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セツキのナシナ空中庭園攻略実況配信②

いつもお読み頂きありがとうございます。

本文最後にイラストを載せてあります。

 

side 白峰セツキ


 ナシナの空中庭園は空に浮かぶ巨大な円形の庭園で、転送場所から続く一本道の空中回廊を進むことで辿り着くことができる。


「トゥム、出てきて」


 メルさんが右手の中指に()めた指輪に話しかけると、地面に魔法陣が浮かび魔導人形が姿を現す。


 見た目はプレイヤーやNPCそのもの。

 トゥムと呼ばれた魔導人形は、オリさんやメルさんが着ている物と同じ、宇宙を連想させるような星を散りばめた模様の深い花紺青(はなこんじょう)色の猫耳フード付きのローブを着た、紫髪の線の細い男性の姿をしている。

 メルさんが使う魔導人形の中で一番有名なのがこのトゥムという名前の人形だ。



 〈トゥムだ〉

 〈トゥムktkr!!!〉

 〈やっぱトゥムだよな〜〉

 〈メルと言えばトゥム〉

 〈あの見た目で魔導人形ではトップクラスの強さなんだよな〉

 〈どんな素材使ってんだろ〉



 魔導人形は使われている素材や魔石で強さが全然変わってくる。

 メルさんのトゥムはレア度の高い素材を大量に使っている為、魔導人形が自動で戦うオートモードでもランクB+のモンスターを倒せるだけの強さを持っている。


「『サモン・ライラ』」


 オリさんが巨大な梟、グレートアウルのライラを召喚する。

 召喚はモンスターの名前か契約時に付けた名前のどちらかを呼ぶことで、その契約に従いモンスターが召喚される仕様だ。



 〈ライラだ〉

 〈ライちゃん〜!〉

 〈安定のライラ〉

 〈相変わらずデカイ〉

 〈普通のグレートアウルってもっと小さいよな〉

 〈あれはもうグレートアウルじゃないww〉

 〈ライラという新しいモンスター〉



 空中回廊の途中にはいくつもの浮き島があり、そこでモンスターと戦闘を行って次の浮き島へと移動する。

 最初の浮き島に着いた僕の目の前では、ポイズンアマリリスという植物型のモンスターとトゥムが、ビーニックという鳥型のモンスターとライラがそれぞれ戦っている。

 そんな光景を見ながら思うことは。


「僕の出番はボスまでなさそうですね」



 〈だな〉

 〈うむ〉

 〈敵のランクC+だもんな〉

 〈トゥムだけでも十分なくらい〉

 〈休んどけばいいよ〉

 〈温存しとけ〉

 〈セツきゅんの戦い見たい〉

 〈セツきゅん見れるだけで満足〉

 〈セツきゅん......好き〉



 そんな僕の呟きが聞こえたのか、オリさんとメルさんが隣にやってくる。


「それは私達も同じですよ」


「そうそう。セツきゅんは何もしないでドーンと構えてればいいんだよ♪」


「あはは、ありがとうございます」


 トゥムもライラも全く苦戦する様子がない。

 体を動かして戦う僕としては、ただ立ってるだけというのはどうにも性に合わないけど、オリさんやメルさんの戦いを見てもらった方が動画的においしいので、お言葉に甘えさせてもらおう。


 トゥムは細い体型に似合わず、身の丈サイズの両刃の斧を軽々と振ってポイズンアマリリスを叩き斬り、ライラは風の衝撃波を放つ中級緑魔法『ソニックブーム』や風の槍を放つ『ストームランス』でビーニックを撃ち落としていく。

