12話 時速300キロ
小鬼の巣はかなり大型だった。木を組み立てた掘っ建て小屋が約8個。索敵魔法によると48体暮らしていると思われる。
俺は気配を消しながら小鬼の巣の前に立ち魔法を放つ。
(武具作成!各自2本ずつ対象の前方に展開!)
いきなり空中に現れた黄金に煌めく神聖剣に戸惑う小鬼達はグギャグギャ言いながら家の中を走り回る。馬鹿なの?なぜ逃げないの?と思わないでもないが知能が低いのだから仕方ない。
(全複製武具、発射!)
100本の聖剣アクティーナは小鬼の首に向かってとてつもない速度で飛んでいく。
あれ何キロでてんだ?
『時速約300キロと推定されます。』
速すぎじゃね?まぁ当然のことながら時速300の剣が首に突き刺さったら首から上は空を舞う。
小鬼の討伐証明部位は確か左耳だったな。剥ぐの怠いなぁ、首じゃダメかな?
『ダメかと思われます。収納に入れておけば私が左耳だけ取っておきますが。』
え?ラス先生そんな事できんの!?初耳だわ、お願いします!
『はい、任されました♪』
次は中鬼か、どうやって見つけようか。新しい魔法でも作るか。
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夢想の書⑥
魔法名:悪意の地図
詠唱:①悪意溢れる我が敵よ
②敵意溢れるケダモノよ
③その根源を此処に示す
難易度:E級
効果:自身を中心として半径100メートル内の悪意や敵意を持つ生物の場所を探しだすことができる。詠唱毎に+20メートル。
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これでよしっと。
「”悪意溢れる我が敵よ”!
“敵意溢れるケダモノよ”
“その根源を此処に示す”!
“悪意の地図”!」
キュゥゥーーーンと俺の前に半透明で円形の地図が浮かび、その中にいろいろな点が現れた。
試しに赤い点をタップすると・小鬼と表示された。よし、成功だ!俺は小鬼よりも少し大きな反応を探していると、やや離れたところに中鬼が居るのを発見した。
俺は中鬼の点を見ながら足を進める。あと約20メートルといったところまで着いた俺は魔矢に雷のイメージを込めながら発射する。
光の速さで中鬼へと飛んで行った雷魔矢は8体いる中鬼全てに当たったが、やはり威力は低いのか倒れる様子は見せない。
ま、当たり前かな。という事で、神聖剣アクティーナを中段に構え斬りかかる。1体目はしゃがみこみながら胴を一閃する。
2体目からは右上からの袈裟斬り、そして背後から襲いかかろうとする不逞の輩には袈裟斬りの勢いのまま首を刎ねる。
恐怖で逃げようと下がる中鬼に向かって威圧しながら剣を構え直す。
「逃げんじゃねぇよ、宿屋代!」
縮地で奴らの背後に迫った俺の剣は振り向きざまに首を破壊する。グギャァと倒れ込む中鬼はかなり苦しそうだ。
「俺に見つかった不幸を恨め」
そして中鬼狩りは終わった。首だけ収納にしまいラス先生に左耳を任せる。なんやかんやでもう昼過ぎだ。とにかく依頼終了を伝えに行かなければ。
帰る途中にも薬草群をいくつか見つけたのでそれも持ち帰る。そうして俺はセーラの街へと戻った。辺りを見渡しながら門の前の大通りを進む。
「へいにーちゃん、うちの串焼き買っていかないかい!」
確かいい香りがするな、食べてみるとしよう。
「いくらですか?」
「1本80ゼルだよ、買ってくかい?」
「ええ、では2本いただけますか?」
収納から鉄貨と銅貨を出しながら言う。
「はいよ、毎度ありぃ!」
魔物の肉らしい。なんでも魔素を多く含む物ほど美味しいと感じるらしい。いつかドラゴンステーキ食べてみたいな。
そう思いながら串焼きを頬張る。おお、かなり美味いな。和牛と同じくらい美味い気がする。和牛の味なんてわからんが。
しばらく歩くと冒険者ギルドが見えてきた。扉を開き昨日と同じ喧騒の中受付へと向かう。
「メイさん、依頼は完了しましたから」
「ええ、完了しましたが討伐証明部位はどこに提出すれば良いのですか?」
「それならあちらに解体所がありますので、着いてきてください。」
受付嬢は俺を連れて受付のすぐ隣にある解体所まで来た。なんでも魔物は討伐証明部位提出以外にも食用になったり錬金術の材料になったりする部分は此処で解体してくれるらしい。
手数料がかかるが、それほどでもないのでこれからはここに持ち込むことにしよう。
「では小鬼と中鬼の討伐証明部位と薬草を提出してください。」
俺は収納から48個の小鬼の耳と8個の中鬼を出す。
「収納持ちなんですか!?珍しいですね。商人が欲しがりますね。」
へぇそうなんだ。収納は珍しいものなのか。
「って小鬼の数多すぎじゃありません?!たった3時間でこんなに狩れるんですか!?」
「新人には無理でしょうけど……ゴジラさんを気絶させた時の圧を考えたら普通に見えてきましたね。」
受付嬢と解体所の人がコソコソ話してるけど聞こえてるからね。
「あ、あと薬草もお願いします。」
「ええ。わかりましたよって!多過ぎではありませんかっ!?」
そうか?見つかった分だけ採ってきたんだが。
「は、はい、今精算しますのでお待ちください。」
おうおう、頑張って薬草数えてるよ。
「はい、小鬼48体の討伐と中鬼8体の討伐、薬草1817本の採取を確認しました。3つとも依頼達成です。」
「ではまず小鬼討伐報酬により480ゼル、中鬼討伐報酬により800ゼル、薬草採取につき54510ゼル。計55790ゼルですね。」
かなり溜まったな、あと依頼を7つこなせば昇級か。
「あ、それとギルドマスターから伝言です。なんでも貴方の力は分かったからCまでなら受けていいそうです。」
「ギルドマスターとはそこまで権力を持っているのですか?」
「ええ、ギルドマスターはセーラの街の領主と同じ権限を持っています。それだけギルドは大きいと言うことです。それにギルドはどの国にもつかないと明言しているので。戦争などの時は国が雇うと言う形を取っています。」
戦争を引き起こして救国の英雄にでもなってみようかな。でもそれはつまらないか。
「ありがとうございました、ではまた明日。」
俺は宿屋に戻ることにした。といってもギルドの裏手なのでそこまで時間はかからないが。俺はこれから槍の練習をしなければならないのだ。
それに新しい魔法も作らなければならない。俺は夜になるまで宿で魔力操作の練習をすることにした。ラス先生曰く魔力操作を繰り返すと魔法発動が速くなるらしい。これを使い毎日毎日練習すれば素早い発動が可能になるだろう。
そして俺は魔力操作の練習を続ける。




