↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/68

セツキのナシナ空中庭園攻略実況配信①

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い致します。

 

side 白峰セツキ


 いつも通り配信開始時間に余裕を持って到着し、機材チェックと設定をする。

 今日は久しぶりの攻略実況配信。

 今回の配信場所は、最近新しくアップデートされたナシナの空中庭園。


 事前告知をした時の視聴者さんの反応は、いつもと比べられないくらい凄かった。


「待ってた」「やっとか」「楽しみ過ぎる」という期待の声と「マジか」「流れたと思ってた」「本当にやるんだ」という驚きの声。

 そして「大丈夫かな」「心配だよ」「セツきゅん......」という僕の身を気遣う声。


 それだけ視聴者さんが注目してくれている今回の配信。

 必ず期待に応えられるような結果を残したい。


 配信開始時間まであと少し。

 ゲストの2人に目を向けると、いつでも大丈夫だと合図をくれた。


 準備は出来ました。

 さあ、配信を始めましょう。




「みなさんこんばんは。ギルド、太陽と月のセツキです」


 いつも通り視聴者のみなさんに手を振る。



 〈きたきたきたきたきたーーー!〉

 〈きたああああああ!!〉

 〈待ってたぞーーー!!〉

 〈待ってたああああああ!!!〉

 〈セツきゅーーーーーーーん!!〉

 〈うおおおおおお!!〉

 〈セツきゅーーーーーーん!!!〉

 〈セツきゅーーーーーん!!〉

 〈セツきゅーーーーーん!〉

 〈ひゃっはーーーー!!〉

 〈セツきゅーーーーん!〉

 〈待ってたああああ!!〉



 開始と同時に視聴者さんがなだれ込んでくる。

 いつもよりもコメント欄の流れも早い。

 いい滑り出しだ。


「今回は告知の通り、最近アップデートされたナシナの空中庭園を攻略していきたいと思います」



 〈あそこな!〉

 〈すげー難易度上がったんだよな!〉

 〈楽しみ!〉

 〈セツきゅん好き〉

 〈セツきゅん結婚して〉

 〈今日も癒される〉

 〈早く私を貰いに来て!〉

 〈今日も数名平常運転だなww〉

 〈それでそれで?〉

 〈それだけじゃないよな?〉



「はい、そして今回はゲストとしてギルド、コスモキャットのオリさんとメルさんに来てもらいましたー」


 拍手を合図に2人がカメラの前に移動する。


「みなさん、こんばんは。ギルド、コスモキャットのオリです。今日はよろしくお願いします」


 オリさんがカメラに向かって笑顔で手を振る。


 オリさんは濡羽色(ぬればいろ)の肩上ボブに丸眼鏡、右頬にホクロがある女性プレイヤーだ。



 〈オリさーーん!!〉

 〈オリだ!〉

 〈ようこそ!!〉

 〈はじめまして!!〉

 〈こんばんは!〉

 〈オリさんセツきゅんをお願いします〉

 〈セツきゅんを守って〉



「そして、こっちがメルでーす」


 オリさんはいつもより明るい口調でメルさんの両肩に手を置き、メルさんをグイッと前に押し出す。


「............」


 メルさんは左目の下に縦に並ぶ2連のホクロが印象的な、栗色の腰まである長い髪をハーフアップのお団子にしている女性プレイヤーだ。


 そんなメルさんは、さっきからひと言も喋らず黙ったままずっとムスッとしている。



 〈どうした?〉

 〈メル怒ってる?〉

 〈メル喋らない〉

 〈不穏だ〉

 〈何かあったか?〉

 〈メル全然喋らないじゃん〉

 〈おーいメル?〉

 〈早速オリに怒られたか?〉

 〈あれ?〉

 〈んん?〉

 〈ちょっと待てww〉

 〈おいww〉



 視聴者さんもメルさんの状態に気づき始めたみたいだ。



 〈メル状態異常になってるぞww〉

 〈うはw〉

 〈これはww〉

 〈これ沈黙か?〉

 〈おい沈黙になってるぞww〉

 〈そりゃ喋らないわww〉

 〈沈黙なら仕方ないww〉

 〈なぜだww〉

 〈出オチかよww〉



「はい。ちょっとメルがうるさかったので沈黙になってもらいました」



 〈鬼畜ww〉

 〈配信で沈黙とかww〉

 〈酷すぎるww〉

 〈メルの扱いww〉

