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クロを語る会②

いつもお読み頂きありがとうございます。


 

side 皇 遥


 そういえば、前に一輝くんが、ワタルさんとミミさんの過去について少し話してくれたっけ。

 人付き合いに気をつけろって、そういう話。

 もしかして、一輝くんが変わったキッカケって......


「......それで、あの、ミミさん。そのGROUND・ZEROが、一輝くんとどういう関係があるんですか?」


 何も知らない体で聞いてみる。

 きっとミミさんは私が何も知らないと思ってるから。

 正直、聞いていい話なのかな? とも思った。

 だけど、私は知りたい。

 ミミさんとワタルさんに何があったのか。

 そして、一輝くんの過去の話を。


「それを話すには、まずあたし達三人の関係を話さなきゃいけないんだけど......ハルカはもう太陽と月のメンバーだし、その辺のことも知っておいた方がいいかもね」


 そこで一旦話を止めたミミさんは紅茶を一口飲むと、昔を思い出すように話し始める。


「あたしの家と渉の家って結構近くてさ、親同士も仲が良いこともあって、小さい頃から一緒にいたんだ。それで、渉は小さい頃から今みたいな感じだったけど、私はもっと静かで、引っ込み思案でさ、いつも渉の後ろを歩いていて、そんなあたしを渉はいつも気にかけてくれたんだ」


 語るミミさんの口調は優しい。

 ワタルさんとの思い出をすごく大切にしてるって感じが伝わってくる。


「それでよくどちらかの親に近くの公園に連れてってもらって、そこで二人で遊ぶことがあったんだけど、あの日、たまたま同じ公園に来てたあいつと出会ったんだ」


「あいつ......それって、もしかして」


「そう。一輝。あいつ、一人で遊んでたんだよ」


「え? 一人で、ですか?」


「他に何人も子供がいたのに。ウケるよね」


 こう言ったら本人に怒られそうだけど、想像通りでちょっと安心する。

 小さい頃の一輝くんといえ、誰かと一緒にはしゃぎ回る姿なんて想像出来ないもん。


「それでね、そんなあいつに気づきながらも二人で遊んでたんだけど、しばらくしてさ、渉があたしに言ったんだ。あの子を誘ってもいいか? って」


「なんていうか、ワタルさんですね」


「ホントにね」


 きっと、一人でいる一輝くんを放っておけなかったんだと思う。

 一輝くんもだけど、ワタルさんも、小さい頃からワタルさんだったんだ。


「まぁ、そんな感じで一緒に遊ぶことになった訳なんだけど、まぁ思いのほか二人が意気投合しちゃってさ、二人でずっと遊んでたってわけ。私を置いてけぼりにしてね。ちょっとヒドいと思わない?」


「それは、あはは......」


「その日の帰りは、ずっと渉に謝られっぱなしだったな」


 小さい男の子なら、女の子を放っておいて遊ぶくらい普通な気もするけど、あのワタルさんがっていうのはちょっと意外。

 帰り道でずっと謝ってたっていうし、相当悪いと思ったのかも。

 それにしても、ワタルさんが謝る姿ってどんな感じなんだろう。

 ごめんなさい。とかいって手を合わせたりするのかな?

「すまない」って言いながら、ニカッて笑う姿しか想像出来ないよ。


「それから公園で一輝に会うたび、一緒に遊ぶようになったんだ。さすがに最初の時みたいにあたしだけ置いてけぼりってことはなかったけど。当時はあの二人の後を追いかけるのに必死だったなぁ」


 一輝くんって、普段は暗い感じでやる気も全然感じられないけど、運動神経すごくいいんだよね。

 クロで戦ってる時なんかヒュンヒュン動くし、クラスマッチの時もすごかった。

 ワタルさんも絶対運動神経いいよね。完璧超人って感じだし。

 当時のミミさん、あの二人について行くの相当大変だったんじゃないかな。


「今だから言うけど、当時は一輝のこと嫌いだったんだよね。あいつのせいで渉が一緒に遊んでくれなくなっちゃったから。まぁ、渉も渉なんだけどね。いつも誘うのは渉からだったし。今思うと渉の方が一緒に遊びたがってたのかもね」


 なるほど。

 ワタルさんが一輝くんを気に入ったってことかぁ。

 まぁ普通に考えて、どっちが話しかけに行くかって言ったら、やっぱりワタルさんだもんね。

 それで小さい頃のミミさんは一輝くんが嫌いだったと。

 その気持ちはよくわかる。

 いつも一緒に遊んでた相手が取られちゃうのは嫌だもん。

 それが好きな相手なら尚更だよ。

 あー、もしかして、ミミさんが一輝くんにだけキツいのって、このことが原因なのかな?

