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第3部5話 壊れた日常の果てに


—ひゅぅぅぅ…。

開かれた窓から風が音を立てて入り込む。


蓮は何が起こったのか、理解出来ず立ち尽くしていた。


「…蓮?」

陽葵の声が聞こえ、ハッと蓮は我に帰った。


「結が、多分攫われた…。多分、奏が追いかけて…」


多分、多分って俺は何を言ってるんだ。

心臓がドクン、ドクンと強く脈打っている。

冷や汗がダラダラと流れる。

認めたくないんだ。

守るって言ったのに、容易く結が攫われた事を。


「蓮、落ち着こう!本当に攫われて、奏くん追ってるなら奏くんのスマホのGPSは?」

立ち尽くしている俺の肩に陽葵が手を置く。

やけに陽葵が冷静だ。

…いや、違う。

肩に置かれた手が震えている。

俺の焦りを感じて、冷静で居てくれてるんだ。


「…うん」


無意識に俺は陽葵を抱き寄せていた。

心臓の鼓動が落ち着いていく。


「ありがとう」

ぎゅっと陽葵を抱きしめた。


陽葵は優しく微笑んだ。


俺はすぐにスマホを取り出し、奏のGPSを確認した。

動き続けるGPS…やはり何かを追っている。

そして、すぐに橘さんへ連絡をとり、奏を追いかける段取りをつけた。


「…行ってくる。陽葵は、待ってて」


「私も連れてって」


陽葵は力強く答えた。


「私だけ残るなんて、出来ないよ?結は私と蓮の娘だよ」


力強い眼差しで射抜かれた。

—来るな。

そう言いたかった。

でも、陽葵の決意は固いようだ。

全く視線が揺れない。


蓮は陽葵の手を引き、2人で車へ乗り込んだ。




夏だと言うのに夜の冷たい空気が奏の頬を掠める。

はぁっ、はぁっ、と自分の息がヤケに早い。


「……逃がすかよ」


家々の屋根を走り抜けて行く奏。

前方にはマントの男と抱かれる結の姿。

ちらっと見える結の瞳は虚ろだ。


「結さん……!」


ぴくっと結が動いた。

その瞬間、マントの男は足を止めた。


「……楽しいよ?」

結がポツリと小さく呟いた。

瞬間、奏は言いようのない感覚に襲われた。


–結さんが、不気味に笑っている。


これは…洗脳されている。


「ふざけやがって...!!」

奏は一瞬で万の男と距離を詰めると

短剣で切りかかる。

だが、男はひらりと避ける。

「…チッ。次は本気で行くぜ」

結に危険が及ぶと考え、手加減したが

本気で行かなければ男を止めることは出来ないと奏は判断した。

—キィィン!

奏が短剣を両手で振り抜く。

しかし、男は片手で簡単に奏の短剣を受け止める。

「弱いな」

奏はそのまま一瞬で後方へ投げ飛ばされ出しまった。

しかし、その眼の火は消えていない。

「……絶対、渡さない」

奏が呟くと、辺りに黒い煙幕が立ち込めた。

「なっ!」

煙幕が消えかかり、辺りを見渡すも男と結の姿は音もなく消えていた。

「クソ……!」

その時が、背後に気配を感じた。

「奏!」

蓮だ。

奏は振り向くと、一言だけ呟いた。


「……遅ぇよ」




—奪われてしまった結。

壊れてしまった日常は、もう戻らない。


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