第八十三話:星堕ちの陥没(クレーター)と、北域への緊急遠征(アサイン)
第八十三話:星堕ちの陥没と、北域への緊急遠征
あの日、二つの月の間を不吉に切り裂いた黒い流星から、一ヶ月。
正一位を戴く天狐の社は、かつてない静寂と奇妙な「処理落ち(ラグ)」に包まれていた。
「……ショータさん。北の果て、誰も近づかない不毛の大地に、見たこともない巨大なクレーターができていたって……。参拝に来た旅の商人が、震えながら話していました」
リリィの報告に、ショータはノートPCを叩く手を止めた。画面上の霊力グラフが、原因不明のノイズを含んで激しく波打っている。
「……一ヶ月か。放置しすぎたな。コン、お前も顔色が悪いぞ」
「……あぁ。なんだか、胸騒ぎが止まらないのだ。日々のお勤めをしていても、祈りの言葉が空気に吸い込まれていくような……。社の中に、自分のものではない『影』が混じっている気がしてならない」
正一位の女神ですら不安にさせる、未知の悪意。ショータは現世での「クライシス・マネジメント」と、トップ営業マンとしての「現場主義」を即座に発動させた。
「リリィ。帝都のバドに連絡しろ。……北のクレーターへ『合同調査遠征軍』を派遣する。手続きは後回しだ、これは『世界理』の緊急メンテナンスだとな」
ショータは、社の戦力も極力、従軍させることを決めた。
今回のプロジェクト(遠征)メンバーは、まさに天狐の社のオールスター、「正一位の精鋭部隊」だ。
現場指揮:アーシェ(帝国騎士団との連携、物理火力の要)
作戦参謀:ローレライ(三姉妹の統制と精密な魔力管理)
広域支援:モリグナー三姉妹(歌声によるバフ・デバフの付与)
隠密索敵:キキョウ(影のエージェント、先行偵察)
実地研修:ベリさん(見習い)(四天王の経験と、虚無による消去)
「ベリさん。お前も『見習い』の卒業試験だと思ってついていけ。掃除じゃ落とせない『バグ』がいたら、お前の虚無で削り取ってこい」
「……承知した、プロデューサー殿。あの落ちてきた『狂気』、私の掃き掃除の範疇であれば良いのだがな」
卒なく、しかし今や「未知の侵食」という最大のエラーを排除すべく動き出したショータ。
北の不毛な大地、そこに口を開けた巨大な陥没の底で、彼らを待ち受けているのは、新たな強敵か。それとも、この世界の理を根底から否定する「異物」なのか。




