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第3部9話 私の娘です

第3部9話



廃屋の外にまで伝わってくる禍々しい黒い光を感じる。

陽葵は廃屋へと一歩を踏み出そうとした。

「行くな」

低く、静かな声だった。

天音が、陽葵の前に立っていた。

「今行けば、戻れない可能性がある」

その言葉の意味を陽葵は理解していた。


それでも——

陽葵は、一歩も引かなかった。


「行きます」


迷いはない。

真っ直ぐな瞳で陽葵が答えると

天音の瞳が、僅かに細まる。


「……止めるぞ」

その一言に、圧が乗る。

橘も陽葵の前に立っていた。

だが、陽葵は視線を逸らさない。


「それでも、行きます」


さらに一歩を踏み出した。


「私の娘です」

「私が、止めます」


誰も言葉を発さなかった。

ただ風が、静かに吹いた。


やがて、天音は視線を外すと

「……戻って来い」


それは命令ではなく——願いだった。

陽葵は、頷くとしっかりと「はい」と返事をし

廃屋の中へと走り出した。


天音と橘はその背中を見送ると小さく

だが力強く呟いた。


「……任せた」



—廃屋内 地下室

紫苑に一矢報いたが、余裕の笑みを称えている。


「…蓮、本気でいこうぜ」

瞬間、禍々しい黒い光が結から、紫苑へと流れ込んでいく。


「結!やめろ!」

蓮は直感で感じていた。

これ以上、結が力を出したら…。


—結が、壊れる。


だが、どうしたら止められる?


「守る?笑わせるな」

「壊す方が、ずっと簡単だ」


一拍おくと、紫苑は言葉を続けた。


「守って、なんになる」

「守れなかったクセに…結果が、天馬と蒼真だ」


—それは、守る者を守り抜いて

散っていった2人の名前だ。


「……違ぇよ」

「あの2人は守る、と言う覚悟を持って逝ったんだ」


蓮は俯いていた顔を上げると、真っ直ぐに紫苑を見つめた。



「壊すお前なんかに、俺は…奏と俺は負けねぇよ」


蓮の言葉と共に奏も真っ直ぐに紫苑を見据えた。


「…行くぞ」

蓮の言葉と共に奏と2人、タイミングをズラし紫苑に切りかかっていく。

しかし、攻撃は全て受け流されていく。

その時だった。

紫苑の力が、さらに膨れ上がった。

黒い光が、結の身体を包み込み、暴走するように揺らめいている。


「……結!!」

必死に叫ぶ蓮の声は結に届いていない。


結の瞳は、もう何も映していなかった。


「……楽しい」

ぽつりと結が呟いている

その一言で蓮は剣を構えたまま、動けなくなってしまった。

(…結は今、なんて言った…?……楽しい?)


—出来ない。


—斬れない。


俺の…娘だ…。


その一瞬の迷いを、紫苑は見逃さなかった。


「だから言っただろ」

「守るなんて、綺麗事だ」


次の瞬間——

結の力が、爆発した。


「蓮さんッ!」

衝撃が走り、蓮と奏の身体が弾き飛ばされた。


「——ッ!!」


床に叩きつけられる。

息が詰まる。

視界が揺れる。


立てない。


奏は一瞬、早く気がついたのか、上手く受け身を取ったようだが、膝をついている。


「……終わりだ」


紫苑の声が、静かに響いた。

剣を蓮へ突き立てようと振りかぶる。

鈍く光る刃を蓮は見つめていた。


—俺は、守ると決めたもんも守れず何してんだ?



その時だった。

「……やめて」

小さな声だ。

だが、その場の空気が止まった。

紫苑の動きも、僅かに止まる。

蓮が顔を上げるとそこにいたのは——


息を切らしながら立つ、陽葵の姿だった。


「……結を、返して」


震えている。


それでも、目は逸らさない。


まっすぐに、結を見ている。


「……私の娘です」


一歩、踏み出す陽葵。

震えている。

それでも止まらない。


「返して」


その瞬間——

陽葵から暖かい、キラキラ輝く光が溢れ出した。

その光に、僅かに結の瞳が揺れた。






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