VS GENESIS①
いつもお読み頂きありがとうございます。
side 皇遥
『それではバトルを開始してください』
機械アナウンスが戦闘開始の合図を告げると同時にショウくんとシンヤくんが相手へと駆け出す。
「行くぞシンヤ! 『獣装! 羅刹!』」
「うん! 『獣装、夜叉!』」
ショウくんは赤髪の二本角の鬼に、シンヤくんは青髪の一本角の鬼に、その姿を変える。
「『集中』『心眼』『不屈』『気炎万丈』」
「『集中』『心眼』『見切り』『三尺秋水』」
それぞれが自分にバフをかけて身体能力を上げると、ナオもスキルを発動させる。
「『ワード・オブ・フィジカル』『ワード・オブ・マジック』『セイクリッドサークル』」
ショウくんとシンヤくんには物理、私には魔法の攻撃力を上げるバフを使い、自身の周りには防御の結界を展開させる。
「ハルカ、私の近くから離れないで」
「うん! ありがとう」
次は私の番だ。
ナオにお礼を言いつつ相手に杖を向ける。
狙うのはショウくんとシンヤくんが倒そうとしている一番端にいる魔法使い。
確実に一人ずつ。
全力で!
「いくよっ! 『ファイアウォール!』」
狙うのは魔法使いの横。
巨大な炎の壁を出現させて孤立させる。
「......からのっ! 『フレイムバインド!』」
魔法使いの足元に魔法陣が出現し、何本もの炎が魔法使いを縛り上げる。
「なっ!? くそっ! 解けねぇ!?」
拘束された魔法使いにショウくんとシンヤくんが仕掛ける。
「助かるっ! 『火霊刀技─炎月・燦然─』」
「ありがとう! 『水霊刀技─飛泉─』」
ショウくんが炎を纏った刀身を鞘から真一文字に斬り付け、二の太刀で斬り下ろすと、跳躍していたシンヤくんが水を纏った刃を魔法使いへと斬り下ろす。
「ぐぅ......クソが ────」
阿吽の三連撃。
魔法使いは怨声を上げながら白い粒子となって消えた。
よし! まずは一人目。
心の中でガッツポーズをする。
まだ残り5人いるけど、この調子なら......
そんな私の耳に相変わらずの声が届く。
「うわっ! シュン君やられちゃったよ。やっぱ獣装使わせないとダメかぁ」
ミナトさんは驚いた様子を見せるけど、武器すら構えていない。
それに獣装もわざと使わせてないらしい。
完全に下に見られている。
でも油断してくれているなら好都合。
そんな態度をとっていられるのも今のうちなんだから!
「シンヤ、このまま行くぞっ!」
「わかってる!」
ショウくんとシンヤくんが次の相手へと駆け出す。
次に狙うのは弓使い。
先に後衛を潰していくようだ。
なら私も!
「いくよっ!『フレイムランス!』」
「『火霊刀技─火砲─』」
「っ!?」
狙いを定め、全力の炎の槍を放つと同時に、ショウくんが弓使いに素早い突きを繰り出す。
だけど、
「『アイギス』」
「えっ!?」「なっ!?」
突如出現した巨大な盾に攻撃を防がれる。
「......リュウト君、油断しないで下さい」
「は、はい! シュウジさん、ありがとうございます!」
弓使いの視線の先には副ギルドマスターのシュウジさん。
手に持った本が光り輝いている。
あれは、ミミさんと同じ......
強力な防御魔法や結界魔法。
味方なら心強いけど敵になると本当に厄介だ。
「私が守ります。リュウト君は攻撃を」
「はいっ!『ブリューナク!』」
「っ!?」
リュウトと呼ばれた弓使いが、高出力の電気を帯びた矢をショウくんに向けて放つ。
「『水霊刀技─千波─』」
ショウくんの前に素早く出たシンヤくんが刀を振り抜くと、2人を囲うように幾重の波が現れ、矢を無力化する。
「シンヤ、助かる!」
「守りは僕がするからショウちゃんは攻撃を!」
「任せろっ!」
弓使いの攻撃をシンヤくんが止め、ショウくんが攻撃を仕掛ける。
だけど何度破壊しても現れる巨大な盾は、ショウくんの攻撃を全く通さない。
一向に進展しない膠着状態が続く。
私も援護したいけど......
「『アースシールド!』」
飛来する無数の氷塊を土壁で防ぐ。
......先にこの魔法使いを何とかしないと。
「ごめん、ハルカ。本当は私がやらなきゃいけないのに」
ナオが申し訳なさそうに謝ってくる。
ナオのジョブは神官。
守りを得意とするジョブだけど、ナオは元々戦いが好きじゃない。
それでも参加してくれたのは私がいるから。
バフをかけてもらったし、これ以上無理はさせられない。
「大丈夫。これくらい全然平気だから」
そう。
こんなことで弱音を吐いてるようじゃ、いつまで経っても黒月くんになんて追いつけない。
私がやるんだ。
一人で、あの魔法使いを。
「『アースシールド!』」
土壁を3枚重ねるように出現させて時間を稼ぎ、その間に魔力を溜めていく。
今の私が使える一番威力の高い魔法......
