29話
「ここの周りでエルフと人間が睨み合いをしているみたいで、俺はもちろんエルフ側から来たんだけどな。一応念のため顔を変える魔法を使って。」
えっと、ここの周り今現状戦いのど真ん中じゃん。どうしよう。このままじゃせっかくの避難所兼怪我人を匿う計画は、頓挫してしまう。
女将さんもそう思ったのだろう。
「はぁー。全く、せっかくミールといろいろ決めたのに、こんなところで計画を台無しにされるのは、もやもやするな。そういやラードその魔法他のやつにもかけられるんだろう。」
「えっ。まぁ〜抵抗されなければ、誰でもかけられるぜ。」
女将さんが確認をすると、その顔をニヤニヤさせて私を見る。それ以上はやめて絶対良くないよその考え。私が抗議の声を上げる前に女将さんが制して
「ミールにかけな。そしたら今の状況が変わるよ。」
やっぱりこっちにぶん投げたな〜。ひどいよ!!女将さん!!さっきまで相棒って言ったのにこんなのって。
「そんなに嫌そうな顔をするな。ミール。仮にわたしが顔を変えていったとして、喋り方で
バレる。ラードは、今ここに入ったのを少なからずエルフは、見てる訳だ。だからラードは、バレてここをいいように使われてしまう。だから結局あんたがいちばんの適任なのさ。」
む〜。確かにそう言われれば私しかいないよね。でもな〜行くの嫌だな。だって怖いし。
「しかたね〜な。俺も一緒に行ってやるよ。」
「えっいいの。やっぱなしっていうのなしだからね。」
「ミールそんな早口で言わなくても大丈夫だよ。むしろ俺と出ていけば、ここは中立だって証明になるじゃん。」
「ラードは、それで大丈夫なのかい?」
「大丈夫だぜ。上手くいけばそれはそれで問題ないし、上手くいかなくてもここで働けばいいでしょ。ほ〜らなんの問題もない。」
「いい覚悟だ。そこまで決まっているなら一緒に行ってこい。骨は拾ってやるがミールが最初な。」
いやいや私もやられる感じじゃん。もしそうなったら女将さんのまくらもとに化けて出てやる。
「女将さん……もしダメだったら覚悟しておいてくださいね。毎晩女将に会いに行きますよ。」
そう言ってニヤっとした顔をこちらに向けて。
「そうなったら、毎晩出てこい。ずっと相手してやる。さぁ行って来な。」
もう行くしかないか、顔をパンパンと叩いて自分に気合いを入れ、
「行って来ます!!」
女の子だからって舐められるわけにはいけない。ヅカヅカと足早に扉の前に行き、開けようとすると
「ミール、ちょっと待ってまだ魔法かけてないだろ。」
ラードにそういわれ魔法がまだ、かかっていないことに気づく。あぶない、あぶない。
ラードが近づいて来て魔法をかけてくれる。
「ったく。そんなに慌てなくても大丈夫だ。ここの近くで、睨み合っている連中は、攻撃をする気配ないし、ゆっくりで大丈夫だぜ。」
ラードにそう励まされ、一度深呼吸をしてから
もう一度女将さんに向かって
「行って来ます!!」
「はいよ。行っておいで!!」
「お、おい。俺も行くからな。」
今度こそドアを開ける。するとお互いにいつでも攻撃できるように目を離さずにいるエルフと人間がたくさんいて、ドアの音が聞こえた瞬間に、全員こちらの方を向いてきたので、ビックリしちゃって体を縮めてしまったが、
「ミール大丈夫だ。エルフも人間も見てるだけでないとして来ない。だから今決めたことを伝えるのに危険はない。」
と小さな声で伝えてくれた。ふ〜っと息を吐き心臓が暴れているのを落ち着かせる。よし伝えよう。
「あ、あの〜!!ここの女将さんとさっき決めたんですど。ここエルフも人間も関係なく、怪我をした人を匿ったり、避難所の代わりにするつもりです。両方ともこの町の住人なんですから。エルフの皆さん、わたしはこの町に来たばかりで、なにも知らないです。ただ後ろにいる男の子がわたしに教えてくれた、この町であったエルフと人間の歴史そして結果のこと。我慢することも、バカにされる事も多かったでしょう。怒る気持ちはわかります。おこがましいとは思います。そして人間の皆さんあなた方を怒るつもりもないです。多分ですが、エルフの皆さんが受けている不当な扱いに疑問に思うことがあったと思います。そしてこのことを誰も教えてくない。上層部は知っていると思いますが。そして現状その上層部の命令で意味もわからない戦いに駆り出されている。ですのでここは、この場所だけは中立でいさせてください。
お願いします。」
そう言って頭を下げる。
最初緊張で声が上擦ってしまっていたが、最後には緊張がほぐれて、自分の口調で話せて、 よかった。いつの間にか隣に来ていたラードが目を見開いて驚きながらも
「ミール。かっこよかったぜ。あれだけの大人を前にしてあんだけ喋れるのはすげ〜な。しかも丁寧に。」
「あ、ありがとう。」
そういう会話をしながら遠くの方でなってる音を聞きながらラードと一緒に駆け足で女将さんが待っている宿に戻る。
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