 相手のランクがC+とはいえ、複数相手に召喚モンスターや魔導人形だけでここまで一方的な戦いが出来てしまうのはさすがとしか言いようがない。



 〈すごwww〉

 〈つよ!〉

 〈ギルドバトルでしか戦ってるとこ見た事なかったけどすげー〉

 〈一方的だな〉

 〈強すぎじゃね?ww〉

 〈俺勝てる気しないわ〉

 〈セツキもすごいけどこっちも大概だな〉



「ふふ〜ん、でしょでしょ? 私のトゥムはすごいんだから!」


 メルさんがコメントに嬉しそうに反応している。

 僕もメルさんみたいに視聴者さんと話が出来たらいいんだけど、ああいう接し方は僕にはハードルが高過ぎる。



 〈そういえばトゥムってセツキと全然似てないよな〉

 〈メルってセツキの人形作らないの?〉

 〈セツキの魔導人形持ってないの?〉

 〈セツキ人形出してみて〉

 〈セツキ人形持ってそうではある〉

 〈すごい精巧なの作ってそうww〉



 何だか反応しづらいコメントが流れている。

 隣にいるオリさんはメルさんにまさか作ってないよね? と言いたげな目をジーっと向けている。


「そりゃあね、作りたいのは山々だけどさぁ。“ナマモノ“には手を出しちゃダメでしょ〜」


 わかってないなぁと言いたげにメルさんは肩を(すく)める。


 ナマモノ?

 流れ的に僕のことを言ってるんだろうけど。



 〈ん?〉

 〈ナマモノ?〉

 〈ナマモノ??〉

 〈おいやめろ〉

 〈ナマモノってなに?〉

 〈どういう意味?〉

 〈意外だな〉

 〈作ってないんだ〉

 〈作ってると思ってた〉

 〈メルさんを誤解してました〉

 〈メルさん見直しました〉

 〈メルさん常識人だったんですね〉



「こらっ!」


「イタッ! ちょ、オリ! なんで叩くのっ!?」


 オリさんがメルさんの頭にチョップを入れる。


「メルが変なこと言うからでしょ! この配信をどれだけの人が見てると思ってるの!」



 〈この反応、オリ知ってるな〉

 〈ちょオリも知ってんのかよww〉

 〈あ、オリも知ってるんだ〉

 〈オリが知ってるのちょっと意外〉

 〈なに?〉

 〈どういうこと?〉

 〈あっ......(察し)〉

 〈何となくわかった〉



「メルと一緒にいたら嫌でも覚えちゃうんです。ほら行くよ」


「わかったってぇ!だから引っ張らないでよぉ〜」


 オリさんがメルさんを引っ張って戦闘の終わった浮き島を抜けていく。

 そんな2人にさっきから気になっていたことを尋ねてみる。


「あの、ナマモノってどういう意味ですか?」


 視聴者さんの中にも知ってる人がいたし、今後の知識として僕も覚えておこうと思ったんだけど。


「うーん、セツきゅんは知らなくていいかなっ!」


「うんうん。大した意味じゃないのでセツキさんは知らなくて大丈夫ですよ」



 〈セツキは知らなくていい〉

 〈お前には必要のない知識だ〉

 〈お前は綺麗なままでいてくれ〉

 〈Need not to know〉

 〈セツきゅんは知らなくていいんだよー〉

 〈メルさんが変なこと言うから〉

 〈メルさんのせいです〉



「......わかりました。お2人がそう言うなら」


 視聴者さんも知らない方がいいって言ってるし、残念だけど諦めよう。


 そして何回か浮き島での戦闘を繰り返し、レムナントのいるナシナの空中庭園、その中央部にある扉の前に辿り着く。



「いよいよこの先がこの空中庭園のボス、レムナントのいる場所になります。そしてこの扉を開けて中に入った時点で戦闘が始まります」


 目の前にある真っ白な両開き扉をカメラに映しながら視聴者さんに説明する。


 〈いよいよだ〜〉

 〈今回は早かった〉

 〈もうボスか〉

 〈思ったより早く着いたね〉

 〈マジでアイテムドロップしなかったな〉

 〈セツきゅん頑張って〉

 〈セツきゅん無理しないで〉



「戦う前にもう一度レムナントの説明をします。出現するレムナントはテンジョウ、ピート、アリーのいずれかの1体で、どのレムナントが出てきても厳しい戦いが予想されます」


