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戦う理由

いつもお読み頂きありがとうございます。

 

side 皇遥


「君がハルカちゃん?」


「え?」


 知らない声に名前を呼ばれ、声のした方に顔を向けるとたくさんの男の人が私達を見ていた。


 全員がモデルのような整った容姿の男性で、顔には笑みを浮かべている。

 だけど、


 モミジさんの言ってた通りだ。


 視線の奥の感情が見え見えで嫌悪感しか感じない。


 そんな男の集団の中から2人の男性が前に出てくる。

 小麦肌の男性と眼鏡をかけたインテリ系の男性。

 他の人よりも年上で、この2人がギルドマスターと副ギルドマスターなんだとすぐにわかった。


「はじめまして、俺はギルド【GENESIS】のギルドマスターをしているミナトって言います。よろしくね」


「私は副ギルドマスターのシュウジです。よろしくお願いします」


 ミナトと名乗った男性は人好きのする笑顔浮かべ、シュウジと名乗った男性は礼儀正しく挨拶をしてくる。


「......はじめまして、ハルカです」


 挨拶を返しつつ警戒心を引き上げる。

 いくら愛想良くされてもGENESISの噂は色々耳に入ってきている。

 そんな人達と仲良くなんて出来るわけない。

 それに、


「......なんですか?」


 嫌悪の気持ちが言葉に混じってしまったのは仕方ない。

 さっきからジロジロと本当に失礼な人達だから。

 だけどそんな私の態度も意に介さず、ミナトと名乗った男性は笑顔で話しかけてくる。


「ハルカちゃん本当に可愛いね。タクミ君の言った通りだ」


「タクミくん?」


 覚えのない名前を出され思わず聞き返す。


 タクミくんって誰?


「俺ですよ。ハルカ先輩」


 そんな疑問に答えるように、見覚えのある男子が笑顔で前に出て来る。


「......工藤くん」


 自然と声が低くなる。


「ハルカ先輩、ゲーム内で俺を呼ぶ時はタクミって呼んで下さい」


「............」


 何も懲りてないその態度に内心辟易する。


「そんな怖い顔しないでください。俺だって学校の先輩達がこんな目に遭ってる状況に胸を痛めてるんですから」


 沈痛な面持ちでそう語るけど、私の心には全く響かない。

 それどころかどの口が言ってるんだって思う。


「だからミナトさんに俺から頼んだんですよ。これ以上先輩達に関わるのは止めて下さいって。そしたら条件を出されたんです」


「......条件? それってなに?」


 どうせろくな事じゃないと思うけど。


「タクミ君、ここからは俺が話すよ」


 そう言って工藤くんの隣に来たのは、さっきミナトと名乗ったGENESISのギルドマスター。


「ハルカちゃんってさ、友達のこと大切に思ってるよね?」


「はい。当たり前です」


 そうじゃなきゃGENESISとなんか絶対関わりたくないもん。


「うんうん、友達想いでいいね。じゃあそんなハルカちゃんに朗報です。ハルカちゃんが俺らのギルドに入ってくれたら、友達のギルドには今後一切関わらないって約束します。どうかな?」


 相変わらずの笑みを浮かべたまま、ミナトさんはそう提案してくる。


 そんなの無茶苦茶だよ!


 勝手にやって来て無理な勧誘をしたくせに、やめて欲しければ私にGENESISに入れって、それで入りますなんて言うわけないじゃん。


「チッ......やっぱりね」


 隣で話を聞いていたナオが大きく舌打ちをしてミナトさん達を睨みつける。


「ハルカ、こんな奴らの言うこと聞かなくていいよ。こいつらの目的は最初からあんたなんだから」


「え、わ、私? 私が目的なの!?」


 まさに寝耳に水。

 ナオの確信を持った声に驚きで返す。


 確かに以前GENESISに誘われたことはあるけど、ここまでのことをしてまで私を加入させようとする意味がわからない。


 そんな私の考えがわかったのか、ナオから呆れの混じった声が返ってくる。


「あんたねぇ。自分の顔 鏡で見たことないの? モテるんだからそれくらい自覚しときなよ」


「ご、ごめん」


 怒られてしまった。

 そりゃあ目線を感じる時とかよくあるし、ちょっとは......って思ってたけど、黒月くんの反応とかすごく薄いし、そこまでだなんて思わないよ。


「......まぁそういうことだから、こいつらはあんたの知り合いのうちらを追い詰めて、誘き寄せるエサにしたってわけ。だからあんたを関わらせたくなかったの。どう? これで納得した?」


