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飛空艇①

いつもお読み頂きありがとうございます。

一話で纏めるつもりだった話が長くなってしまったため、二話に分けました。

本日二話投稿しています。

こちらは一話目になります。


 

side 皇 遥


 飛行場は、セントラルエリアから少し離れた場所にあった。

 ここまで来るのに、思ったよりずっと時間がかかった。

 それもこの光景を見れば納得だ。


「うわぁ......!」


 飛行場の入口前。

 敷地を囲うように設置された鋼鉄の柵が、左右にずっと延びている。

 それはもう端から端が見えないくらいずっと。

 遠くから見たことは何度もあったけど、近くで見ると大きさも迫力も全然違う。

 一体どれくらいの広さがあるんだろう。


「飛行場ってこんな広いんだね」


「まぁ何隻もあるからな。ある程度の規模がなきゃダメだろう。でも日本の空港もこんなもんだぞ?」


「え、空港ってこんなに広いの?」


「ああ。行ったことないのか? 小学生の時、社会科見学で」


「ううん。うちの学校は行かなかったよ」


 飛行機の離着陸とか、テレビでしか観たことないから見てみたいな。

 よくドラマで観る。屋外の金網のところから。

 社会科見学なら、ワタルさんやミミさんと一緒に見たのかな。

 それにしてもこの広さ、一人なら絶対迷子になる自信があるよ。


「とりあえず中に入るか。搭乗券を買うからついて来てくれ」


「うん。楽しみ」


 入口を抜けた先は広い空間になっていて、チケットを買うためのカウンターがいくつも横並びになっている。

 その一つに向かい、二人分のチケットを購入する。

 自分の分は出すって言ったんだけど、そんなに高くないから大丈夫だって、クロが私の分も買ってくれた。

 もしかしたら一人で乗ることもあるかも、なんて思って、こっそり購入画面を覗いてみたけど、中々いいお値段でちょっと驚いた。

 ゲームでも空飛ぶ乗り物は値段が高いみたい。


「搭乗口は3番ゲートになります。搭乗開始は今から30分後、出発はその30分後になります。遅れることのないよう、よろしくお願いします」


「ああ、わかった」


 カウンターのお姉さんとの話を終えたクロは、私にチケットを一枚差し出す。


「じゃあこれ、無くさないようにな」


「ありがとう」


 値段を見ちゃったあとだと、素直に受け取るのは気が引けるけど、今は甘えさせてもらう。

 私がもっと強くなった時、今修理に出してもらっている【結界石の指輪】の分までお返しするつもりだ。

 出世払いというやつだ。


 受け取ったチケットには出発時刻と、セントラルエリア発フヨウ山行きと書かれている。

 出発時間まで余裕がある。


「あのさ、まだ時間あるみたいだし、飛行場の中とか見て回りたいんだけど、いいかな?」


「そうだな。なら、そうするか」


「ありがとう!」


 せっかく飛行場に来たんだし、色々見ておきたいな。

 それに、もしかしたら一人で来ることもあるかもだし、覚えておいて損はないしね。


 カウンターを抜けた先、中央にある大きな階段を上がっていく。

 結構な段数だ。

 建物の4階分くらいはありそう。

 息が少しも乱れないのが不思議なくらい。

 そこはさすがゲームといったところ。

 階段の先には真っ直ぐ続く広い通路があって、途中で脇にそれる通路が両側にいくつかある。

 天井から吊るされた案内板によると、曲がった先が各搭乗ゲートとのこと。

 脇道の間隔も広く、私達が乗る3番ゲートもだいぶ先の方に見える。

 さらに突き当たりなんて見えないから、一体どれだけ長い通路なんだろう。

 とりあえず、行けるところまで行ってみようと思う。

 できれば突き当たりが見えるところまでは行きたいな。


「そういえば、飛空艇で行くとこって、ポータルで行くこともできるの?」


 なんとなく思いついたことを聞いてみる。

 乗り物や景色を楽しむってことを除けば、ポータルで移動した方が絶対いいと思う。

 お金もかからないし、移動時間なんて一瞬だもん。


「行ける場所と行けない場所があるな。ただ、ポータルは一度その場所に行かないと、移動先に登録されないから、どの場所に行くにも一度は飛空艇に乗る必要があると考えた方がいいだろうな。まぁ、徒歩や馬車を使うという方法もあるが」