 だとすれば、あの当たりの強さも納得かも。

 でもそうなると一輝くん、なんにも悪くないってことになるんだよね。

 そこはちょっと気の毒かも。

 本人、あんまり気にしてなさそうだけど。


「あの、ちなみになんですけど、一輝くんから誘いに来たことってあるんですか?」


「そんなのあるわけないじゃん」


「ですよねー」


 そりゃあそうだよね。

 わかってたけどさ、一応ね、聞いてみたかっただけです。


「そんな感じで小学校にあがったんだけど、あいつも同じ小学校、しかも同じクラスだったから、毎日一緒にいるようになったんだ。当時から渉は人気者で、すぐクラスの中心人物になったけど、あいつとの関係は変わらなかった。渉にとっての一番の友達は一輝だって、たぶん周りも気づいてたんじゃないかな。まぁ一輝ってあんなだけど、話せば普通のやつじゃん? だから、クラスの関係も悪くなかったんだよね。もちろん渉が上手くやってたっていうのはあるけどね」


 人気者のワタルさん。そのワタルさんが一番気にかける一輝くん。

 きっとクラスの人達は少なからず一輝くんによくない感情を持ってたと思う。

 それでも上手くいってたのって、やっぱりミミさんの言う通り、ワタルさんが上手く立ち回ってたからだと思う。

 私もワタルさんと似たような立場だから、なんとなくわかる。


「それで、あれは確か......小学校5年? 6年だったかな。マギアがリリースされたんだ。当時はすごい話題になって、ってそれはハルカも知ってるか」


「はい。本当にすごかったです」


 公開されたPVを初めて観た時の衝撃は今でも覚えてる。

 空想やおとぎ話の中でしか見ることのできなかった幻想世界。歴史の本でしか見たことのない古い中世の街並み。それを五感で体感できる。しかも現実と思わせるくらい綺麗な映像で。

 似たようなゲームはいくつもあったけど、マギアは別格だって、当時私の周りでもすごい騒がれてた。

 あの時、私はまだマギアができなくて、クラスの話題にはほとんど入れなかった。

 マギアができないことはもちろんだけど、話題についていけないのが嫌で、パパをすごく恨んでたっけ。

 もちろん今はそんなことない。

 むしろ感謝してるくらい。

 あの時マギアを始めていたら、今の私はきっといないから。


「で、渉と一輝、もちろんあたしも始めたんだけど、あの二人は最初からちょっとおかしかったね」


「おかしかった? どういう風にですか?」


「うーん。そうだなぁ......周りが遊びでやってるのに対して、二人は本気でやってる、みたいな感じかな。よくステータスがどうのとか、このエリアがどうのとか二人で話し合ってたよ。ガチ勢ってやつ。あー、魅せられた。っていう言葉の方がしっくりくるかも。だからついてくのがホントに大変だったよ。まぁそのおかげで今があるんだけどね」


 一輝くんとマギアを一緒にやる機会は多いけど、いつも私を強くするための手伝いをしてくれていて、本気で戦ってる姿を見たのは、あのバトルが初めてだった。

 正直、圧倒されっぱなしだった。こんなにすごいのかって。

 この人の隣で戦うには、どのくらい強くならなきゃいけないのだろうって。

 当時のミミさんも似たように思ってたんだと思う。

 ワタルさんと一輝くん、本気の二人について行くのは、簡単なことじゃないだろうから。


「とまぁこんな感じで小学校の時の話は終わり。で、これから本題に入ってくんだけど、ごめんね、前置きが長くなっちゃって」


「いえいえ。知らない話ばかりですごく楽しかったです。ありがとうございます」


「ふふ、ならよかった」


 ワタルさんやミミさんの小さい頃の話なんて他では絶対聞けないし、本当に貴重な話を聞かせてもらった。

 それに一輝くん。

 小さい頃から一輝くんは一輝くんで、私のイメージ通りだったのがちょっと嬉しい。

 本人に聞いても絶対話してくれなかっただろうし、今日のことを知ったら嫌な顔するだろうから、このことは内緒にしておこうと思う。


 前置きは終わり。ここからが本題。

 ミミさんが一旦ここで区切ったのは、たぶんさっきまでみたいな雰囲気の話じゃないから。

 私もちゃんと聞かないと。

 一輝くんが変わった理由。

 太陽と月が生まれた話を。

お読み頂きありがとうございました。

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