 と言ってみるけど、テンジョウが出て来てしまったらこちらに勝ち目は全くないと思っている。

 だからテンジョウだけは出てきて欲しくないというのが正直な本音だ。



 〈テンジョウ来い!〉

 〈テンジョウと戦って欲しい!〉

 〈テンジョウに勝ってもらいたい〉

 〈アリーが1番楽そう〉

 〈魔法型のアリーが1番やりやすそう〉

 〈この中ではアリーが1番弱いって言われてるね〉

 〈ピートとの格闘戦見たい〉

 〈ピート来い!〉

 〈ピートと戦って欲しい〉



「なので今回は出し惜しみ無しの最初から全力で行きたいと思います」


 事前に動画で確認したレムナントの使う獣装。

 僕の予想が間違ってないなら、あれは全力で戦わないと勝てない相手だ。



 〈ってことは獣装つかうのか〉

 〈楽しみ〉

 〈なんか緊張してきた〉

 〈セツキが全力を出す相手〉

 〈そんなに強いのか〉

 〈セツきゅんなら余裕〉

 〈セツきゅん最強〉

 〈セツきゅんしか勝たん!!〉



「それでは行きます。オリさん、メルさん、よろしくお願いします」


「はい、お願いします」


「おっけー! 任せてよっ♪」


 2人が頷いた事を確認して両開きの扉を開ける。

 扉の向こうは脇を飾るように花々が咲き誇っていたここに来るまでの道のりとは違い、一面緑一色の芝生のフィールドだ。

 そしてその中央では僕達の侵入を合図に真っ黒い霧が発生し、それが杖を持った背の低いツインテールの女の子の姿を形成する。



 〈アリーだ!!〉

 〈アリーか〉

 〈アリー〉

 〈アリーだ〉

 〈アリーかよwww〉

 〈アリーかぁ〉

 〈一番弱いやつw〉

 〈運がいいのか悪いのか〉



 現れたのが魔法型のレムナント、アリーだと知って落胆のコメントが流れる。

 だけど手を抜くつもりは一切ない。


「『獣装、フェンリル』」


 視界が真っ白な魔力の竜巻に覆われ、外見が変化すると共に全能力値が大幅に上昇する。



 〈フェンリル!〉

 〈セツキ本気だな〉

 〈きゃあああああああああ!!〉

 〈きゃあああああああ!!〉

 〈きゃああああああああああ!〉

 〈きゃあああああああ!〉

 〈セツきゅーーーん!!〉

 〈セツきゅん!〉

 〈可愛い!!〉

 〈セツきゅーーん!〉

 〈好き好き好き好き好き好き!〉

 〈セツきゅーーーん!〉



「『疾風迅雷』『剛気解放』『青闘衣』」


 走り出すと同時にバフをかけ、一気にアリーとの距離を詰める。

 アリーが獣装を使う前にダメージをなるべく与えておきたい。

 視聴者のみなさんはアリーだと落胆していたけど、それは大きな間違いだ。

 だってアリーの使う獣装は......


「『獣装──』」


 そんな僕の考えを読んでいたかのように、合成音で作られたような少女の声が耳に届くと同時にアリーの体から濃密な紅紫色(こうししょく)の魔力が溢れ出し体を包み込んでいく。


「『氷迅』」


 素早い氷爪を纏った突きをアリー目掛けて繰り出すも全く手応えを感じない。

 そして視界の端に映る濃密な紅紫色の魔力へと目を向け、自分の予想が間違っていなかったことを確信する。


 アリーの頭には猫耳が現れ、尾骨辺りからは2本の尻尾が伸びている。

 黒塗りの姿じゃなければその目はアメジストのように光り輝いていたに違いない。


 間違いない。

 あの獣装はクロ先輩の......



