クロを語る会③
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
side 皇 遥
「......じゃあ、ここからは中学の時の話。小学校を卒業して、全員同じ中学校に進学したんだ。渉とあたしは同じクラスだったけど、一輝は別のクラスになったの。まぁ他の小学校からも生徒が進学してきた訳だから、当然といえば当然なんだけどね。渉はすぐにクラスの人気者になって、周りに人が集まってきたんだ。学校にいる間は、必ず近くに何人かいたんじゃないかな」
「すごい人気ですね」
「まぁね。渉はすごいから......それで、一輝との関わりも、次第に少なくなっていったんだ。渉の周りにはいつもクラスの誰かがいたから、一輝も遠慮したんだと思う。小学校の時はいつも一緒にいたのに。なんかそれが無性に嫌だったなぁ」
「あの、ミミさんは、その時にはもう一輝くんのこと、嫌いじゃなかったんですか?」
「うーん、どうだろう。当時のあたしと一輝って、渉を挟んでの関係で、ほとんど話したことがなかったんだよね。それでも付き合いだけは長かったから......うん、嫌いじゃ、なかったんだろうな。もうその頃には。当たり前になってたんだと思う。三人でいる関係が」
ミミさんとワタルさんと一輝くん。
全員が仲良しって訳じゃないけど、それでもずっと一緒に過ごしてきた。
その関係が終わろうとしてる。
当時のミミさん気持ち、考えただけで胸が苦しくなる。
「学校で渉と一輝が話すことも無くなって、同じクラスなのに、あたしも渉とほとんど話せなくなって、それでもマギアは一緒にやってたんだ。クラスのやつにいくら誘われても、渉はマギアの時だけは断ってた。だから、その時間だけが、あの時のあたしにとって唯一の楽しい時間だったんだ。だけど、その時間も長くは続かなかった」
「なにがあったんですか?」
「クラスの一人がギルドを作ろうって言い出したんだよ。クラスでマギアをやってるメンバーを集めてね」
「ギルド......それって」
「GROUND・ZERO。渉をギルマスにしてギルドを立ち上げたんだ」
クラスのみんなでギルドを立ち上げる。
確か、うちのクラスの佐藤くんもギルドを作ってたっけ。
きっと楽しいだろうし、団結力もあるんだろうとも思う。
だけど、すごく個人的な意見だけど、私はこのGROUND・ZEROというギルドが嫌いだ。
「渉を囲って、あたしと一輝を遠ざけるのが目的だったんだと思う。うちのクラスには同小のやつもいたからね。あたし達の関係も知ってただろうし、それに、渉にとっての一番が誰なのか、渉の近くにいるやつ程わかってたはずだから」
「ワタルさんは断らなかったんですか? ギルマスになるのを」
私の知ってるワタルさんなら、絶対首を縦に振らない。
見てればわかる。
ワタルさんにとって一輝くんは一番の親友で、ミミさんは大切な人。
その二人を自分から遠ざけることなんてしないはずだもん。
「あたしが言えた義理じゃないけどね、当時の渉は今みたいに強くなくて、結局押し切られちゃったんだ。それでもすごく悩んだんだと思う。あの時の渉、すごく辛そうだったから」
「そんな......」
「GROUND・ZEROには、ほぼクラスの全員が入ってたと思う。もちろんあたしも。ギルドの噂は広がって、他のクラスの人も入って、どんどん巨大化していった。そして人数が増えるたびに渉の顔から笑顔が消えていったの。顔は笑ってるけど、心が笑ってない顔。そんな感じになっちゃったんだ」
「あの、ミミさんは、大丈夫だったんですか?」
さっきミミさんは、ワタルさんとほとんど話せなくなったって言っていた。
だから、ワタルさんと同じように、ミミさんの身にも何かが起こったような気がしてならない。
「うん......大丈夫、じゃなかったかな。あたしもギルドに入ったって言ったけど、渉とは話すことができなかったんだ。女子達によって遠ざけられたから。あたしって、渉を好きな女子からしたら、かなり邪魔な存在だったから。それに虐めやすかったんだろうね。なにも言い返せなくて、ずっと我慢してるだけだったから。だから結構酷いことも言われたりしてね。そんなことが続いて、学校に行けなくなっちゃったんだ」
「え? 学校、行けなくなったんですか? ミミさんが?」
「驚いた? あの時は弱かったんだ。あたしも。本当の自分を出して、渉に嫌われるのが怖くってね。嫌なことを言われても言い返さない大人しい女の子を演じてたんだ。男の子ってそういう女の子が好きでしょ? まぁ、全部が全部演じてたって訳じゃないけどね。でも結局、それで自分が病んじゃった訳だからホントダメダメだよね」
「そんなことないです。ミミさんはすごいです」
好きな人に嫌われたくないから、自分を偽る気持ち、すごくわかる。
誰だって好きな相手には良いように見られたいもん。
ミミさんはそれを小さい頃からずっと続けてきたんだ。
渉さんに好かれる為に。それって本当にすごいことだと思う。
例えそれで自分が傷ついちゃったとしても、私はミミさんを尊敬する。
「うん。ありがとね、ハルカ。......じゃあ、話の続きね。学校に行けなくなって、家からも出られなくなって、ずっと家に閉じこもる日が続いたんだ。親にすごく心配されたけど、理由は言えなかった。心配かけたくなかったし、もし理由を話して状況が悪化したらって思ったら怖くてね。渉からも連絡が来たけど、返さなかった。渉も大変なのに、これ以上迷惑なんてかけたくなかったから」
話がどんどん悪い方に進んでいく。
聞いていて胸が苦しくなる。
だけど、聞かなきゃいけない。
これは私が知っておくべき話だから。
例えこれからもっと辛い話になったとしても。
そう覚悟したのに。
「そんな日が二週間くらい続いた頃だったかな。悩んで悩んでずっと悩んで、ふと思ったんだ。なんで私がこんなに悩まなきゃいけないの? って。そしたら今までのことが馬鹿馬鹿しくなって、無性に腹が立ってきたんだ。もうどーでもいいやって、半ば自暴自棄状態。次の日に学校に行ったんだ。何か言ってくる奴がいたら、返り討ちにしてやるって、そんな気持ちでね。だけど、終わってたんだ」
「え? 終わってたんですか? え?」
終わってた? それって解決してたってこと?
