第五十話:正一位の組織改編(ガバナンス)
第五十話:正一位の組織改編
「……よし。各部門、順調だな。リピート率もエンゲージメントも過去最高を更新中だ」
天狐の社のオフィスにて、ショータは現世の「経営ダッシュボード」を眺めるような鋭い眼差しで、社の活気溢れる光景を見渡していた。
特設スタジオからは、モリグナー三姉妹の瑞々しい歌声と、キレを増したステップの音が響く。白銀の髪をなびかせたローレライは、メトロノーム片手に「そこ、サビのビブラートが甘いですわ!」と、現世の熱血マネージャー兼ボイストレーナーさながらの指導に明け暮れていた。
境内では、コンが正一位の威厳を保ちつつ、参拝客の悩み相談に応じ、神楽を舞う。
「ほう、その恋の悩み……我に任せるが良い。油揚げ三枚で、御利益を上乗せしてやろう!」
リリィは各国との外交や伝令、さらには物販の在庫管理までこなす社の中枢・統括秘書官へと成長。
「エストレアへの納品、完了ですぅ! 欠品なし、納期厳守ですよぉ!」
アーシェは、勝ち守りやガイの盾レプリカの品質管理を担いつつ、傭兵たちへ剣術を指南。
「私のサインが欲しいのか? ……ふふ、ならばまずはこの『勝ち守り』を手に取り、ガイ殿の如き強き心を持つと誓うのだ! それが済んだら、帝国との合同演習の列に並ぶが良い!」
そしてキキョウは、影のエージェントとして恋愛成就の裏工作や、境内のモンスター駆除を卒なくこなしていた。
「……ターゲット、恋敵の排除完了。縁結び、最短ルートで進行中」
それぞれの個性が、ショータという「プロデューサー」の下で一つの巨大な経済・信仰圏として歯車を噛み合わせた、その時――。神界の荘厳なナレーションが響き渡った。
『――条件達成。社への多大なる貢献を認め、全スタッフのランクアップを確認します』
コン:Lv.50【正一位・瑞穂の守護女神】
(能力:全参拝客のHP・魔力自動回復。おとぼけは健在だが、その祈りは一国を浄化するほどの神格へと到達した)
リリィ:Lv.45【社の中枢・統括秘書官】
(能力:超空間物流管理。各国の軍事機密すらも「事務資料」として整理し、大陸全土の流通を指先一つで掌握する)
アーシェ:Lv.48【帝国・聖域の総和騎士長】
(能力:絶対防衛ライン構築。ガイとの『遠距離恋愛』による精神耐性は無限大に。彼女が立つ場所は、いかなる邪悪も通さぬ不落の要塞と化す)
キキョウ:Lv.44【神の影・特務執行官】
(能力:因果律の微調整。不幸な事故を「卒なく」幸運な出会いへ書き換え、影から世界の運命を愛の形に編み上げる)
ローレライ:Lv.52【白銀のチーフプロデューサー】
(能力:タレントの才能強制開花。魔王軍時代の統率力を『育成』へ全振りし、凡夫ですら数日でスターへと変貌させる)
モリガン:Lv.30【魔界の愛され幼女センター】
(能力:無垢な歌声による広域バフ。その歌声を聞いた者は戦意を喪失し、武器を捨てて「推し」の幸せを願う親衛隊へと変わる)
ヴァハ&ネヴァン:Lv.28【深淵のバックダンサー姉妹】
(能力:シンクロ率100%の演舞。極限の羞恥心を膨大な魔力へと変換し、舞台上に物理的な奇跡を現出させる)
そして、その中心に立つショータの視界には、新たな権能が灯った。
ショータ:Lv.55【世界の総支配人】
(能力:『世界理の編集』。現世の事象をさらに大規模に異世界へ上書き・適応させ、世界の常識そのものを「卒なく」書き換える)
「……よし。これでようやく『基盤』が整った。……コン、リリィ。次は、この世界の『通貨・経済システム』の統一にかかるぞ」
卒なく、しかし今や「世界の支配権」を経営戦略として描き始めたショータ。
魔王の余裕すらも飲み込む、天狐の社の「グローバル展開」が、いよいよ最終段階へと突入した。




