17話 入場
意外と疲れた障害物競走は、我らc組が勝利を収めた。
何でだ?
前半のリードが効いたのだろう。
「次は、二年生のリレーだな」
「元気そうだな。俺は結構疲れたよ」
「そうか。私にとっては準備運動みたいなものだったが」
凄いね。あんな……良くないな。思い出すのは止めておこう。
「二人の走り、めっちゃ良かったよ」
葵は純粋に褒めてくれた。第三者視点気にならなかったならいいだろう。
「めい、あれは無いだろう。」
舞がけん玉の振りをして指摘する。二回も失敗してしまったことを指しているのだろう。
「悪かった。緊張で手が滑って」
「あれは緊張しているめいじゃない」
明、それは言わなくていい。
「もっと練習をすればよかっただろう」
「……」
「仕方ない。あれがめいの実力だ」
やめません?渚さん。
話しているうちに、二年生の第一走者たちがスタートラインに立った。
「位置について、用意……」
――パァン――、という乾いた音が、静まった運動場に響き渡る。
そして、走者は走り出し、声援は大きくなる。
「速いな」
どうやら、始めの方に速い選手を多く配置しているのか、すぐに次の走者へとバトンが渡っていく。
やはり、一年生よりも、スピード感が高い。バトンパスもスムーズだ。
人数は一年生よりも多いが、眺めているとあっという間だ。
『ベルサイユ!』という声援は、後半に入り少し経ってから聞こえた。
ゴールテープを切ったのは、a組だ。
アンカーが着けた赤いタスキは満足気に揺れていた。
◇◆◆◆◇
数日前の体育の時間に遡る。リレーや障害物競走の練習をしていた。
リレー練習の後、俺が列に戻っていくと、
「めい、体力無いのか?」
翼に声をかけられた。
「あ、あ。だから、楽なところで頼む」
息は荒れていたが、図太く言ったつもりだ。
「いや、もっと速いところに入れるよ」
えぇ……。それは困る。
「それがいい。めいはもっと苦しい思いをするほうが良い」
渚さん? 本気で言ってる?
「容赦ないな」
「容赦なんかしていられないだろう。それに、貢献、したいんじゃなかったか?」
そこで思い出した。俺は貢献するために走るのだ。
そんなことがあって、俺は、最後から五番目の走者なのである。
……前半が良かった。
深い理由はないが、落ち着いて観戦したいというのが本望だった。
「俺の足がもっと速ければよかったんだけどな」
涼太が話しかけてきた。本当にそうだよ。
「頑張ってくれよ。貢献するために」
渚からも念を押された。
「言われなくても、な」
俺達は運動場の真ん中に入場していった。