 〈オリさんさすがです!〉

 〈オリさんその調子です!〉

 〈オリさん期待してます!〉

 〈おいガチ勢ww〉

 〈ガチ勢がww〉

 〈これはメル気の毒だなww〉

 〈さすがオリメルはやることが違うww〉

 〈やってくれるわww〉



「あ、そろそろ解けそうですね」


 オリさんの言葉と同時に、メルさんの状態異常表示が消える。


「ちょっとオリ! これはさすがに酷いと思んだけど」



 〈それなww〉

 〈今回はメルが正しいww〉

 〈お、メルが喋った〉

 〈急に騒がしくなったww〉

 〈元気だなぁww〉

 〈あぁ......〉

 〈オリさんもう一度〉

 〈ガチ勢ww〉

 〈おい!やめたれww〉



「メルがセツキさんに迷惑かけようとしたからでしょ?」


「迷惑なんてかけてないよ! ちょっと交流を深めようとしただけじゃん!」



 〈ん?〉

 〈これは......〉

 〈当然の報いだったww〉

 〈オリが正しかったww〉

 〈適切な処置ww〉

 〈結局メルのやらかしじゃねーかww〉

 〈やはりお前かww〉



 2人とも華があるから、コメント欄もすごく盛り上がっている。

 やっぱりオリさんとメルさんに出てもらったのは正解だった。



 〈これセツキのチャンネルだよな?〉

 〈セツキ息してるか?〉

 〈セツキが空気になってるww〉

 〈おいセツキに喋らせてやれよww〉

 〈セツきゅん喋って〉

 〈セツきゅん......〉

 〈セツキが喋らないとガチ勢いなくなるぞww〉



「あ、すみません。他のギルドの方が出てくれることがないので緊張しちゃって」



 〈気持ちはわかる〉

 〈コスモキャットって超有名ギルドだからな〉

 〈お前も大概大物だからな〉

 〈それww〉

 〈緊張してるセツきゅん可愛い〉

 〈私がいるから緊張しなくて大丈夫だよ〉

 〈あと出てくれないじゃなくて、出たいけど出れないな〉

 〈それなww〉

 〈それにしてもこの絵面やばいな〉

 〈この3人で攻略に行くとか胸アツ〉

 〈マジで楽しみだ〉



「知らない人はいないと思いますが、一応僕から簡単にお2人の紹介をさせて下さい」



 〈はい!〉

 〈はい!〉

 〈お願いします〉

 〈よろしくお願いします!〉

 〈説明いらんな〉

 〈いらんだろ〉

 〈セツきゅんお願い〉

 〈セツきゅんの説明を黙って聞け〉



「コスモキャットは日本ランキング2位の実力派ギルドでオリさんはそこのギルドマスター、メルさんは副ギルドマスターをしています。

 コスモキャットは少し前にマギアの試練下層を攻略していて、視聴者のみなさんの中には当時流れた運営からのアナウンスを聞いていた方もいるかと思います」



 〈聞いてた〉

 〈聞いたぞ〉

 〈突然流れてビビったな〉

 〈あれは驚いた〉

 〈日本で下層攻略したのってあとどこ?〉

 〈←太陽と月だけ〉

 〈それはすごいな〉

 〈世界でもほんのひと握りだけのはず〉

 〈あそこは魔境だからな〉

 〈行ったやつしかあそこのヤバさはわからんだろ〉



「本当に運がよかったんですよ。たまたま素材集めに来ていた人が先に敵を倒してくれていたおかげで、途中の消耗をかなり抑えられたんです」


 オリさんが言ってるのはたぶんクロ先輩のことだ。

 コスモキャットと下層で会ったってクロ先輩も言ってたし、下層にソロで行くなんてあの人以外考えられない。



 〈ん?〉

 〈え?〉

 〈人? ギルドじゃなくて?〉

 〈ソロってこと?〉

 〈いやいや、下層ソロって無理だろ〉

 〈無理なの?〉

 〈←下層はB+以上しか出てこない〉

 〈B+ならソロでも行けんじゃね?〉

 〈下層のB+は必ず複数で出てくるぞ〉



「亀の素材集めしてるって言って全部倒してたよね?大量に集めて何作るんだろうねっ!」


「それは私も気になるけど、きっと教えてくれないでしょ」


 オリさんとメルさんが視聴者さんに気づかれないようにこちらに視線を向けてきたから、ニコリと笑い返す。


【熟練度ヨクアガール】はハルカ先輩の話だと凄い効き目だそうだ。

 量産出来るものではないから誰にも話すなとクロ先輩からは口止めされているけど、本当の理由はハルカ先輩に【万年亀の血】を素材に使っているのを知られたくないからだと思っている。



