アンラッキーヒーロー9
「いやいや、わかるぞ若者。警察官ってのはな、案外そういうのが好きな奴がいるもんだぞ。ヒーローになるのに最も近い職業だしな。やっぱ、幼少期に正義の心を刷り込むのは情操教育面で良い影響があるってことだ。
オレがガキの頃は、こうだったぞ。ジョ~~チャク!!」
日凪は意外に話に乗ってきた。ついには片掌を天に向けて開き、大股を開くポーズをとる始末だ。おそらく、この中年男が観ていたアニメだか特撮ヒーローの模倣なのだろう。
「はあ……それは知らないっすけどね」
宮部は話を振っておきながら、冷めた返答をした。残念ながら世代が違うせいか、どんなヒーローなのか見当もつかない。
「なんだこの野郎、若さって何だ?振り向かないことだろ?愛って何だ?躊躇わないことだろ?
このくらいは人生の基本だから、しっかり覚えておけよ」
宮部には全くわからない世界の話に、日凪はなぜか熱くなっている。
「……せっかくノってくれたとこ悪いすけど、話戻しますよ。
もしいくらヒーローになりたいと努力して頑張っても、絶対に無駄だってわかったら、日凪さんならどうしますか?それどころか、どう頑張っても魔王にしかなれないってわかりきってしまったら、どうしますか?」
宮部はつい熱くなった。どうやら全く話が通じないわけではないと思ったからだ。