アンラッキーヒーロー8
「……オレ、生きてたらマズいんすよ」
階段を降りながら宮部がそう口走ると、日凪の足が止まった。二階と三階を繋ぐ階段の踊り場で、宮部は解放された。登り階段に腰を下ろした日凪が、三階の中古ゲーム屋だったところを背にする形になった。
「……どういうことだ?」
今まで異様にテンションが高かった日凪が、急に声を落とした。
「……ちっちゃい頃、ヒーローもののマンガとか大好きだったんすよ」
宮部はどういうわけか、最初から話をしたくなった。急に話を変えたせいで、日凪はやはり不思議そうな顔をした。が、話の輿を折るような真似はしなかった。
襟首を掴んでいた手を離し、階段の踊場に宮部を座らせた。そして自らも腰を落として
「ちょいと失敬、な」
と言ってくわえっぱなしのタバコに火をつけた。話を聞くつもりがあることが、宮部にも伝わった。
宮部は斜め下を向いて視線を外しながら、話しはじめた。タバコの臭いが鼻についたが、そこは譲歩することにした。
「……ちっちゃい頃、ヒーローもののマンガとか好きで、オレも大きくなったらヒーローになりたいって、そう思ってたんすよ。
……オジサンくらいの年齢の人からしたら、子供じみた風に聞こえるかもですけどね……」
宮部はここで一旦話を切って、日凪の顔をチラっと見た。
篩にかけるためだ。
もしこの時点でバカにするような様子が一片でも見出せたなら、もう話をしても無駄だと思った。




