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アンラッキーヒーロー7
この男が宮部を助けたのは、実に単純な理由だった。単に、仕事だからだ。正義感でも善意でもなく、それが勤めだからだ。
(この人はヒーローじゃない)
宮部は看破した。口にくわえたままのタバコが真実を物語っていた。日凪とかいう男はたまたまタバコを吸いに屋上に上がって、たまたま宮部の自殺…否、英雄的行為に鉢合わせたに過ぎない。
(こういう人が一番タチが悪いんだ)
この人は自らの偽善に気付いていない。本当は職務をこなしているだけのくせして、一丁前に善行をなしているつもりになっている。余計な真似をしている自覚なんて、全くないのだ。
宮部がどんな人間なのかも知らずに、どんな宿命を背負った子なのかも想像すらせずに、ただ何も考えずに命を助けただけなのだ。
宮部一人を助けたせいで、一体何人の人の命が失われるか、考えもせずに。
「話、聞いてやろうか。何かあるんだろ、理由ってやつがさ……」
日凪は宮部の襟首を掴んで引きずりだした。
「いやっあのちょっと待って……」
宮部は必死に抵抗したが、なにせ体格が違いすぎる。まるでプロレスラーのような怪力に引っ張られて、宮部は後ろ向きに屋上から降りていった。




