第六十五話:四天王の参拝予約と、運命の「大吉」
第六十五話:四天王の参拝予約と、運命の「大吉」
「……そなた、社の者だな。私は、どうすればいいのだ。更地にしなければ消されるが、攻撃すればしたで、契約で消える……。右を向いても左を向いても、虚無しかないではないか……!」
かつてのクールな美青年の面影はどこへやら、ベリアルは情けなく肩を落とし、立ちすくんでいた。
「……悩みがあるなら、社務所で『天狐のお祓い(デトックス)』を予約して。……今なら、初穂料(キャンペーン価格)で聴いてくれる」
キキョウに淡々と促され、ベリアルはトボトボと千本鳥居に足を踏み入れた。
一歩進むごとに、正一位の輝きが彼の魔力を「洗浄」していく。重い足取り、絶望に染まったその凛々しい顔立ち。行き交う参拝客たちは、そのあまりの悲壮感に目を丸くした。
「おい、あのアニキ……相当思い詰めてんな」
「冒険者の兄さん! 悩みがあるなら、ここの天狐様に話を聞いてもらうと楽になるぜ! 霊験あらたかだぞ!」
親切な冒険者に声をかけられ、ベリアルは「……あぁ、そうか。……アリガトウ...」と、もはや思考停止した状態で社務所の受付カウンターに辿り着いた。
「はいぃ! ご予約ですねっ! お名前は……って、ベリアル様? お久しぶりですぅ!」
リリィが営業スマイルで出迎えるが、目の前の男に覇気が一切ないことに気づき、頬を引きつらせた。
「……予約の待ち時間に、おみくじでもいかがですか? 心の指針になりますよぉ」
「……あぁ、引こう。……どうせ私の運命など、どん底だ……大凶でも引いて魔力を高めてやるか...」
投げやりに箱を振り、出てきた棒を確認する。リリィが渡した紙には、燦然と輝く二文字が記されていた。
【大吉:望み事、すべて卒なく叶うべし。縁談、向こうから舞い込む】
「……大吉、だと? なぜだ……! なぜこんな時に限って運が良いのだ! 私は今、『大凶』を引いて、この世の終わりを噛み締めたかったのに……っ!ぐああああ」
ベリアルは逆に膝をついて絶望した。運勢の良ささえも、今の彼には「逃げ場を奪う嫌がらせ」にしか聞こえない。
「ベ、ベリアル様? ……大丈夫ですかぁ? ……あ、お時間ですぅ! 『特別相談室』へどうぞぉ!」
リリィに案内され、ベリアルはフラフラと奥の院へ。
そこには、正一位の貫禄を(見た目だけは)漂わせたコンと、ノートPCを片手に「さて、どのアセットを活用するか」と呟くショータが、待ち構えていた。
卒なく、しかし今や「自らの運の良さ」にさえ追い詰められた四天王。
ベリアルの「人生相談」という名の、新たな業務提携(M&A)が、今、始まろうとしていた。




