5未知の食材
それから数日、納品業者の責任者が
公爵家に、何度も来ていたので疑問に思い、
執事に聞いてみた。
「最近、業者との打ち合わせが増えたようですが…
何かありましたか?」
「…それが、料理長と、業者の話では
シャーロット様が希望された食材は、険しい森の奥を数日探し回って、ようやく見つかっても小皿1つ分しか手にはいらない超秘境の食材らしく、味もわからないので試作も難しく…」
「…。」
アリーナは、あの本の作者に
なぜそれを書いたのか聞きたいと真剣に思った。
「そ、それをシャーロット様ご説明すれば
わかっていただけそうですが…」
「うむ、ウィリアム様が残念がる姿がつらくて
皆言えないのだ…」
やっぱり、それ。
こうして、公爵家お抱えの業者は、
期日を設けない。という約束だけを取り付け、
その後、秘境に人を派遣しつづける事となるのだ。
「シャーロットは本当に食が好きなのだな。
すぐには難しいが、手に入るのを楽しみにしよう」
ウィリアム様は、難易度が高いシャーロット様の
おねだりが、最高に嬉しかったようで、
この上ない喜び様だ。
秘境の食材を探すために人が動き、
料理長が頭を抱え、 業者が森を駆け回る。
そのすべての始まりが、シャーロット様の
「食べてみたい」
の一言だった。
アリーナは静かに思う。
この世界は、案外公爵夫妻を中心に回っているのかもしれない。