 〈は? 亀!?〉

 〈下層の亀ってグランド・タートルだよな〉

 〈亀って深域じゃん!〉

 〈深域までソロで行ったってこと?〉

 〈亀全滅させるって〉

 〈誰だ?〉

 〈誰?〉

 〈出来るやつなんて相当絞られるぞ〉

 〈気になる〉

 〈教えて〉

 〈教えてください〉



「すみません。あまり目立ちたくない方のようなので名前は教えられません。ただ、みなさんも聞いたことある名前だと思いますよ」



 〈目立ちたくない?〉

 〈それだけじゃわからない〉

 〈知ってる名前、ワタルしか浮かばない〉

 〈ワタルだな〉

 〈ワタルなら納得〉

 〈海外......とか?〉

 〈海外プレイヤー説〉

 〈ラグナか〉

 〈ラグナじゃね?〉

 〈ラグナが日本に来てたとか?〉

 〈海外プレイヤーのお忍びなら目立ちたくないのも納得〉

 〈ラグナならそれくらいやるだろうな〉



 ラグナさんは世界のトップクラスプレイヤーの1人でマギア最強のプレイヤーとして名前を挙げる人も数多い。

 そんな人と同列の扱いを受けるワタル先輩。

 そしてそんなワタル先輩に「1対1で勝てる人はいないんじゃないかな」と言わせてしまうクロ先輩。

 僕は本当にすごい人達と一緒にいるんだと誇らしい気持ちになる。


「オリさんはああ言ってましたが、運だけで下層をクリア出来ないのはみなさんも知ってると思います。今日はそんな強力な助っ人のお2人と一緒にナシナの空中庭園を攻略していきたいと思います」



 〈楽しみ!〉

 〈期待!〉

 〈楽しみ!〉

 〈セツきゅん頑張れ〉

 〈セツきゅん無理しないでね〉

 〈セツきゅんなら余裕〉



「まずはナシナの空中庭園の説明からです。プレイヤーのみなさんはご存知だと思いますが、ナシナの空中庭園の名前にもなっているナシナとは、創造神マギアと共にこの世界を創ったと言われている神、創世神ナシナのことです」



 〈だな!〉

 〈うむ〉

 〈マギア・ナシナ・オンラインだもんな〉

 〈確か最初にそんな話聞かされたな〉

 〈そんな設定だった気が〉

 〈セツきゅんと世界を創りたい〉

 〈セツきゅんと私みたいだね〉



「創造神マギアの名を冠した場所が地下、創世神ナシナの名を冠した場所が空にあることから対立神と言われていたり、また同一神とも言われていますが、真相はわかっていません」



 〈その辺の設定、公式から何も言及されてないんだよな〉

 〈炎槌の最深層を目指すこと以外マジで不明だよな〉

 〈それがまた考察意欲を掻き立てられるんだけどな〉

 〈運営何も考えてない説もありそう〉

 〈一応ヒント的なものは散りばめられているから、何かしらの設定はあるはず〉



「そして今回攻略するナシナの空中庭園ですが、実際に来たことがあるという人はあまりいないんじゃないかと思います」



 〈確かに〉

 〈行ったことない〉

 〈ないな〉

 〈ないですね〉

 〈行く意味ないしな〉

 〈攻略サイトにも時間の無駄って書かれてたな〉



「そんな空中庭園の構成ですが階層は1層のみで、分かれ道も無く隠し部屋や宝箱もありません。敵は何体か出てきますがランクはC+です。

 そしてここに来る人が少ない一番の理由が空中庭園に出現する敵は、ボスも含めアイテムも素材も何もドロップしないからではないかと思います」



 〈だな〉

 〈それな〉

 〈それしかないよな〉

 〈それ〉

 〈ほんとそれ〉

 〈そうなんだよな〉



「ただナシナ空中庭園のボスは特殊で、このゲームの歴史背景に迫れるという理由で一部のプレイヤーからは人気のあるエリアとなっています」



 〈ほう〉

 〈それはちょっと気になる〉

 〈考察好きには堪らないエリア〉

 〈ボスが人型なんだよな〉

 〈確かボスが条件で変わんだよな〉



「では攻略に向かう前にボスの説明をします。ボスはレムナントという影のように真っ黒な人型のモンスターです。そして先程(さきほど)のコメントでも書かれていましたが、条件でボスの姿や強さが変化します」