 〈は?〉

 〈は?〉

 〈え?〉

 〈何が起こった?〉

 〈瞬間移動?〉

 〈全然見えなかった〉

 〈避けられた?〉

 〈セツきゅん!〉

 〈セツきゅん頑張れ!〉

 〈猫か?〉

 〈猫の獣装?〉

 〈猫又?〉

 〈知らない獣装だな〉

 〈強いのか?〉


 クロ先輩は獣装を滅多に使わないから視聴者さんが知らないのも当然だ。

 一見すると猫の獣装。

 あまり強そうには見えない。

 だけど対峙したオリさんとメルさんにはその脅威が十分伝わったようだ。


「......ねえオリ」


「わかってる。メル、私達も全力でいくよ」


「了解! いくよっ! 『獣装、九尾狐!』」


 メルさんの体から黄色い魔力が溢れ出し、髪を真っ白に染め上げると同時に頭には白い狐耳、尾骨辺りからは白い9本の尻尾が現れる。


「『獣装、八咫烏』」


 オリさんの体から黒色の魔力が溢れ、背中に一対の黒い烏の翼が現れる。



 〈獣装!〉

 〈獣装来た!〉

 〈獣装!!!〉

 〈八咫烏と九尾狐とかかっけーな〉

 〈日本人に馴染みのある名前〉

 〈オリメルも本気だな〉

 〈2人の獣装姿ギルドバトル以外で初めて見るかも…〉

 〈それだけの相手ってことだろ〉

 〈あの猫の獣装マジでなんだよ〉

 〈誰だよアリー弱いとか言ったやつ〉



「『サモン・シバ』」


 オリさんの言葉に呼応して魔法陣から白い毛並みの狼男、ライカンスロープのシバが召喚される。


「『コネクト・ライラ』『コネクト・シバ』」


 召喚士のスキル、コネクトによりオリさんの能力値がライラとシバに移動して2体が大幅に強化される。


「ライちゃん、シバ、私の事は気にしないでセツキさんと一緒にアリーと戦って」


 オリさんの指示によりライラとシバがアリーと対峙する僕の元までやってくる。


 〈シバ!?〉

 〈シバを出す相手ってことか〉

 〈珍しいな〉

 〈シバって強いの?〉

 〈←強い。オリのエース級〉

 〈コストがデカ過ぎて滅多に使わないけどな〉

 〈そこに更にコネクト使うって相当だぞ〉



「ムム、出てきて」


 メルさんが右手人差し指に嵌めた指輪に話しかけると魔法陣から、フレイル型のモーニングスターを持った紺色の長い髪の女性型魔導人形が現れる。


「『リンク・トゥム』『リンク・ムム』『モード・オペレーション』」


 メルさんの目が青白く光り、トゥムとムムの目も同じ様に光り輝く。



 〈2体同時操作か〉

 〈エグイな〉

 〈メルも本気だ〉

 〈メル最高何体まで操作出来る?〉

 〈←獣装つかって3体〉

 〈3体いけるのは世界でメルだけ〉

 〈今回2体なんだな〉

 〈3体だと100%のパフォーマンスは出来ないのかもな〉

 〈つーか2体でも普通に異常だからな〉

 〈俺は1体でも無理だ〉



「『フレイムランス』」


 以前ウィザードゴーレムが使ってきたモノの比ではない、高火力の炎の槍がアリーからいくつも放たれる。


「僕が止めます。『喰らい尽くせ、グレイプニル』」


 両手枷に付いた鎖が意思を持ったように動き、フレイムランスを迎撃する。



 〈出たグレイプニル!!〉

 〈魔法使い泣かせ〉

 〈セツきゅんかっこいい♡〉

 〈セツきゅんすごい〉

 〈その鎖で私を縛って〉

 〈結婚して!!〉

 〈好き♡〉

 〈好き〉

 〈可愛い〉



 その間にシバが強靭な爪で、トゥムが両刃の斧で、ムムがモーニングスターで攻撃を仕掛けるけど、アリーはその攻撃を全て避け続ける。


「ああもうっ! 全然当たんないじゃんっ! オリっ!」


「わかってる。『ブラックカーテン』シバ、テラーロアー」


