VS GENESIS②
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こちらは1話目になります。
side 皇遥
「......何とか間に合ったかな。2人共大丈夫?」
刀を構え、工藤くんと対峙したシンヤくんが、背中を向けたまま尋ねてくる。
「うん、大丈夫だよ」
本音を言えば、来るのがギリギリだよ とか、もうダメかと思ったよ とか、色々伝えたいことはあるけど、助けてもらって文句みたいなことを言うのはどうかと思い、胸に留める。
だけどナオは、
「シンヤ、あんたギリギリ過ぎ。マジで死んだかと思ったじゃん」
私が言えなかったことを平気で言ってのける。
それに対するシンヤくんも、ナオの言葉に気を悪くした様子はなく、
「あはは、ごめんね。これでも急いで来たんだよ」
視線は工藤くんを捉えたまま、ナオの憎まれ口に苦笑いで返した。
それはまるでいつもの教室でのやり取りのようで。こんな状況なのに私の心は、少しだけ温かくなった。
よかった。
シンヤくんが来てくれて、本当に。
そうじゃなかったら今頃、私とナオは......
と、その考えに至ったところで一つの疑問が浮かぶ。
確か、あっちにはミナトさんが行くって言ってたよね?
「ねえシンヤくん、ショウくんは大丈夫なの?」
ミナトさんはGENESISのギルドマスターだ。
それに普段の口調や態度からも、絶対の自信が窺える。
あの人が弱いなんてとても思えない。
それにあっちには、副ギルドマスターのシュウジさんもいる。
正直、ショウくん一人じゃ......
そんな私の考えを肯定するかのように、シンヤくんの表情に陰が落ちる。
「......たぶん、大丈夫じゃない。だけどショウちゃんは僕に、2人の所に行ってくれって言ったんだ。
こっちは俺が何とかするから、2人を頼むって......」
シンヤくんも迷ったはずだ。
自分がいなくなったら、ショウくんがどうなるかなんてわかりきってるから。
だけど、シンヤくんは私達の所に来た。
来てくれた。
それはきっと、私達もまた、自分が助けに行かないとどうなるかがわかっていたから。
でも、シンヤくんはまだ、ショウくんを諦めてない。
「......だから、すぐに終わらせて戻るよ。ショウちゃんの所に」
シンヤくんは、工藤くんへ向ける視線を鋭くする。
「......陰キャ、またテメェかよ」
不意打ちを受けた相手が、因縁のあるシンヤくんだとわかり、工藤くんは憎悪に満ちた表情でシンヤくんを睨みつける。
「......どうも、クラスマッチ以来だね」
対するシンヤくんの口調は、普段と変わらない。
だけどその視線は、シンヤくんとは思えない程 鋭く、工藤くんを真っ向から睨み返す。
そんなシンヤくんの表情が気に入らないのか、工藤くんは鼻で笑いながら、普段の調子で話しかける。
「ハルカ先輩達を意識してるのか知りませんけど、陰キャのくせにすぐ終わらせるとか かっこいい事言ってましたね?
正直似合わないっていうか、逆にダサ過ぎてウケるんですけど」
完全に見下した態度と口調。
だけどシンヤくんは、
「そう? 事実にかっこいいもダサいもないと思うけど?
それよりも時間稼ぎのつもりかな? 僕からすれば君も大概ダサいと思うけど?」
表情一つ変えず、淡々と工藤くんを煽り返す。
予想外の反撃と、全く崩れないシンヤくんの表情。
自分の思い通りにならないシンヤくんに対し、大きく舌打ちをした工藤くんは、
「チッ......相変わらずの減らず口かよ。なら望み通りすぐに終わらせてやるよ」
剣を構え、シンヤくんへと駆け出す。
「『ツインアクセルスラッシュ』」
「......『水霊刀技─水鏡─』」
お互いがスキルを発動。
両手に持った剣で素早く斬り掛かる工藤くんを、守りの構えでシンヤくんが迎え撃つ。
高速の連撃。
雷光剣が、エーテルブレードが、物凄い速さと手数で襲いかかる。
それをシンヤくんは全て受け流す。
まるで全てが見えているかのように、冷静に、確実に捌いていく。
だけど、それだけ。
どんなに攻撃を捌いても、シンヤくんは一切反撃しようとしない。
ただひたすら防御の構えで、工藤くんを見据えながら、攻撃を受け続ける。
「おい陰キャ、デカい口叩いた割に反撃も出来ねぇのかよ? マジでダセェな」
「......それは僕に一撃でも入れてから言ってみたら?」
「クソが......うっせぇんだよ!」
激昂した工藤くんの攻勢が増す。
それでもシンヤくんはただ受け続ける。
防戦一方の戦い。
だけど、しばらく続いた激しい剣撃の後、シンヤくんがポツリと呟く。
「......大体わかった。やっぱキミ、大したことないね」
