14話 体育祭序章
二回目の会議は、あっという間に終わった。
やはり書記が変わっていて、陽菜乃先輩はもう会議には参加していなかった。
無事、順調に進んだのだから良かった。
結局、俺の案は、一切の反対無く可決され、実行が決定した。
やはり、俺じゃなくても良かったと思う。
早織先生には、何か俺を選んだ理由があるのだろうか。
それに失くなった九月号も気になる。然に聞けば少しは知っているのだろうか。
まあいいか。
気にしても仕方ないことだ。
そして、今、運動の祭典が始まる。
◇◆◆◆◇
急に場面変わりすぎだろ。
打って変わって体育祭。なんと会議の翌日である。
こりゃあ、生徒会はかなりのハードスケジュールだな。
確かに昨日も図書室に行ったが、会議に参加していないのにも関わらず、陽菜乃先輩は来ていなかった。
大変だろうなぁ、と浅い考えで他人事だ。
回りきらない頭を回しながら、ラジオ体操を行う。
まあ、びっくりするほどの晴天を迎え、全校生徒が立ち並んで、一糸乱れぬ動きを繰り返す。
強烈な日差しが、俺の白い肌を焼く。
音楽が鳴り止み、開会式が終わっても、俺達一年生はここを離れない。
なぜなら、はじめの競技は、一年生の綱引きから始まるからだ。
綱引きなんか憂いものでしかない。
握っているだけでも痛い、太い綱を、それは大勢で引っ張り続けるのだから、怪我は必至だ。
一応、軍手は持ってきたのだが……。
「渚、素手でいいのか? 必要なら貸すが」
渚は軍手をはめていなかった。細く小さな手が、陽の光を浴びている。
「不要だ。それに綱引きは素手のほうがしっくりくる。勿論、君にも外してほしいというわけではないよ」
なるほど。納得の理由だ。
「そうか。なら俺も、痛い思いをしようか」
外した軍手をズボンのポケットに突っ込む。室長の頑張りには、応えてみたいものだ。
「いいね。もっともらしい」
そんな俺の対応に、渚は少し驚いて、すぐに笑って返した。
「皮肉かよ……。まあ、頑張るか」
◇◆◆◆◇
「いやぁ、惨敗だったね」
予想できていたことだ。
――まず、a組対b組の試合が始まった。
「a組は強者揃いだな」
待機場所で涼太が呟く。
「そうみたいだな」
試合は三本勝負。二本取ったら勝ちだ。
話している間にも、試合はa組側に傾いている。
そして決着。
端っこにいる先生が旗を上げ、合図を出す。
「勝てるか……?」
あの攻防を見せられた後では、勝てるものも勝てなくなってしまうだろう。
「頑張るしか無いよね」
葵の言う通り。善戦ができれば良い。
「めい、軍手貸して。忘れた」
いや、鞄に入れてなかったか? どこに置いてきたんだよ……。
「はい。終わったら返せよ」
「わかった」
明は軍手をはめた。多少サイズが合わないのか、少しぶかぶかだ。
『只今の勝負、a組の勝利!』
そうこう話しているうちに、決着したようだ。
俺達もマウンドに上がる。
そして、
――そして、二本先取ストレート負けを二回も繰り返して戻ってきた。
「せめて一本くらい欲しかったよね」
というのは、山葵の嘆きだ。
「仕方ない。彼らが私達より優れ、より多くの努力を重ねたということだろう」
渚は意外と悔やんでいない。だが、勝敗に執着していないわけではなさそうだ。
「次の障害物競走で勝とう!」
男子室長の黒田翼が威勢よく、クラスに向かって発する。
そういえば、障害物競走って……。
「よろしくな。明」
渚となんだよな……。不安だ。