 オリさんがデバフの成功率と効果を上げる上級範囲魔法、ブラックカーテンをフィールド全体に展開させた後、シバの咆哮でアリーを恐慌状態にする。



 〈ブラックカーテン〉

 〈ブラックカーテンだ〉

 〈すげえ〉

 〈規模がおかしい〉

 〈どんだけ魔力使うんだよ〉

 〈クソデカ声〉

 〈うるせえ〉

 〈テラーロアーだな〉

 〈テラーロアーの効果は?〉

 〈←攻撃低下と機動力低下、デバフが入りやすくなる。ただし成功率は低い〉

 〈成功率の低さをブラックカーテンで補った感じか〉

 〈そう考えるとブラックカーテンってすげーな〉

 〈取得難易度高いし、魔力消費量もすごいけどな〉



「『スロウ』......よし、かかった」


 続けざまに放ったスロウがアリーの素早さを低下させる。


「ありがとうっ! これで......」


「『テンペスト』」


「なっ!? もうっ!」


 攻めに転じた3体から身を守るようにアリーが嵐を起こす上級緑魔法、テンペストを周囲に発生させる。


「『ストームランス』」


「『グレイプニル』」


 暴風の中から次々と飛来する風の槍を意思を持った鎖が迎え撃ち吸収していく。

 だけど。



 〈さっきより鎖短くね?〉

 〈鎖短くなってる?〉

 〈鎖短いな〉

 〈無限に消せる訳じゃないんだな〉

 〈鎖消えたらどうなるんだ?〉

 〈セツきゅん......〉

 〈セツきゅん頑張れ〉

 〈セツきゅん負けないで〉



「ライちゃん! テンペストを相殺(そうさい)して!」


 オリさんの指示でライラもテンペストを使い、アリーのテンペストを打ち消す。


「『アイスフィールド』」


「『アースシールド』」


 その隙にアリーの足元を凍結させ身動きを封じると、アリーは地面を隆起させ土壁で身を守る。


「シバ!」 「そんなのっ!『グラウンドブレイカー!』」


 シバの爪とムムのモーニングスターがアースシールドを砕き、トゥムのグラウンドブレイカーがアリーに直撃する。



 〈入った!〉

 〈入ったー!!〉

 〈一撃入れた!〉

 〈やっと一撃!〉

 〈このメンツでやっと一撃って〉

 〈あのスピードが厄介〉

 〈デバフ必須か〉

 〈デバフ無しだと倒せないな〉

 〈強すぎだろ〉



「もう1発っ!」


「『プロミネンス』」


「っ!? 」


 追撃を加えようとしたトゥ厶だけど、すぐに体勢を立て直したアリーの上級赤魔法、プロミネンスに阻まれる。



 〈プロミネンス!?〉

 〈プロミネンスだ〉

 〈風の次は火の上級かよ〉

 〈なんでもありだな〉

 〈アリー全属性の上級使えるのか〉



 うねる超高熱の火炎は、アイスフィールドを易々と溶かすとそのままこちらへと飛来する。


「『アイスシールド』」「シバ! アイスシールド」「『アースシールド』」


 プロミネンスが3枚の壁に激突し、氷壁2枚と土壁の半分を融解させたところで消失する。


「『シャドウバインド』......今だよ!」


「おっけー!『ランペイジスラッシュ!』」


 オリさんがアリーを捕縛、トゥムが強烈な連撃を繰り出す間際。


「『メテオレイン』」


 アリーは魔法を行使させるとそのまま荒れ狂う斧の連撃に飲み込まれ黒い霧となって霧散する。



 〈やったか?〉

 〈やったか?!〉

 〈やったか??!!!!〉

 〈倒したあああああああ!!!!!!〉

 〈おおおおおおお!!!!!〉

 〈おおおおおおおおお!〉

 〈倒したああああああ!!!!!〉

 〈倒したのか〉

 〈まだだぞ〉

 〈まだだ〉

 〈メテオレインがくるぞ〉

 〈ワタルが使うやつだ〉

 〈耐えろおおおおおお!〉



 直後、空から無数の隕石が飛来する。


