第五十一話:魔界の採用面接と、ブラック軍団の「逸材」
第五十一話:魔界の採用面接と、ブラック軍団の「逸材」
天狐の社が「正一位」へと昇格し、ホワイト経営で世界を席巻している一方で、魔王軍本拠地・不夜城の地下会議室では、かつてない悲壮感が漂う「緊急採用面接」が執り行われていた。
モリガン(モリグナー)三姉妹とローレライという主力を失い、アザトースまで討たれた今、残された四天王のベルゼと九尾の業務量は限界を突破。このままではサービス残業、ボーナスカット、そして全大陸の守備という過労死ライン必至の激務に忙殺されるのは火を見るより明らかだった。
「……次の方、どうぞ。九尾、履歴書の束がまだやまじゅみに……あ、噛んだ。疲れているな、私」
「当然よ、ベルゼ。私なんて、昨日の睡眠時間は九尾の尾の数より少ないわ。……さあ、お前たち、得意な殺しのテクニックは?」
九尾の問いに、並み居る凶悪な魔物たちが次々と答える。
「三日三晩、呪い殺し続けます!」
「四天王になったら、人間どもの魂を100万個ノルマで集めます!」
「連続労働? 168時間(一週間)不眠不休で虐殺可能です!」
だが、ベルゼは冷徹に不合格の印を叩きつける。
「……古い。根性論だけの無能は、あのショータとかいうプロデューサーの『効率』に一瞬で食われますよ。……次」
そこへ現れたのが、異様なオーラを纏った二人の若き悪魔だった。
一人は、退廃的な色気を漂わせ、虚空を見つめる美青年、ベリアル。
もう一人は、傲慢なまでに不遜な笑みを浮かべ、黒い翼を誇示するルシファー。
「……ほう。ベリアルと言ったか。貴方の『強み』を簡潔に」
ベルゼの問いに、ベリアルは欠伸混じりに答えた。
「……無価値な労働の破壊です。私が一度指を鳴らせば、敵軍の士気は虚無に染まり、全員が自発的に『ニート』になります。戦わずして組織を腐らせる……それが私の『卒のない』殺しです」
「……面白い。九尾、次は?」
「ルシファー、貴方。四天王になってやってみたい仕事は?」
ルシファーは椅子の背もたれに深くふんぞり返り、ベルゼたちを見下ろした。
「……改革だ。この古臭い『魔王軍』というブランドを、私が完全に上書き(オーバーライド)してやる。まずは人事評価制度の刷新。成果を出せない上司の解任から始めようか」
張り詰める空気。九尾は怒りで尾を逆立てたが、ベルゼはモノクルの奥で目を細めた。
「……合理的な野心、そして既存システムへの不信。……いいでしょう。ショータに対抗するには、これくらいの『毒』が必要です」
こうして、魔王軍に新たな二人の「問題児」が加わった。
卒なく、しかし今や「魔界の採用市場」までもが、ショータの影響で激変し始めていた。




