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アンラッキーヒーロー35
「伏兵かよ!卑怯な野郎だ!」
人を背中から刺すのは卑怯とは思っていない狂信者は、再びナイフを腰に構えた。
宮部は又聞きした知識を思い出していた。ナイフのような小さな刃物で人を刺す場合、深々と刺さなければ致命傷にあたらない。そのため達人級のナイフ使いを除いては、腰のあたりにどっしりと構えるのが定石だと聞いたことがあった。
その知識が本当だとしたら、この男が人を刺すのは初めてではない。それどころか、人を殺すための最低限度のノウハウを学んでいることになる。
宮部は咄嗟に判断した。まともにやり合ったら、絶対にかなわない。日凪と仲良くコンクリートの上に寝転がるだけだ。
宮部はズボンのポケットを弄った。
そこには思い出の品が入っていた。宮部が身を投げようとしていた、世界で最も身近で愛おしい場所で一番最初に購入した、玩具の拳銃だった。
宮部は銃を構えた。勿論、武器とするには何の役割もない、ただの玩具だ。しかしながら、遠くからの目を誤魔化すには有効だと考えた。