今まで一切反撃しようとしなかった、シンヤくんの強気な発言。
傍目にはただ強がって、煽っているようにしか見えない。
「はぁ? だったら俺に一撃でも入れてみろよっ!」
先程のシンヤくんと同じ発言。
だけど、返すシンヤくんの眼光は、鋭く工藤くんを射抜いている。
「そう? じゃ、遠慮なく......『水霊刀技─篠突─』」
一瞬の隙。
隙と言うにはあまりにも短い攻撃の合間。
そこを狙い、シンヤくんが無数の突きを繰り出した。
「くっ......そがっ!」
攻撃を受けた工藤くんが反撃に出ようとする。
だけど、シンヤくんは既に体勢を低く、次の攻撃動作に入っている。
「『水霊刀技─水禍─』」
「ぐぅ......」
刀を横薙ぎに振ると、周囲から発生した水が球体を作り出し、工藤くんを包み込む。
「じゃあ、またね」
水牢の中、苦悶の表情で睨みつける工藤くんへ、刃に渦巻く水流を纏わせたシンヤくんが、霞の構えを取る。
「『水霊刀技・極─慟哭之蟒蛇─』」
刺突の一閃。
水流は巨大な水蛇に姿を変え、耳を劈く叫びを上げながら大きく口を開け、
「クソ陰キャがぁぁ───」
水球ごと工藤くんを飲み込むと、空へと消えていく。
「シンヤ、すご......」
「うん......」
圧倒的な戦い。
水蛇が消えた方向、空を眺め茫然と立ち尽くす私とナオに、構えを解いたシンヤくんが話しかけてくる。
「じゃあ僕はショウちゃんの所に戻るから!」
今にも走り出しそうなくらいの早口。
だけど、その勢いは気の抜けた声に阻まれる。
「あーあ、タクミ君もやられちゃったか」
「っ!?」
慌てて振り向いた先には、両手に柳葉刀をぶら下げたミナトさんがいて、
「残念、来るのが少し遅かったね」
相変わらずの笑みを浮かべていた。
来るのが遅かったって......まさかっ!?
さっきまでショウくんが戦っていた所に目を向ける。
だけどそこにいたのは、シュウジさんとリュウトと呼ばれていた弓使いだけ。
ショウくんの姿はない。
「ショウちゃん......」
同じ方向を見ていたシンヤくんは、ショウくんの名前を呟くと、ミナトさんに向け刀を構えた。
「赤髪の侍君もだけど、君達かなりいい感じだよね。相当やり込んでるでしょ?」
ミナトさんは、武器も構えずシンヤくんに話しかける。
一見すると隙だらけの姿。
だけどチャンスだとは到底思えない。
現にシンヤくんからも仕掛ける気配を感じない。
「正直うちのギルドに欲しいくらいだけど、ごめんね。
うちってビジュアル重視だからさ、ちょっと君達じゃ足りないんだよねぇ」
シンヤくんの顔を見ながら、ヘラヘラと悪びれた様子もなくミナトさんは話す。
そんな言い方......
シンヤくん達のこと、何も知らないくせに。
思わず拳を握り締める。
シンヤくんもショウくんも、人に悪く言われるような人じゃない。
私は2人のいい所をたくさん知ってる。
言い返さなきゃ。
そう思って口を開きかけた時、
「大丈夫です。元々入るつもりもありませんし、言われなくても、自分の外見についてはちゃんと自覚してるんで」
シンヤくんは、表情を変えず、淡々と言葉を返した。
私は、何も言えなくなった。
シンヤくんが、その表情が、ミナトさんの言葉を受け入れてしまっているから。
そんなこと言わないでよ。
シンヤくんがそんなこと言ったら、自分でそう認めちゃったら、私、なんにも言えないじゃん......
だけど、それを良しとしない人がいた。
俯く私の隣で、敵意を剥き出しにした表情で、ナオがミナトさんを睨みつける。
「あんたさぁ、さっきから好き勝手言ってるけど、シンヤはうちのギルドのメンバーだから! ぜってーやらねーしっ!
ってゆーか、あんたのとこの奴らより、シンヤの方が100倍いいからっ!」
ハッキリとそう言い切ったナオは、続けてシンヤくんに目を向ける。
「それとシンヤもシンヤだから。
なに言われっぱなしで納得してんの?
あんた十分いい男だから。もっと自信持ちなよ」
「あ、えっと、うん、その......ありがとう、ナオさん」
今までにないくらいの動揺を見せながら、シンヤくんはナオにお礼を伝える。
「えーなにそれ? めっちゃ青春してんじゃん。よかったね、青侍君」
相変わらずの人を小馬鹿にした態度。
だけど、受けるシンヤくんの表情は、さっきまでとは全然違う。
「そうですね。本当に......僕には勿体ない人です」
目を閉じ、噛み締めるように呟いたシンヤくんは、ミナトさんを見据え、纏う空気を鋭くする。
「......いいね、その感じ。じゃあそろそろ始めようか。
君、結構強いから俺も少し本気でやるけど、いいよね?」
ミナトさんの雰囲気が変わる。
「『獣装、酒呑童子』」
お読み頂きありがとうございました。




