第一話 不思議な出会い
ついほんの一週間ほど前に小学生へと進学した。
現在2019年4月、令和一年というやつだろう。
今年で7歳の誕生日を迎えるわけだが、人の成長とは早いものだ。なぜかつい最近まで保育園に通っていたはずだが、あまり覚えていない。そのせいだろう、時間が早く感じるのは。
今年の誕生日は何がいいかなぁ。やっぱりゲーム機か、それとも何かしらの玩具もいいかもしれない。こんな考えてしまうと楽しみすぎて待ちきれなくなってしまうな。まぁ先に考えといて悪いことはないな。
おっと、そんな事を考えていたらもう学校か、小学校生活楽しくなるといいなあ。でも緊張するな〜、まだあまり慣れていないせいでわくわくと緊張が混ざり合ってなんとも言えない感覚だ。
「おはようございま〜す」
上級生が玄関へと続く道に立ち、通っていく人たちに挨拶をしている。
「おはようございます」
挨拶をされたら返すのが礼儀だ。だから、しっかりと挨拶を返す、まぁ自分でいうのもなんだが、人見知りをするタイプなのである。だからさっきのも声が小さくなってしまった、これは直さないといけないな。
教室についた。
教室では、みんなが仲良く楽しそうに話している。
ん、なんだお前は話さないのかって、お生憎学校に来るのが遅いので、担任の先生がみんなに座るよう呼びかけ、みんな自分の席と移動していく。そう話すタイミングではないのだ。
席を見てみたら、そこには消しかすが山のように置いてあった。一旦丸めて消しゴムにしてから捨てといた。
いやぁマジか。最初っからイジメをされているのか、いや、消しかすが置いてあることぐらい普通にあるか。それにイジメにしては可愛らしいものだ。
余裕ぶってはいるが、心配である。こう見えて結構な心配性なのだ。
数時間たち学校が終わった。結局気になってあまり集中できなかった。みんなも普通に話しかけてくるあたりイジメではないとわかるのにな。そう考えながら帰り道の歩道橋を渡り、周囲からは分かりづらい狭い道へと歩いていた。
「そこの君、ちょっといいか?」
謎の老人に話しかけられ歩くのをやめた。
俺は老人の方を向き、警戒しながらも冷静に言葉を返す。
「なんですか?」
老人はゆっくりと近づいてきた。
なんなんだ、この人は怪しすぎる。とりあえずこういう時は、逃げるが正解だっ!
すぐさま振り向き全速力で老人と逆方向に逃げて行こうとした。だが、老人は瞬間移動でもしたかのように早く、振り向き走ろうとした時にはもう裏に回られ、考えていた逃走ルートは見事に打ち砕かれた。
「そんなに、ビビらなくても問題ないぞ。少年よ」
とてつもない程の拘束感を覚えた。固唾を飲んで老人に言い返す。
「大抵誘拐犯とかは自分を怪しく見せない為にそういう事を言う!おじさんが少しでも触ろうとしてきたら、周りに絶対聞こえるぐらいの大声で叫ぶから!」
我ながら脅しとしてはいい方だろう。
老人はそれを聞き、高笑いをし出した。
「ふはっはっはっは!!ふー、悪かった笑って、でも本当にわしは誘拐犯なんぞじゃないぞ」
「じゃあなんなんだよ」
そう問いかけると老人は、怪しい笑みを浮かべ、
「お主の運命を、大きく変える者。とでも言っておこうかの」
と言葉を出す。
意味がわからない。なんなんだこの人は、『お主の運命を大きく変える者』って一体どういう事だ?。ますます怪しい。だけど何処となく無性にこの老人が気になる。目を惹きつける得体の知れないオーラの様なものが溢れ出てる、そう本能的に感じる。
「詳しく教えて欲しい、今の説明だけじゃ全然わからない」
危険性も絶対低くない。だけど『気になる』この好奇心を信じてみたい。
「すまんすまん、確かに説明が足りとらんかったな。だが、まずは家に帰って遊びに行ってくると言ってくるんじゃ。親に変な心配をかけるもんじゃないからな」
疑問に思った。なんでなんだ、ただ誘拐をしたければ家に帰さずに誘拐するのがいいはずだ。わざわざ自分からバレる様な事をするのか?本当に何が目的なんだ、だけどこうするって事は怪しい事をする気はないのか、いやもう決まっている。この好奇心に勝る不安などない。
そう決心して「わかった」とだけ言って家に戻り、ランドセルを置いてすぐに家を出て、老人のところに駆け足で向かっていった。
「お、来たか」
老人は駆け足で向かう自分に気付き、よっこらしょと言いそうな勢いで立ち上がる。そしてこちらに軽く手を振っている、近所のおじいちゃんかあの人...と思いつつも言葉にはせず、老人が歩いて行ったので後をついていく。
「待たせました。じゃあさっきのどういう意味か教えてください」
単刀直入にそう告げると何かを考える様な顔をした後、言い始める。
「お主は、『妖怪』というものを知っておるか?」
驚いた、いきなり話を逸さられたかと思ったけど、そこについては特に追及する事なく、質問に答えた。
「妖怪って、その、カッパとかろくろ首とかそういう奴のことですか?」
「まぁ確かに人間界の歴史に残っているのはその妖怪たちじゃな。まぁ先に本題に入るか、お主には『妖魔界』に来て欲しいんじゃよ」
さらにわからなくなった。だけどものすごくワクワクした。
「妖魔界?というのは、」
「まぁ来てもらったほうが早い。来るか、来ないか、今決めるんじゃ」
そんなの決まっている。確かに胡散臭い老人だけど、ついて行ってみたいという思いが強すぎる。
「もちろん!行くに決まっている!」
老人は笑っていた。
「そうか、やはりお主で正解だったな、さてと着いたぞ」
老人に言われ辺りを見回すと、近所のグラウンドで何もない。本当に妖魔界に行ける様な気がして、どんどん楽しくなってきた。
「お主は今は見えんじゃろうな。わしの手を握ってみ?」
そう言われ手を握ると、世界から一瞬意識が飛んでいく感じがした。だが、すぐに戻り前を見ると、そこにはさっきまで無かったはずの、扉があった。扉のドアノブを老人が掴みそのまま開けようとする。ギィィと軋む音が鳴っている。開かれた扉の中を見ると奥は見えず、まがまがしくも、美しくもある、そんな様な扉だった。
「さて、入るぞ少年」
老人がそう言い中に入っていく、その姿を見て少し心配にもなるが、今更引き戻さない。覚悟を決めて片足を突っ込む、そしてもう片足。その瞬間、世界の境界線を超えた。
この出会いが後に神崎陽斗の人生を大きく変えることになる事はまだ誰も知らない。