 〈だな〉

 〈シャドーピープル〉

 〈ランダムだと思ってた〉

 〈ランダムじゃなかったのか〉

 〈人数だっけか?〉

 〈条件って人数だったよな〉



「現在確認されているレムナントは5体、それぞれ名前がついています。

 エリアに入ったプレイヤーが4人以上の場合、出現するレムナントは必ずブソン、ソフィーの2体です。

 今回は戦いませんがブソンは魔法剣士型、ソフィーは神官型のレムナントになります」



 〈シルエットから過去の勇者と聖女なんじゃないかって言われてるやつら〉

 〈この2体はあんまり強くないんだよな〉

 〈ブソンがB-でソフィーがC-だったか〉

 〈物知りのセツきゅん好き〉

 〈セツきゅん可愛い〉

 〈セツきゅんもっと色々教えて〉



「今回はプレイヤー人数3人以下で入った場合に出現するレムナントと戦います。出現するレムナントはテンジョウ、ピート、アリーの3体のうちランダムで1体。

 ピートは格闘型、アリーは魔法使い型、そしてテンジョウは刀を持っていますが不明とされています」



 〈テンジョウは無理ゲー〉

 〈テンジョウって世界を含めても誰も倒したことないんだよな〉

 〈今確認されてる全ての敵で最強はテンジョウ〉

 〈テンジョウのランクはSSって言われてるな〉

 〈他にSSランクの敵っていたっけ?〉

 〈←いない。炎槌の深層ボスがSS-、ラスボスがSS+なんじゃないかとは言われてる〉

 〈サンクス〉

 〈テンジョウ出てこないかな〉



「そして最近アップデートされたのがこの3体で更新内容は獣装の追加となってます。テンジョウのランクは不明ですが、ピートとアリーの元々のランクはB+。それに獣装が追加されてかなり難易度が跳ね上がったと聞いています」



 〈他のプレイヤーの動画見たことあるけどマジで手も足も出てなかったな〉

 〈あれはハイランカーじゃないと倒せない〉

 〈敵が獣装使うとか意味わからん〉

 〈ピートとアリーはまあ分かるがテンジョウをさらに強くしてどうするんだよ〉

 〈セツきゅん大丈夫?〉

 〈セツきゅん負けないで〉

 〈セツきゅんなら余裕〉

 〈セツきゅん最強〉

 〈さすがのセツきゅんも今回はやばいかもな〉



「なのでオリさんとメルさん。2人の強力な助っ人と共にナシナの空中庭園を攻略していきたいと思います」


「はい、頑張りましょう」


「はーい! セツきゅんの為に一肌脱いじゃうよ!」



 〈これは胸アツ〉

 〈この3人ならいけるでしょ〉

 〈めちゃくちゃ楽しみ〉

 〈盛り上がってきた〉

 〈すげー戦いになりそう〉

 〈セツきゅんオリさん頑張って〉

 〈オリさんセツきゅんをよろしくお願いします〉

 〈セツきゅんも無理しないでね〉



「ちょっと! 私もいるんだけどっ! 私の応援もしてよ!」


 メルさんがコメントを読んで視聴者さんに文句を言っている。

 僕はこんな風に視聴者さんに絡めないから正直羨ましい。



 〈メルさんは死んでもいいのでセツきゅんを守ってください〉

 〈メルさんセツきゅんから離れてください〉

 〈メルさんはセツきゅんに近づかないで〉

 〈なんかメルが気の毒に見えてきた〉

 〈ガチ勢はメルを敵視し過ぎ〉

 〈メルってこんなんでもマジで強いからな〉

 〈今回はメルがいないとセツキもヤバいぞ〉

 〈ガチ勢はメルが来たことに感謝するべきだな〉



「ふふん。わかってる人はわかってるじゃん!」


 メルさんは自分を肯定してくれるコメントを見て嬉しそうだ。

 そんなメルさんの姿にオリさんは呆れたように首を振っている。


「メル、油断したらダメだからね」


「大丈夫大丈夫! わかってるって」


「本当かなぁ......」


 楽観的に見えるメルさんに不安げな目を向けるオリさん。

 何となく相性の悪そうにも見える2人だけど、とても仲が良いことで有名だ。


 そして2人共実力はトップクラス。


 この2人がいれば正直負ける気はしないけど、油断するつもりはない。


「それでは、ナシアの空中庭園の攻略を始めていきたいと思います」


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。