10話 特別会議
放課後の会議の事を考えていたら、あっという間に授業は終わってしまった。
すごく大変だった、というわけでもないが、そこそこ頑張ったような気がする。
「頑張って」
帰り学活が終わると、すぐに明に言われた。言われるほどのことをするつもりはないが。
「会議室は一階だから、先に行っておいて。資料は間に合わなかった」
やはり間に合わなかったか。悪びれてもないあたり、昨日の時点でほぼ諦めていたのだろうか。
一階に降りてきた。会議室の前には人が集まっているようだ。見慣れた顔は無い。
「君は?」
その中の一人の男子生徒に声をかけられた。
「あ、一年c組の柏明と言います。今日はよろしくお願いします」
できる限り好印象を持たれるように、丁寧な挨拶を心がける。
「もしかして、三位の?」
何故知られているのかはわからないが、どうやら聞いているらしい。
「はい」
「へぇ、凄いね」
これ以上は興味ないみたいだ。
少し待っていると、見知らぬ先生が会議室の鍵を持ってきた。
「五分後に始めるから、座って待っておいてくれ」
早織先生が来るまで待っていようかと思ったが、さっきの人に促されたので入ることにした。
会議室には大きなホワイトボードがあり、その前に長机が置いてある。恐らく、生徒会の席だろう。
ホワイトボードから少し離して、コの字型に長机が配置されている。奥側に別の生徒が座っていたので、その隣に座ることにした。
さっきの人はホワイトボード前の席に座ったので生徒会のメンバーなのだろう。
他の先生が来た。手前側に座ったので、手前側が先生用の席、奥側が生徒側か。後ろも生徒席かもしれない。
早織先生がやってきて、全員揃ったので、会議が始まった。
「全員、起立」
一番生徒会側に近い席の先生がそう言って立ち上がった。俺も立ち上がる。
「礼」
周りに向かって礼をする。
「只今より、前期生徒会特別会議を始めます。司会を務めます、前期生徒会副会長、三年b組、伊藤尋斗です。本日はよろしくお願いいたします」
話しかけてくれた人だ。司会は正面から見て左側、もっとも入口に近い席に座っている。
周りが司会に向かって礼をしたので、合わせて礼をした。
「生徒会会長、三年a組、遠藤秀です」
真ん中の席に座っている、背の高い男子生徒。
「代理で書記を務めます。二年c組、宮城陽菜乃です」
本来は三年生だったのだろうか。メガネを掛けた女子生徒。
他の生徒や先生の自己紹介はなかったので、発言する際に少し言う感じだろうか。
「今回の特別会議では、今年の十月に開催される文化祭について話し合おう。この学校の生徒会にはある信念がある。それは何だと思う、一年生?」
会長!? いきなり振られましても。
思案しようとすると、すぐに隣りに座っていたやつが答えた。
「そうですね。存じ上げませんが、石に立つ矢とかですか?」
一念をこめてやれば不可能は無いってことか。まぁ悪くない。
「ああ、すまない。先にクラスと名前を教えてくれ」
これ俺に回ってこないか心配だな。一応思いつきはしたが。
「こちらこそ、すみません。一年a組、小柳然です。よろしくお願いします」
丁寧な挨拶だ。しっかり礼もしている。
「隣の君はどうかな?」
やはり振られてしまった。仕方がないか。
「一年c組、柏明です。無私無偏でしょうか」
自分の利益などを考えずに公平に行動や判断をすることという意。流石に皮肉はこもっていない。
「どちらも素敵だ。だが、どちらも違うよ」
まぁなんでもいいけどさ。
「Government of the people, by the people, for the people」
リンカーン大統領の演説の引用か。
「ここで言う政府とは我らが生徒会のことだ。そして人民は生徒のこと。生徒の生徒による生徒たちの生徒会、それが朱崎学園中等部生徒会の基本方針だ」
うん。興味ない。念頭に置いておけということだろうか。
「さあ、始めようか」
男は満足げに言い放った。




