38.5話
ミールが子爵家を出た当日に、いきなり異変が起きていた。それにいち早く気づいたのは中庭にいたお祖母様だった。
「あ〜。もう料理の効果が切れるんだね。ミールが出発してすぐじゃないか。多分だけどこれからこの家は、騒がしくなるね。」
と誰に聞かせるわけでもなく一人呟いていると。料理人が入って来て。
「大奥様、ミール様がこの家を出てから顔色が優れませんが大丈夫でしょうか。」
「えぇ、大丈夫だよ。ただあなたのその集中力もいずれなくなるだろうね。」
「やっぱり明日にはこの効果も無くなってしまうでしょうか。ミール様に作っていただいていたお料理を食べられないので……」
そう言いつつ料理人は、物凄く残念そうにしながらお祖母様にさらに話しかける。
「この効果は、もとよりあの味を食べてしまいますと、自分の料理がかなり下手くそに感じてしまい少しでもあの料理に近づこうとモチベーションを高くたもててたんですが、こうなってしまいますとなかなかモチベーションと言う意味でも難しく感じてしまいますね。」
ハハハハっと爽やかに笑いながら、お祖母様の体調を確認しに来ただけだったのだろうそのまま調理室に向かって歩を進めて行った。
「さて、あのバカ息子達は、これから自分の本当の力だけでやっていくことになったんだが、上手くいくのかね。」
また、お祖母様は人知れずに呟いていた。その心配は見事に、それは本当に見事に当たってしまった。
ミールのお父さん俗に言う現ランドリー子爵は、何事もなかったかのようにいつものように出勤して行った。
「はぁ。ミールのやつめ、この私の顔に泥を塗りおって追放だけで済ませてやったことに感謝して欲しいぐらいだ。まったく。頭がかなり良かったから、期待してやってたんだが結局これか。しかし不幸中の幸い早くに魔力がないことがわかってよかった。後になればなるほど切れなくなるからな。よし、仕事に集中しなければ。」
そう馬車の中でそんな事を考えているうちに職場に着き、そのままランドリー子爵は、自分の部署に行きつつ仕事モードに切り替えて集中しようとしていると今日は、なぜだかいつもみたいに上手く切り替えができない。このままだとマズイし、なんかよくわからないがそれに切り替えだけではなく、集中力も低下してる。こんなコンディションだと今まで蹴落として来たライバルたちが今度は、私を狙ってくるに違いないと考え、あわててしまった。これが一つめの引き金。さらに肝心の仕事中にもこれまでなら絶対やらなかったであろう。初歩的なミスの連発。
「そんなはずない。こんなに簡単なミスを連続でするなんてこの私がだぞ。今までだったありえん。それになぜだろうか……仕事中なのに違う事を考えたり、眠くなったてきたりで全然集中ができん。そうだ!!全て私に恥をかかせたミールが悪いのだ。あいつのせいで何もかも変になって来てる。」
頭に血が昇っているランドリー子爵は、途中までは独り言のようにぶつぶつと言っていたが、最後らへんからは、声が大きくなってきておりそれに気づかずにその場を去って行った。その周りには警戒していたはずのライバル達がウヨウヨと集まりつつあった。
「おい、聞いたか?あいつ基本的なミスを連発しているらしいぞ。」
「あぁ。確かに聞こえた。しかもあいつの家族に魔力無しがいるらしい。仕掛けるなら今じゃないか!!」
「なんだって。それは初耳だ。だが奴のことだいろいろと手を打ってるんじゃないか?それに大丈夫なんだろうな。逆にこちらが追い込まれたら大変なことになるぞ。」
「確かに。急いでやると失敗するな。もう少し様子をみよう。」
ランドリー子爵の知らぬところで計画が進行している。その頃妻の子爵夫人といえば
「お茶会に行く洋服はどこにあるのかしら。」
「はい。奥様こちらでございます。」
とお付きのメイド達がすでに用意をしていた。
その様子に夫人は笑みを浮かべて満足気な表情を浮かべていたが、ある事に気づく。
「そういえばこのお茶会は何時からでしたかしら。」
するといつもならすぐに返事が返ってくるはずなのだが、誰からも返事がなく辺りはいつのまにか時間が止まっていたかのように静まり返る。それに腹が立ってしまい。
「あなた達!!時間もわからないのかしら。基本でございましょうに。」
「お言葉ですが、奥様。私共奥様から時間をきいておりません。ですので、申し訳ないのですが誰一人お答え出来ないのでございます。」
そう返答を聞き、思い出してしまった。
「そうでしたわね。いつもなら覚えてるんですけど。あなた、招待状が私の部屋の机の引き出しに入ってますの。中を見てもよろしいですから時間だけ確認してくださらない。」
一人のメイドを指名して、確認に行かせる。
すると青い顔をしてあわてて帰って来た、
「奥様!!大変でございます!!時間をかなり過ぎております。」
「そ、そんなわけないですわ。」
と、手に持っている招待状をもらって確認するとすでに終わっているかも知れないぐらいの大遅刻だった。それを見た途端に夫人は、顔が真っ青になり膝から力が抜けてバタッと倒れてしった。そしてランドリー子爵家の悲劇は、まだ始まったばかりである。
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