「じゃあ、これから私達が行くフヨウ山も、クロならポータルで行けるの?」


「いや、フヨウ山は飛空艇じゃないと行けない場所だ。他の方法だと、【転移のスクロール】くらいか。徒歩は現実的じゃないしな」


「【転移のスクロール】ってすごく便利そうだけど、あんまり聞かないよね。やっぱり珍しいの?」


 転移アイテムはゲームの定番アイテムだし、マギアにもあるってことは知ってたけど、使ってる人も売ってるとこも見たことないんだよね。


「もらえるクエストはいくつかあるが、自力で手に入れるとなると難しいアイテムだ。ダンジョンの宝箱で運良く手に入れるか、ボスがランダムでドロップするくらいしか入手方法がないからな。それに、いざという時に役に立つアイテムだから、滅多に使う奴はいないだろうな」


「いざという時? それってどういう時なの?」


「一番よく使われるのは高難易度ダンジョンからの脱出だな。途中でアイテムが尽きたり、仲間がやられたりで攻略不可能になった時、自力で戻るのが難しい場合に使われることが多いな」


「あー、そういう使い方もできるんだ。それならみんな使いたがらないのも納得かも。ちなみにさ、転移魔法とかってあったりするの? 【転移のスクロール】の代わりになる魔法みたいなの」


 ここまで【転移のスクロール】が重宝されてるんだから、予想はついてるけど、一応ね。

 思い込みで判断しちゃいけないから。


「今のところはないな。何人か創ろうとしてるやつは知ってるが。気になるならセツカに聞いてみるといい。あいつも創ろうとしている一人だ」


「へぇ、セツカちゃんが。なんかセツカちゃんなら創っちゃいそうだね」


 今までも色々創ってるみたいだし、なんかセツカちゃんって天才ってイメージだから、「できた」とか言って普通に創っちゃいそう。


「いや、結構苦戦してるみたいだぞ。もう長いことやってるからな」


「え、そうなの? ちょっと意外」


「だからハルカも、思いついたことがあったらセツカに伝えてやってくれないか?」


「え? 私の考えなんて全然当てになんないよ。転移のことなんて、なんにもわかんないもん」


「先入観がない方が答えに近いって場合もあるかもしれないぞ」


「そういうもんかなあ......?」


「それにセツカも、ハルカの意見なら素直に聞くんじゃないか? あいつ、ハルカに懐いてるからな」


「え? セツカちゃんが私に?」


 そんな素振り全然ないんだけど。

 いつも無表情だし。

 同じ魔法使いだし、よく話すことはあるけど。

 クロが言うならそうなのかな?


