アンラッキーヒーロー31
(オレは臆病者だ)
宮部は自覚していた。
だからこそ、立ち上がった。怖いことが嫌だからこそ、立ち上がった。鬱屈と怯懦と陰惨にまみれた毎日を過ごすことが怖くて怖くて仕方がなかったので、立ち上がった。
怖いからこそ、戦うことに決めたのだ。
宮部の耳に、言い争う声が聞こえてきた。
片方は日凪の声に間違いはなかった。
「グダグダ言ってねえで、そのお嬢さん離せよゴラァ!」
恐る恐る宮部が車の影から覗くと、日凪が二人の男性と対峙していた。
男たちの足元には、高校生くらいの女の子が荒縄で縛られて横たわっていた。目はきつく閉じられたまま、猿轡を噛まされて押し黙っている。
雑居ビルの前で見たものは、やはり間違いではなかった。彼らはカルト宗教の人攫いなのだ。
「そういうわけにはいかないな。この子はね、神聖なる地球市民の会を誹謗中傷する悪人の娘なんだ。この子に罪はないけど、この子の親に思い知らせてやらなきゃならないんだ。
元より丁重に扱って、無事に返してやるつもりさ。奴がデマを撒き散らすのさえ辞めれば、それで済む話なんだからな」
「だいたい、あんたら警察もよくない。宗教を無根拠に否定することは法律で罰せられるべきなのに、ろくすっぽ取り締まられてないじゃないか。警察さえしっかりしてくれれば、オレたちだってこんなことをする必要も無いのに。あんたらが悪いんだぞ」




