第3部10話 抱きしめる光
第3部10話
陽葵を包み込むその光を蓮は知っている。
—守る力。
「……なぜだ……?」
紫苑は目を見開いた。
蓮は陽葵のその姿を見て、ゆっくりと立ち上がる。
「……まだ終わってねぇ」
「…ですね」
奏もゆっくりと立ち上がるとニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
「蓮、奏くん…お願い」
陽葵がそう言うと、光は蓮と奏へと流れ2人を包み込んでいく。
そして――2人同時に踏み込み、紫苑との距離を一気に詰める。
これまでとは比べ物にならない、早さと攻撃の重さで
紫苑に一瞬の隙が出来たのを奏は見逃さなかった。
「ここだ」
奏が剣を振り抜く。
「…ッ!!」
紫苑の体から血が溢れる。
「……終わりだ、紫苑」
一瞬、紫苑の瞳が揺れた。
「……蓮」
少しだけ、蓮は悲しそうに目を細めると背後から紫苑の心臓へと刃を突き刺した。
ーあの頃…4人で一緒に居て…。
お前と蒼真は喧嘩ばっかで、天馬を困らせて
俺はそんなお前らに呆れて…。
でもーーー楽しかったぜ。
「…は、はは…」
紫苑の頬には一筋の涙が流れていた。
「…紫苑、遅ぇよ…」
もしも…時を戻せたら、なんて考えてしまう。
ーーーでも、俺はそんな後悔と弱さに抗い続けながら
守りたいもんを守るんだ。
お前のように…壊れたりしない。
「…蓮」
陽葵が蓮へと歩み寄る。
「陽葵…」
「……終わった」
その言葉の直後だった。
「……ッ」
結の身体が、震えた。
「……あ……ああああああ!!」
光が、暴れ出す。
「止まってねぇ……!?」
「紫苑が死んでも関係ないって事かよ……!」
紫苑が洗脳して、結を操っていると思っていた。
が、本来、力は結の中にあるものだ。
—力の暴走だ。
「……結!!」
蓮が叫んだ瞬間、光はさらに力を増す。
蓮は剣を握る自分の右手を見つめた。
—結が死なないと止まらない?
—また、届かねぇのかよ。
思い出す、蒼真が倒れていく姿。
その時だ。
静かに前へ、陽葵が歩きだした。
「…陽葵?」
陽葵は優しく結を抱きしめると
「……もう大丈夫」と囁いた。
陽葵の光が結の光を飲み混んでいく。
「・・・ま、ママ・・・?」
結の瞳にゆっくりと光が戻っていくのと同時に
陽葵と結の光も消えていく。
「結、パパさ意外と寂しがり屋さんだから…よろしくね」
結にだけ聞こえる声で陽葵は囁くとその場に倒れ込んでしまう。
「……陽葵?」
倒れた陽葵の顔はどこか満足げに見えた…。
「……よかった……」
「陽葵——!!!!」
ー音のなくなった部屋に、蓮の叫びだけが響いた。




