16話 障害物競走
学年種目が終わると、次は一年生の障害物競走に移る。
この学校の空気感をより知るためとして、毎年、一年生だけが行う種目だ。
二人一組になり、様々な障害物をかいくぐりながら、グラウンドを一周する。リレー形式だ。
ただ、問題なのは、
「めい、一緒に頑張ろう」
ペアが渚なんだよなぁ……。
「不満そうだね。男女別でなければいけないなんて、誰も言っていなかったじゃないか」
確かにそうだけど、ねぇ?
「いいな。私も渚とペアが良かった」
山葵よ、譲って差し上げよう。
「えっ、私、嫌ですか?」
山葵のペアは音波なのか。身長も同じぐらいで、かなりやりやすそう。
「ううん、音波ちゃんと一緒で良かったよ」
「そうだ。それにこの文化祭の目的は、新しい仲間との親睦を深めることでもあるだろう? だから、男女のペアができても、咎められないわけだ」
今更仕方ないか。
「はぁ。一番手は誰だっけか」
気持ちを切り替えるため、話題を変えた。
「高橋と井上だったよね」
優希と井上琢磨か。結構早いんじゃないか?
話しながら待っていると、競技が始まった。
最初は大玉ころがし。
2mほどの大きな玉を二人で協力して運ぶ。
定番ながらも、腕の出る競技だ。
次にサッカードリブル。パスを繰り返しながら進んでいく。
あの二人、結構早いぞ。b組が一位だが、僅差で食らいついている。
待ち受けるのはクイズ。
大きなテーブルの上に、問題文が書かれたカードがいくつか並べられており、それを選んで回答することで、次のエリアに進むことができる。
ただ、自分たちより前の選手達が答えたクイズは消費されてしまうので、後ろの人になるほど難易度が高くなる。
独特なルールだが、最初の方は影響が少ない。
どのチームも、そこまで時間を取られずに進んだ。
次はミノムシ競争。
二人で麻縄に入って跳びながら進む。
練習のときはかなり転倒したので、心配な競技である。
だが、誰も転倒せず、スムーズに進んでいった。
そして、けん玉。
大皿に乗せるだけの簡単なお仕事だが、これが案外苦戦する。
上手いやつは上手いけど、下手なやつは結構詰まるのだ。
二人同時に乗せなければならないルールも厳しい。
b組はこれで詰まっているようだ。なかなか技が成功しない。
高橋と井上はすぐに技を決め、最後の種目に突入する。
ハードル走だ。
最後はとてもシンプルな障害だ。
つまり、差をつけるにはここ以外の競技で頑張るしか無いと。
けん玉が終われば、ほぼ勝敗は決まったも同然なのだ。恐ろしい競技である。
優希と琢磨は一番に戻ってきた。
声援があがり、ようやく盛り上がってくる。
◇◆◆◆◇
「いやぁ、ようやくだね」
「ああ。ついにって感じだな」
次は俺と渚の番だ。前走者からタスキを受け取り、走り出す。
事前に渚がタスキをつけると決めていたので、受け取ったタスキを渚に渡す。
余談だが、タスキにはクラスの色がついており、a組は赤、b組は青、c組は黄色だ。おそらく、三原色から取ったものだろう。
黄色のタスキを着けた渚が俺より少し前を走る。
大玉ころがしにたどり着いた。
すぐに転がしていって、サッカードリブルに進む。
「意外と楽しいだろう?」
「そんなことを聞いてきたのが意外だよ」
パスを取りこぼすことはなく、順調に前へ征く。
そしてクイズだ。俺達は後半の方の順番なので、あまり容易な問題は残っていない。
が、見つけた、俺の知っている問題。
『アメリカの最高峰、デナリ(マッキンリー山)の標高は?』
カードを持って、エリア担当に伝える。母から聞いた、その数字を。
「6190m」
「正解!」
また、走り始める。
「よく知っていたね。あえて難しいものを行くとは」
「わかるものがあったのかよ。後続が楽な方がいいだろ?」
「そうだね。次も集中しよう」
ミノムシ競争である。
二人で麻袋に入るのだが、俺が前で渚が後ろだ。
あまり慣れていないので、「せーのっ」と合図を出しながら進む。
「狭くないか?」
「私が太っているとでも言うつもりか? 失礼だね」
「いや違くて。狭いと思っていないならいいんだけど」
麻袋に二人で入ると案外狭く、渚の身体が密着しているように感じる。そして多少蒸し暑い。
気にしていないのならいいのだが……。
やっと麻紐ゾーンが終わる。転倒せずに進めて良かった。
けん玉かぁ。一発で成功すればいいが。
一回目。渚はできると言っていたから、俺のタイミングで行う。
あ。玉が大皿から落ちてしまった。もう一回だ。
また落ちた。焦ってはいけないと思いつつも、早く動きたいと考えてしまう。
「落ち着け。次の一回で決めろ」
うーん。厳しいお言葉。
だが。それでいい。
三回目でようやく、見事に成功させられた。渚は当たり前のように成功しているな。
最後にハードルを飛び越え、走り抜ける。
かなり疲れたな。
列に戻る前に、渚が一言。
「君と走れて楽しかったよ」
「そりゃあ良かった」




