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アンラッキーヒーロー30
宮部は立ち上がった。
状況を冷静になって考えてみた。日凪が廃工場に入って数分が経過していた。
これは、日凪の予測が的中したことを示唆していた。
廃工場に何もなかったなら、時を置かずに戻ってくるはずだからだ。
滾る気持ちを抑え、宮部は進んだ。日凪を見習い、身を屈めながら前進した。
廃工場の入り口に立って、まず目に入ったのはあの車だった。雑居ビルの手前で遭遇した、あの車だ。
宮部は戦慄に震えた。犯人はいる、と覚悟して歩みを進めたはずだったが、いざ現実に直面すると心が揺れた。このまま踵を返して何事もなかったように装い帰りたい衝動にさえ駆られた。
現に、彼の体が本能的に真っ先に選択したのは後退だった。現状に思考が追いついた時、両脚は早くも帰宅しようとしていることに気付いた。
(オレ、何やってんだよ?)
宮部の心は恐怖に支配されていた。そこには勿論、車の死角にいるのだろう犯罪者に対する恐怖も含まれていた。
だが、それよりももっと大きな恐怖が彼を襲っていた。もしもこのまま逃げ帰ったら、生涯を自らの運命とカルト宗教に永久に怯えて生きていかねばならない気がした。それは、目の前の恐怖を遥かに凌駕していた