ミミさんのいない間に?
「うん。GROUND・ZEROは事実上の壊滅状態になってた。渉がギルドから脱退してたんだよ。あのギルドは渉がいなきゃ機能しないギルドだから」
「な、何があったんですか? ワタルさんが自分から辞めたってことですか?」
「ううん、渉はなにも。やったのは一輝。あたしもあとから渉に聞いたんだけどね」
「一輝くんが......そっか。一輝くんが」
そうだよね。一輝くんがこの状況で、なにもしないはずないもんね。
「うん。GROUND・ZEROと勝負したんだって、自分が勝ったら渉をギルドから脱退させて、二度とマギアで関わるなって」
「なんか、一輝くんらしいですね。でも、よく相手も受けましたね。断らなかったんですか?」
こんなこと言いたくないけど、一方的に一輝くんが言ってきたことなら、相手にしなければいいだけの話だと思うんだけど。
「挑発したみたいね。一輝対GROUND・ZERO。一対全員。たった一人相手に逃げるのか? って。で、戦って、全員倒して渉を脱退させたんだって」
「あはは、なるほど」
うん。やっぱり一輝くんだ。
もうすご過ぎて笑うしかないよ。
「あ、ちょっと気になったんですけど、相手は渉さんを素直に脱退させたんですか? 今までの話を聞いてると、負けても言うこととか聞かなそうですけど」
渉さんはGROUND・ZEROの旗頭だ。
そんな重要な人を、負けたからちゃんと約束を守りますで手放すとは思えないんだよね。
そもそもマトモな人達なら、今回みたいなこと起こさないと思うし。
「正解。ハルカの言う通り騒いだらしいよ。賭けなんてしてないとか。でも渉がそれを許さなかった。約束は守るべきだって自分から抜けたみたい。渉としては願ったり叶ったりの状況だったしね」
「じゃあ、GROUND・ZEROのメンバーがワタルさんに関わってくることはなくなったってことですか?」
「マギアではね。さすがに学校ではそうはいかなかったけど、渉も今回のことで前の渉じゃなくなったから、もう振り回されることはなかったね」
「今のワタルさんになったってことですね」
「そーいうこと」
そっか。それならよかった。
今のワタルさんになったなら、もう安心だ。
ならきっと、全部上手くやっちゃったんだろう。
話の感じ、ミミさんも今の強いミミさんになったんだと思うし、これ以降もう変なことは起こらなかったんだろうな。
はぁぁ。よかった。聞いてるだけなのにドッと疲れたよ。
「で、このあと渉と一輝が新しくギルドを立ち上げるの。もう同じようなことが起こらないようにって」
あ、そうだ。
まだこの話が残ってた。
私達のギルドの大事な話。
「太陽と月ですね」
「そう。名前をつけたのは渉。日野と黒月、渉と一輝、二人のギルドだって。まぁ、すぐにあたしも入ったんだけどね」
「いい名前ですね」
「まぁね」
自分達の名前を入れたギルド。
ワタルさんの一輝くんに対する思いとか、感謝の気持ちとか、そういうのが色々詰まってるんだろうなって思わずにいられない。
そんなギルドに入れてもらったんだ。
私もそういう風に思ってもらえるくらい頑張らないと。
「というわけで、この話はおしまい。おもしろい話じゃなかったけど、聞いてくれてありがとね」
「いえいえ。とても勉強になりました。ありがとうございました」
小さい頃の話から太陽と月ができるまで。
私が知りたいことがいっぱいの貴重な話だった。
一輝くんの話も色々聞けたし、ミミさんと話せてホントよかった。
「じゃ、元の話に戻ろっか」
「え?」
元の話?
お読み頂きありがとうございました。




