注ぎ、突風と共に嵐が吹き荒れる。
グルートの美しき街並みは徐々に瓦礫と化し、グルートの象徴であった9階建てのグルート大聖堂は所々に穴が空き、ひび割れている。
今にも崩れそうなグルート大聖堂に会心の一撃が放たれた。S級龍魔法“龍王絶砲”、竜王から龍王へと至った者にのみ使える龍魔法。それもS級が放たれたのだ。壊滅しない方がおかしい。
今にも崩れ落ちそうなグルート大聖堂に直径10メートルに渡る光線が放たれ円状に聖堂の外壁が消滅した。破壊されたのではなく、消滅したのだ。万象一切を圧倒的エネルギーにより消失させたのだ。
こんな真似ができるのは龍魔法や古代魔法のみである。今の魔法は普通に使えばMP5000は使用する大技だが、自我無き龍にとってはそれほど大事ではないのだろう。
ブレスでも生き残った者には絶望を与えたことだろう。自分が信じるべき神を祀るグルート大聖堂が木っ端微塵に破壊されたのだから。しかも1部は消滅したのだ。
「海龍王リヴァイアサンよ、【貴様の全魔力を持って湾岸都市グルートのみを消滅させよ。民草は生かして逃す。】わかったか?」
『グルルルルォォォォォ!』
銀髪の男が指示をすると海龍王は天に向けて咆哮し、巨大なヒレで大地を震わし叫ぶ。
『ウウウォォォォォォォォ!』
そして絶望が訪れた。空から降り注ぐ雪が地に着くとやがて1メートル程の氷の華となり湾岸都市グルートの全てを凍らせた。
広域殲滅型S級氷魔法”氷華万景“。空から舞い落ちる粉雪に触れたものは万象一切を氷の華と化し原型を保ったまま氷像となる。
そして湾岸都市グルートの全てが氷の街と化した時、第2の魔法が破滅をもたらす。S級古代魔法”重力世界“が放たれ、全ての氷像は通常の10倍の重力により圧縮され悉くが破片となる。
氷屑と化した氷像は湾岸都市グルートがあった場所に細雪のように輝きながら積もっていく。一面銀世界であるその景色はまるで天国のようですらあった。
そして束の間の銀世界も終わりを迎える。最後に全魔力を使い放たれた、S級古代魔法力“虚無天体”により全ての氷屑は街の中心に現れた10センチ程の光をも呑み込む虚無の中へと流れて行く。
氷像となった建造物は氷屑と化し、すべてを飲み込み虚無へと送る“虚無天体”へと消えてゆく。そして文字通り消失した湾岸都市グルートであった場所は大地が顔を見せていた。
絶望と恐怖の瞳で街を見渡しながら逃げていく人々を前に銀髪の男が姿を変えて現す。金に輝く髪を靡かせ背からは天使の翼を生やした好青年は逃げ惑う人々の前に立ち叫ぶ。
「我は世界に享楽を求めし【夜叉】なり!
此度の祭り如何であったかな?
【夜叉】は如何なる時もそばにいる。
いずれ相見えることになろう。
では、者共また会おう!」
そして金髪の男は後光がさす天の翼を揺らし、海龍王の元へ着く。
「海龍王リヴァイアサンよご苦労であった。あとは我が身の内で眠るがいいっ!」
男は魔力を纏った自らの腕を一振りの剣と化し海龍王リヴァイアサンの首にスッと当てる。刹那、海龍王は逃げようとするが逃げ切れない。男の威圧に震えていたのだ。そしてそのまま首を落とされ血しぶきをあげる。
そしてその巨体を収納と思しきスキルで回収すると翼を広げ天へと飛び立っていった。
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フォルトゥーナ視点
ヤッッベェェーー!あせったぁ!まさか海龍王があんなに強いとは。なにあの魔法、威力おかしいだろ!
『古代魔法に龍魔法ですね。どちらも危険すぎて過去の歴史に葬られた魔法です。それにしてもカッコよかったですね。』
演技うまくなっただろ、絶対。いつか彼らの素材で武器とか作ってみたいな。
あの魔法って夢想の書で真似出来る?