「ああもうっ! どうするのこれ?」


「防ぐしかないでしょ。ここまで来て死なないでよ?」


「わかってるよっ!」


 オリさんとメルさんが迎撃の体勢に入る。


「オリさん、メルさん、僕が威力を相殺させるので隕石の破壊をお願いします」


「え、セツきゅんが?」


 メルさんが僕を見て驚いている。

 確かに格闘系の僕に打てる手じゃ全ての隕石の相殺なんて不可能だ。

 でもこれから使うのはフェンリルの力。

 魔力が少ない僕でも大丈夫。


「わかりました。セツキさん、お願いします。ほら、メルも」


「う、うん。セツきゅんよろしく!」


「はい」


 2人の前に立って両手を空に(かか)げる。


「『ヘイルストーム』」


 僕を中心にフィールド全体を上空まで覆う激しい雹の嵐が吹き荒れ、周囲の温度を瞬く間に氷点下まで引き下げる。



 〈なんだこれ?〉

 〈真っ白でなにも見えん〉

 〈氷の嵐?〉

 〈ブリザードか〉

 〈魔法?〉

 〈格闘系がこんな魔法使えるのか!?〉

 〈セツきゅん!〉

 〈すごいよセツきゅん!〉

 〈好き!〉

 〈超好き!!!〉



 飛来する隕石は暴風圏内に入ると、その全てが落下速度を低下させ白く染まっていく。


「ライちゃん、シバ、隕石を破壊して」


「いくよっ!」


 ライラが魔法で、シバが打撃で、トゥムとムムが各々の武器で次々と隕石を破壊していく。



 〈何も見えない〉

 〈何してるんだ?〉

 〈気になる〉

 〈なんの音?〉

 〈岩が砕ける音か?〉

 〈隕石を砕いてるのか?〉

 〈音がしてる間は誰かは生きてるな〉

 〈セツきゅんどこ?〉

 〈セツきゅーーーん!〉

 〈セツきゅん頑張れ!!!!!〉



「セツきゅん終わったよ!」


「セツキさん、終わりました。」


 数分と経たず2人が僕の近くまでやってくる。

 仕事が早い。

 さすがです。


「わかりました」


 両手を下ろしヘイルストームの行使を止める。

 嵐が止み視界が晴れると隕石の破片がフィールドのあちこちに散乱していて、その姿はさながら岩石地帯の様だ。



 〈なんだこれ?〉

 〈隕石の破片だらけじゃん〉

 〈やっぱりあれは隕石を砕く音だったんだな〉

 〈これで終わりか?〉

 〈終わったか?〉

 〈全員生きてるな〉

 〈みんないるぞ〉



「......終わりましたね」


 新手がいないことを確認して獣装を解除する。


 〈勝ったああああああ!〉

 〈うおおおおおおおお!!〉

 〈すげえええええ!!〉

 〈アプデ後初勝利じゃね?〉

 〈おめでとう!!!!!!!〉

 〈おめでとう!!!〉

 〈おめでとう!!〉

 〈セツきゅんやったね!〉

 〈セツきゅんすごい!〉

 〈セツきゅんおめでとう!!!!〉



「これでナシナの空中庭園はクリアになります。オリさん、メルさん、お疲れ様でした」


 今回は僕一人じゃ絶対勝てない戦いだった。

 動画に出てくれたオリさんとメルさんには本当に感謝だ。


「セツキさん、お疲れ様でした。メルもお疲れ様」


「セツきゅんお疲れ様! オリもおつかれっ!」



 〈お疲れ様!〉

 〈お疲れ様!!〉

 〈おつ!!!〉

 〈おつ!!〉

 〈おつ!!!!〉

 〈みんなお疲れ様!〉

 〈みんなおつ!〉

 〈セツきゅんお疲れ様!〉

 〈セツきゅんお疲れ様!〉

 〈セツきゅんオリさんお疲れ様!あとメルさんも〉

 〈みんなおつかれー〉



「今回戦ったアリーですが、獣装の追加によりかなり難易度が上がっていました。これはアリーに限らず他の2体にも言えることだと思いますので、挑む際は万全の準備をおすすめします」



