第九十九話:電撃の救出作戦(スクランブル)と、天海の「適応」
第九十九話:電撃の救出作戦と、天海の「適応」
「……よし。『兵は拙速を尊ぶ』。巧遅に勝る拙速だ。リリィ、全同盟国へ一斉送信しろ!」
天狐の社の作戦室は、かつてない熱気に包まれていた。ショータの指示により、帝国は即座にアリア王女のエストレア王国やアーメリア共和国へ救援を要請。セントケベック以南の小国や村々の避難と護衛を最優先事項として、全軍が動き出した。
現地では帝国騎士団の副官、ゼルが陣頭指揮を執り、避難民の誘導を率先している。
「遅れるな! 荷物は最小限にしろ! 命があれば、社が何とかしてくれる!」
ショータは、天海が操る火縄銃へのカウンターとして、コンの加護を付与した『ハイブリッド防弾チョッキ』を全軍へ配布。現世のケブラー繊維の強度に、正一位の「物理無効(物理耐性)」を上書き(インストール)した特製品だ。
「……不安要素(懸念)は山積みだ。杖の老人の幻術、黒い騎馬武者の機動力……。奴らが他にどんな『隠し玉』を持っているか、解析が追いついてねぇ。だが……」
ショータがノートPCのキーを叩く音が、静かな殺気を孕む。
「……今は立ち止まってる暇はない。一分一秒の遅れが、そのまま『骸の軍勢』の増殖に繋がるからな」
その時、白玉に新たな悲鳴が届いた。
『セントケベック南部の村々、相次いで陥落! 敵の進軍速度……常軌を逸しています!』
天海僧侶。あの男は、わずか数週間でこの異世界の理を理解し、現世の「電撃戦」の概念を魔法と死霊術で再現し始めていた。
「……。あのアホ(天海)、現世の『戦術教本』でも拾い読みしたのか? 攻め手が早すぎる……。……アーシェ、ベリさん、キキョウ! 前線へ飛べ! 避難が完了するまで、その『速さ』を力ずくで遅滞させてこい!」
「時間の壁」を巡る極限の争奪戦に突入したショータ。
天海の死の行軍と、ショータの防弾救出。
異世界の北の大地で、新旧の「知略」が真っ向から激突しようとしていた。