『ええ、改良することも可能です。作りますか?』
あとでいいわ、もう疲れた。とりあえず、戻るとするか。それにしても全然強い奴がいなかったな、大事な都市なのに。1人だけ鑑定してくるやつがいたからつい面白くて笑っちゃったけど。俺のステータス見たら唖然としちゃってさ。
『建国当初から魔物が現れない土地に強い人間を配置することはないと思いますので。』
それもそっか!
とりあえずセーラの街に戻るか。
『ええ、そうですね。』
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神聖マルス国12騎士団エルラッテ・フォン・カリーナ
私の名前はエルラッテ・フォン・カリーナ。神聖マルス国で12騎士団をやっている。12騎士団は神聖マルス国で最も強い12人によって結成される教皇猊下の特別部隊だ。
巨人狩りや龍殺しなど、様々な偉業を打ち立てている神聖マルス国が誇る最強集団だ。そんな私は今神都マルスの会議室にいる。
「おいおい、この映像まじかよっ!こりゃヤベェんじゃねぇの?」
「ええ、たしかにこの魔物はかなり強そうね。」
「それで、カリーナ?鑑定はしたの?」
「ええ、もちろん鑑定はしたわよ。あの龍はまだわかるのよ。それでもあの男だけは読み取れなかった。私の鑑定スキルをはるかに超える偽装スキルを持ってるわ」
「んな馬鹿な事有るわけねーだろ、序列4位爆裂のカリーナ様ヨォ!」
「鑑定結果をあげるわよ、序列6位暴虐のアトラス。」
「まず龍の鑑定結果ね。これがあの龍の鑑定結果よ。
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■名前:リヴァイアサン
■種族:海龍王S級
■ステータス
LV:84
HP:2835
MP:1684
攻撃:3452
防御:4238
敏捷:854
固有スキル:海龍王Lv5
種族スキル:海流操作Lv8
海泳Lv−
龍鱗Lv7
海龍王の咆哮Lv1
スキル:水魔法Lv8
氷魔法Lv7
龍魔法Lv9
威圧Lv8
殺気Lv4
鋭牙Lv5
豪顎Lv4
古代魔法Lv4
◾️状態:洗脳
◾️称号:龍王 封印されし者 同族喰らい 海の覇王 破壊神 古代龍 限界を超えし者 国堕とし
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どう思う?」
「おいおい、古代龍で、龍王かよ!相当やばいだろ。」
「それで、その龍王を一撃で屠った男のステータスがおかしいと?」
「ええ、これをみて、どう考えても偽装してるわ。
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■名前:夜叉
■種族:人間16歳
■ステータス
LV:1
HP:1
MP:1
攻撃:1
防御:1
敏捷:1
スキル:偽装Lv16
剣術Lv27
◾️状態:カタルシスの呪い(特大)
オーメンの呪い(特大)
◾️称号:呪われし者
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「……う、嘘だろ?剣術に、27だと?」
「化け物め……!」
「それでその化け物とは戦ったのか、カリーナ?」
「いえ、無理だったわ。」
「無理とは?どういう事だ?」
「住民の避難を優先してたの。貴方だっていざという時は住民の避難を優先するでしょ?序列3位剛剣のタリス。それに鑑定をした時に目があったのよ。」
「お前の鑑定がバレたとでもいうのか!お前の鑑定はLv12だろう!?」
「ええ、それに奴私が鑑定した時どんな表情してた思う?」
「なんだ、怒りの目でも向けてたか?」
「いいえ、違うわ。彼ね、嗤ってたのよ。」
「まじかよ。ますますバケモンじゃねえか。」
「ええ、戦闘中に笑えるのは余裕の証だもの。」
(それにあの笑み、余裕だけじゃなかったわ。邪魔するものは悉く破壊する。そんな感じの狂気が混ざっていた。)
「本当にそれだけなのか、カリーナ?最後のセリフからするとかなりの狂人だと思うが。」
(やっぱりタリスは私の様子のおかしさに気づくわよね。)
「ええ、それだけよ。あとは猊下と団長に説明しなきゃね。」
「こんな化け物団長でも勝てるかどうか。」
はぁこれからこの国はどうなっていくのだろうか