時間がかかるけど、その分威力が上がっていくチャージの魔法。
魔力を。
いっぱいの魔力を。
もっと、もっと、もっと......
出来上がったのはバチバチと放電する高密度の火球。
それを3枚目の土壁が壊されるのと同時に魔法使いに向けて放つ。
「いけっ!『ファイアボルト!』」
「え───」
弾丸のような速度で発射された火球は、魔法使いに当たると大爆発を起こし、その存在を一撃で消し飛ばす。
よし! これで残り4人。
「ハルカ、あんたいつの間にこんな......」
ナオがさっきまで魔法使いが立っていた爆心地を眺めながら唖然としている。
でもこんなのワタルさんの使う魔法に比べたら全然足りない。
もっと強くならなきゃ。
「あらら、イブキ君もやられちゃったかぁ。
ハルカちゃん本当に初心者? すごい魔法じゃん」
2人もやられたのに、ミナトさんの声からはまだまだ余裕が感じられる。
だけど直後、その雰囲気が重々しいものに変わる。
「......でもそろそろ倒しにいこうかな。タクミくん、獣装使っていいよ。俺は侍君の相手してくるから、ハルカちゃんと遊んであげなよ」
「はい、わかりました」
ミナトさんの言葉を受けて、ずっと静観していた工藤くんがこちらに足を進める。
「すみません、ハルカ先輩。本当はハルカ先輩に剣なんか向けたくないんですけど......」
腰に差した西洋剣を抜きながら申し訳なさそうな顔をする。
だけど私にはわかる。
「もう、そういうのいいから......」
杖の先端を工藤くんに向ける。
「顔、嬉しそうだよ?」
キミは女の子を屈伏させないと気が済まない人でしょ?
「あれ? そうでした?」
工藤くんはニヤリと口角を上げる。
「ねぇハルカ先輩、マジで俺の彼女になりませんか? そしたらこんなバトルなんてしなくても全て丸く収めてみせますよ?」
こんな状況なのにまだ懲りずにそんなこと。
ていうかさ、
「そんな顔する人の彼女になると思ってるの?」
馬鹿にするのもいい加減にしてよ。
それに私にはもう心に決めた人がいるんだから。
「そうですか、残念です。
じゃあ、ハルカ先輩を楽しむのはしばらくお預けってことで」
「......最低だね」
嫌悪の気持ちをいっぱいに込めて睨みつける。
「どうも」
笑みを深めた工藤くんはこちらに左手を突き出す。
「『獣装、ネメアー』」
体から黄色い魔力が溢れ、頭にはライオンの耳が、尾骨辺りからはライオンの尻尾が現れる。
「では、まずは隣の邪魔な先輩から倒しましょうか」
工藤くんが駆け出すのを見てすぐにナオの前に立つ。
「ナオ、私の後ろにっ! 『ファイアウォール!』」
工藤くんの正面に炎の壁を出現させる。
「いけっ! 『フレイムランス!』」
複数の魔法陣を展開。
全力のフレイムランスをファイアウォール目掛けて一斉に放つ。
飛来する何本もの炎の槍。
だけど工藤くんに慌てた様子は一切ない。
「無駄ですよ『流水剣』」
剣身に水を纏わせ、炎の壁を一刀、次々に飛来する炎の槍も全て打ち落とす。
今まで沢山のモンスターを倒してきた魔法が全く通用しない。
でも、だからって諦める訳にはいかない。
「ならっ! 『アースロアー!』」
杖を振り、地面を走る衝撃波を放つ。
まだまだっ!
「『ストーンランス!』」
ゴツゴツした形状の岩の槍を連続で撃ち込む。
もっと!
『ジャッジメント!』」
上空に雷雲を発生させ、雷撃を叩き込む。
全てが全力の魔力を込めた魔法。
なのに工藤くんの表情に焦りはない。
それどころか、
「同じですよ『雷光剣』」
ニヤリと笑みを浮かべ、剣身に電気を纏わせた一振りでアースロアーを相殺。
「『エーテルブレード』」
魔法で作った光の剣を左手に持ち、岩の槍を全て破壊、雷撃すら斬り捨てる。
「っ......ならっ!」
次の魔法を......
「もう終わりです」
「っ!?」
一瞬で距離を詰めた工藤君が目の前に迫る。
早く次を。
ダメだ。
間に合わない。
「ハルカっ!」
後ろからの強い力で突き飛ばされる。
「いっ......ナオっ!?」
振り返ったそこにはナオがいて、剣を振りかぶった工藤くんがいて、
「やめてっ!」
目が合った工藤くんは悪魔のような笑みを浮かべていて、
「『アサルトスラッシュ』」
容赦なく剣を振り下ろ───
その瞬間、
「『水霊刀技─小夜時雨─』」
無数の斬撃が工藤くんに襲いかかる。
「がぁっ!?」
完全に虚を突かれた工藤くんは、斬撃を受けて距離を取る。
そこに入り込んだのは一人の少年。
「......何とか間に合ったかな。2人共大丈夫?」
ナオを庇うように、シンヤくんが工藤くんと対峙する。
お読み頂きありがとうございました。