「う、うん。わかった。ありがとう、ナオ」


 ナオの話を聞いてたら何だか申し訳ない気持ちになってきた。

 だけどそうとわかっても一人だけここから帰ろうなんて1mmも思わない。

 そしてそんな私の性格を知ってるからか、ナオも私に帰れとは言わず会話を続ける。


「......で、まだ聞いてなかったけど、あんたまさか話し合いで解決するつもりでここに来たって訳じゃないよね?」


 だったら追い返すよ と、目で伝えてくるナオに そんなことない と頷く。


「もちろん。戦うつもりで来たよ。ショウくんやシンヤくんと一緒に」


 ハッキリと自分の意思を伝える。

 するとナオはジッと私の顔を見つめた後、一度ため息を吐いて、


「......わかった。なら私もやるかー」


 仕方ないと言わんばかりの口調でそう言ってから、ミナトさん達の方へ顔を向けて、


「そういうことだから、ハルカもうちらと一緒に戦うらしいんで」


 そう宣言するナオに同意するように深く頷いてみせる。

 すると私達のやりとりを黙って見ていたミナトさんが突然笑い始める。


「あははは。タクミ君、全部ハルカちゃん達にバレてんじゃん」


 そう言いながら隣にいる工藤くんの背中をパンパン叩き始める。


「す、すみませんミナトさん......」


 そんなミナトさんに対して身を小さくした工藤くんが謝罪する。

 だけどミナトさんは気にした素振りを見せず笑顔で言葉を続ける。


「いいよいいよ。タクミ君には色んな子回してもらってるから、全然大丈夫」


「あ、ありがとうございます......」


「まぁそれはいいとして......」


 一旦話を区切ったミナトさんは今度はこちらに顔を向け、


「君らは俺らのことバカにし過ぎね」


 表情から笑顔を消した瞳でこちらを見つめてくる。


「っ......」


 ナオの息を飲む音が聞こえた。

 初めて受ける大人の威圧。

 正直怖い。

 すごく怖いけど、負けじと睨み返す。


 しばらくの沈黙。


「......いいねその感じ。ますます欲しくなっちゃったよ」


 そう言ってミナトさんは先程までの笑みを浮かべた顔に戻る。


「わかった。じゃあ、ハルカちゃんのお望み通りバトルをしよっか。ハルカちゃん達が勝ったら、もう君達に関わらないって約束するよ」


 モミジさんに聞いていた通りの話だ。

 だけど一応確認しておかないと。


「......もし私達が負けたら?」


 負けたら強制加入なんて絶対嫌だもん。


「特に何もないよ、今の状態が続くだけかな。

 だけど逃げちゃダメだよ。お友達がどうなってもいいって言うなら話は別だけどね。皇遥ちゃん」


 ミナトさんはニヤリと笑う。


「......私の名前」


 漏れるところなんて一つしかない。

 工藤くんを睨みつける。


「誤解ですよ」


 工藤くんは肩を竦めてみせるけど絶対嘘だ。


「それじゃあそろそろ始めようか」


 ミナトさんが手を叩くと副ギルドマスターのシュウジさんを含む4人が前に出てくる。


「タクミ君、今日はメンバーに入れるからハルカちゃんに君の実力を見せてあげるといいよ」


「ありがとうございます」


 ミナトさんにお礼を言った工藤くんがこちらを向き直り、目が合う。


「ハルカ先輩、お手柔らかにお願いしますね」


 杖を握る手に力が入る。

 絶対に負けたくない。


 そんな私の隣にショウくんとシンヤくんがやって来て口々に声をかけてくる。


「ハルカさん、ごめん。助かるよ」


「ありがとうハルカさん」


「うん、それはいいんだけど......」


 視線は2人が腰に差した刀に行ってしまう。


 2人の刀、黒月くんがあげた武器じゃない。


 そんな私の視線に気づいた2人は苦笑いを浮かべる。


「バトルに負けた時【阿】【吽】が壊れちゃってさ。最初は直してたんだけどお金が無くなっちゃって......」


「やっぱりいい刀だから直すのにもお金がかかるんだよね」


 よく見ると着けてる防具も以前のより安そうなものばかり。

 それだけの数のバトルをして負けてきたんだと思うと、負けたくないって気持ちがより一層強くなった。


「私も頑張るから、絶対勝とうね」


「ああ!」「そうだね!」


 2人が頷いたところでナオが話しかけてくる。


「ハルカ、あいつはこの事を知ってんの?」


 あいつって黒月くんだよね。


「ううん、言ってないよ」


 話せばきっと力になってくれると思うけど、話さなかった。

 これは私のワガママだ。

 いつまでも黒月くんに甘えてばかりじゃ隣に立つことなんて一生できないから。

 黒月くんに頼らなくても解決できるって証明したい。


「そっか、よかった。あいつってさ、いつもはあんなだから普通に話してるけど、本当はすごい奴だから迷惑とか かけられないっていうか......」


「うん、わかるよ」


 私もずっとそんな気持ちだったから。


「それにさすがのあいつでもGENESIS相手じゃどうなるかわからないし、私らのせいで太陽と月の名前にキズをつける訳にはいかないからね」


「そうかな? 黒月くんなら余裕で勝つと思うけど」


 黒月くんが負けるところなんて想像つかない。

 あと一応私も太陽と月のメンバーなんだけど......まぁそれはいっか。


「あーはいはい、黒月なら余裕だろうね。じゃあその黒月に教わってるハルカの実力に期待するわー」


「うん! 任せてよ!」


 ここにいる全員の中で一番マギア歴が浅い私だけど、あの太陽と月のクロに教わってるんだもん。

 弱いはずないよ。


 だよね? 黒月くん。


「話し合いは終わったかな? じゃあバトルを始めようか」


 お互いのメンバーがフィールドに並ぶと、戦闘エリア内に半透明の結界が張られる。

 GENESISが6人のフルメンバーに対して、私達のメンバーは私、ナオ、ショウくん、シンヤくんの4人。


 このメンバーで勝つ方法は、ショウくんとシンヤくんを私とナオがどれだけサポート出来るかにかかっている。

 幸いGENESISのメンバーは、いつも勝ってる2人に私とナオが増えた所で......と油断している様子。


 だったら最初から全力で!



『それではバトルを開始してください』


 試合の開始を告げるブザーが鳴り響き、私にとって初めての対人戦が始まった。

お読み頂きありがとうございました。

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