「ああ。まぁそういうことで、気が向いたらでいいから手伝ってやってくれ。と、もう突き当たりだな。時間も時間だし、そろそろ戻るか」


「あ、そうだね。戻ろっか」


 気が向いたら、かぁ。

 そう言われちゃうと、何か言わなきゃって気持ちになっちゃうんだよなぁ。

 まだなんにも思いついてないんだけど。

 とりあえず頭の隅に置いといて、何かピンときたらその時に言おうかな。


 通路の突き当たりまで来てわかったことは、搭乗ゲートは8番まであるってことくらいだった。

 シンプルな造りだから迷うこともなさそうだし、これで次来る時は一人でも大丈夫そうだ。


 通路を引き返して、私達が乗る飛空艇がある3番ゲートの入口に戻ってきた。

 今の時間は、搭乗開始時刻を少し過ぎた頃。

 時間的に、ちょうどいいんじゃないかな。


「この先に飛空艇が停まってるんだよね?」


「ああ、そのはずだ」


「やばっ、テンション上がってきた!」


 気持ちは遊園地にきた時みたいな感じ。

 これからアトラクションに乗るぞーみたいな。


「相変わらず元気だな」


「クロが元気なさ過ぎなんだって。それに私は飛空艇に乗るの初めてだもん。クロだって最初に乗った時はテンション上がったでしょ?」


「まぁ、そりゃあな。でもここまでじゃなかったぞ」


「なら、クロはもう少し感情を出した方がいいよ。時々何考えてるかわかんないもん」


「それは、悪い」


「でも、そこがクロらしいんだけどね」


「......どっちだよ」


 気持ちが高ぶってるせいか、いつもより口が軽い。

 普段言えないこともバンバン言えちゃう感じ。

 毎日こういう気持ちなら、クロにもっと色んなこと聞けるんだけどなぁ。


「でもすごい並んでるね。私達乗れるかな?」


 ゲートに続く通路には人の列ができている。

 曲がり角の先は見えないけど、かなりの人がいそう。

 すでに私達の後ろにも列ができ始めてるし、これ、全員乗れるのかな?


「それは大丈夫だ。100人以上余裕で乗れるしな。それにチケットにも制限があるから、持ってるなら問題なく乗れるはずだ」


「そうなんだ。ならよかった。せっかくここまで来たのに定員オーバーですじゃ、さすがに悲しいもん」


 会話中もゆっくりだけど、列は順調に前に進んでいく。

 少しして、曲がり角を曲がった先、前が見通せる所までやってきた。

 人がずらりと並んでいる。たぶん5、60人くらいはいそう。

 その先の方にはゲートがあって、係員みたいな人がチケットの確認をしている。

 どうやらあそこが渋滞の原因みたい。


「あ。ねえクロ。あそこの列のとこ、あの子がいるよ」


 門の少し前、見覚えのある男の子が並んでいるのが見えた。

 エミールくんだ。

 私達が通路の突き当たりまで行ってる間に、先に並んでいたみたい。

 向こうもこちらに気づいたらしく、大きく両手を振ってきたから、私も振り返す。


「やっぱり、同じ飛空艇に乗るんだね」


「みたいだな」


 そんなエミールくんは、両手で大きく「〇」の形を作って、私達に向けてくる。

 たぶん、これはアレだ。

 臨時パーティーへのお誘いだ。


「ねえクロ、あの子まだ諦めてないみたいだよ」


「みたいだな」


「どうする? 断る?」


「そうだな」


「わかった。返事しておくね」


「悪い。助かる」


 私は両手で大きく「✕」を作って、エミールくんに見せる。

 パーティーには入りませんって意思表示だ。

 すると、それを見たエミールくんは、大袈裟に肩を落としてみせる。

 こういうやり取り、ちょっと楽しいかも。


「なんか、楽しい子だね」


「そうだな」


「クロはやっぱああいう子は苦手?」


「まぁな。嫌いではないが」


 うん。まぁそうだよね。

 クロ、ああいう子得意じゃなさそうだもん。

 でもそうなると、私ってどうなんだろう。

 どちらかというとエミールくんタイプって感じがするけど。

 うーん。聞きたいけど、聞きたくない。

 もしも、苦手とか思われてたら悲しいし。

 でも、こればかりはなぁ。

 そう思われてないことを願うしかないかぁ。


 そしてエミールくんは、無事ゲートを抜けると、こちらに手を振って奥に歩いていく。

 しばらくして、私達もゲートまでやってきた。


「それでは、チケットを拝見させてもらいます......はい、結構です。奥へお進み下さい。搭乗後、出発までしばらくお待ちください」


 手に持ったチケットを確認した係員さんが奥へと促す。

 いよいよ飛空艇に搭乗だ。


お読み頂きありがとうございました。

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