 〈おすすめされてもな〉

 〈あれを見て挑むやついるのか?〉

 〈万全の準備しても勝てる気しない〉

 〈デバフは必須ってことはわかった〉

 〈とても参考になりました〉

 〈ピートとテンジョウも見てみたいな〉



「今回はアイテムのドロップなどがないので、配信はこれで終わりにしたいと思います。

 この動画がよかったと思って頂けたら高評価をお願いします。

 チャンネル登録がまだの方は登録して頂けると嬉しいです。

 オリさん、メルさん、今日は本当にありがとうございました。

 それでは次回の配信もよろしくお願いします」


「ありがとうございました」


「ありがとねっ! ばいばーい!」


 カメラに向かって3人で手を振る。



 〈お疲れ様でした!〉

 〈お疲れ様でした〉

 〈888888888〉

 〈乙!〉

 〈88888888〉

 〈おつでした〉

 〈おつ〉

 〈おつ!〉

 〈おっつー〉

 〈セツきゅんバイバイ〉

 〈セツきゅんまたね〉

 〈セツきゅんバイバイ〉



 一通りコメントが流れ切った(あと)配信を停止させる。


「......はい! これで終わりになります。オリさん、メルさん今日は本当にありがとうございました」


 ぺこりと頭を下げ、改めて2人に感謝の気持ちを伝える。

 今回の動画が満足のいく結果に終わったのは2人の存在があってこそだ。


「いえいえ、こちらこそお邪魔させてもらってありがとうございました。違うギルドの方とパーティーを組んだのは初めてなのでとても楽しかったです」


 オリさんはニコリと笑ってそう言ってくれた。


「私も楽しかったよ! セツきゅんの獣装をこんな近くで見れる機会滅多にないしねっ!」


「あはは、それはよかったです」


 メルさんも喜んでくれて何よりだ。

 僕も他のギルドの人とパーティーを組むのは初めてだったからすごい新鮮だった。


「それにしてもあの猫の獣装ってなんだったんだろうね」


 アリーが使っていた獣装。

 メルさんは心当たりがなさそうだけど、オリさんには思い当たる節があるようで。


「うーん。私も見たことないけど、たぶん原初の三柱に関係してると思うんだよね」


「原初の三柱? それってマギアに仕えてるっていう3体だよね? 姿も名前も出てないやつ」


「うん。場所が場所だしさ、獣装が追加されたのも3体でしょ? なんか怪しくない?」


「言われてみれば確かに......」


 オリさんが言っていることは正しい。

 アリーの使っていた獣装はナイトメアキャット。

 クロ先輩が使う三柱の一柱の力だ。

 そしてピートの獣装はおそらくタイラントドラゴン。ワタル先輩が使う三柱の一柱の力だ。


「でもなんでこのタイミング? っていうのはあるんだよね。何かキッカケがあったのかなぁ?」


「キッカケって最近何もなかったじゃん。下層だって私達より前にセツきゅん達がクリアしてるし、考え過ぎじゃない?」


「うーん。そうなんだけどさぁ......」


 オリさんは知りようがないけどキッカケはちゃんとあった。

 アップデートのタイミングを考えてもハルカ先輩の獣装が解放されたのがそのキッカケで間違いないはず。

 ハルカ先輩の獣装は三柱の最後の一柱の力だとクロ先輩は言っていた。

 ならきっとそれがテンジョウの使う獣装なんだと思う。


 と言っても、僕も分からないことばかりなんですけどね。


 創造神マギアと創世神ナシナの関係。

 原初の三柱とテンジョウ、ピート、アリーの関係。

 何もかもがわからないことばかりだ。


「そんなことよりさ、せっかくだしみんなで写真撮ろうよ!」


 メルさんが突然思いついたかのように言う。


「そんなことって、まぁいいけど......」


「セツきゅんもいいよね?」


「はい、もちろんです」


 断る理由なんてないです。


「やった! じゃあセツきゅんが真ん中で、オリがそっちね!」


「はいはい......」


「あ、セツきゅんはこんな感じのポーズで、オリと私はこうね」


「あの、これって?」


 もしかしてメルさんのやりたいことって。


「いいからいいから、じゃあ、準備はいいかな?」


「はい、大丈夫です」「いつでもいいよ」


「それじゃあいくよっ! 笑って、はい、チーズ!」


挿絵(By みてみん)

お読み頂きありがとうございました。


知り合いにお願いしてイラストを描いて頂きました。

中央がセツキ、右がメル、左がオリになります。

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