6話 中間考査の後に
試験やテストが個人戦だというのは義務教育以前の問題である、と私は思う。
私のクラスには、良い考えを持った者が多い。
例えば、と言われると真っ先に思いつくのは、柏明だろう。
入学した際から、他者とは異なる雰囲気だった。ただ、宮明のほうが、よっぽど異色の存在だったように思えたが。
彼は他の者とは違い、派閥にとらわれず勤勉で、誰に対しても公平に接し、何より頭脳明晰である。
勉強を得意とする者の中には、それ以外が壊滅的に不得手である者が多い。が、彼にはそれがなく、一般的な程度の品性、考え、行動を備えている。
宮明にはそれがない。まったくないわけではないが、そのような人間性が垣間見えることは少なかった。
ある意味対象的な二人だが、同じ小学校の出身らしい。
珍しいこともあるものだと思ったが、どうやらもう一組。
関涼太と加藤葵がそうらしい。
テニス部の先輩に聞いたが、同じ小学校出身が二組もいるのは初めてなのだそうだ。
……本題に戻ろう。
試験やテストは個人戦である。自明の理だ。
自身のこれまでの努力と、当日のコンディション、また、運も関わってくる。
無論、努力が九割以上を占めるので、コンディションや運は言い訳にできない。
テストの前になると、やはり心配になってしまう。
昨日の勉強はあれで良かったのか? 勉強の方法は正しかったか? 先生の発言を覚えているか?
教室は、まるで氷のように固まった空気が充満している。シャーペンを落としたら、その静寂は溶けてしまいそうだ。
さて、そろそろ時間だ。
気持ちを整えて、深呼吸をして、自身の努力を信じて疑わず、己の全力をもって立ち向かう。
「それでは、始めてください」
―――テストという、化物に。
◇◆◆◆◇
「やっと終わったねー」
「違う意味でも終わってるかもー」
「大丈夫かよ?」
やっと中間考査が終わった。
「お前はどうだったんだ?」
「まだ一回目で、掴めていない部分が多かった。ここから慣れていかなきゃいけない」
テストは作成者によって問題の傾向が変わる。だから、少しでも点数を取るために先生による問題の傾向を分析していかなければならない。これは、テスト勉強以外でできる、数少ない対策だ。
「あかりちゃん、どうだった?」
「良好。入試より簡単な故」
確かに、入試の問題よりは幾分かマシだった。平均点はかなり高そうに感じる。
「ま、あかりは大丈夫だろ」
「だな」
それは俺も疑わない。勉強の量も、質も、模擬テストの成績も、全部見てきたのだから。
◇◆◆◆◇
テスト後の一限の後、食堂へやってきた。いつもより賑わっている気がする。
「何頼もうかな」
「今日はうどんの気分だな。二人は家で食うんだろ?」
「ああ」「うん」
今日は弁当じゃない。家で久々に袋麺でも作ろうかと思っている。
注文を済ませると、すぐに料理が出てきた。
「葵のは何?」
「これ? 唐揚げ定食だけど」
「いいのか?」
「太るって言うんじゃないでしょうね?」
しまった。葵は少し怖い目つきになった。
「いや言わないけど……」
「テスト終わりくらい、好きなの食べたいでしょ」
いつもはヘルシーそうな野菜炒め定食とか、そば等を頼んでいるから、つい言ってしまった。
「確かに」
「葵は一貫性が無いからな。そういうこともある」
「あんたもノンデリよ!」
ざわざわとした騒音の中に、葵の怒り声が聞こえた。




