第四十九話:白銀のマネージャーと、帝都の「モリグナー」旋風
第四十九話:白銀のマネージャーと、帝都の「モリグナー」旋風
魔王軍の牙と謳われた次官モリガンと、その妹たち。さらには最強の側近ローレライまでもが天狐の社へと降り、あまつさえ最終兵器アザトースまでもが討たれた。この未曾有の事態に魔界は震撼……するかと思いきや、本拠地の玉座に座る魔王は、依然として不敵な笑みを崩してはいなかった。
「……フフ、面白い。駒が減るほどに、盤面は整理されるというものだ。ショータとやら、貴様の『プロデュース』とやらを、存分に踊らせてやるわ」
一方、そんな魔王の不気味な余裕を余所に、帝都の特設スタジアムでは歴史的なイベントが幕を開けていた。
新生アイドルユニット『モリグナー』の結成記念ライブである。
「リリィさん、あちらの照明(魔法)の出力、もう少し上げられますか?」
「了解ですぅ、ネヴァンさん! 舞台袖のドリンク(聖水)も準備万端ですよぉ!」
かつての偵察員リリィや、くのいちのキキョウにとって、元四天王次官とその妹たちが同じ職場にいる緊張感は相当なものだった。だが、ショータとコンによる徹底的な「デトックス(浄化)」を経た彼女たちは、驚くほどに気さくで明るい「お姉さん(モリガンは幼女のまま)」たちへと変貌を遂げていた。
「ショータ殿! この『ペンライト』という魔道具、振るたびに士気が上がる(バフがかかる)素晴らしい発明ですわね!」
警備担当のアーシェも、ガイの騎士団と共に会場整理を「卒なく」こなし、イベントの熱気に目を輝かせている。
ライブのクライマックス。
幼女から本来の美しき姿へと一時的に魔力を戻したモリガンを中心に、三姉妹の重厚なハーモニーが帝都の夜空を貫いた。
「――我らの歌を、世界に響かせよッ!」
割れんばかりの歓声と、降り注ぐ黄金の紙吹雪。
ステージの袖で、白銀の髪をなびかせたローレライは、インカムを押さえながら、うっすらと目に涙を浮かべていた。
(……あぁ。あんなに満面な、本物の笑顔。……私は、これを見るためにあの子たちを育ててきたのですね)
「……感傷に浸るのは後だ、マネージャー。次は『握手会の動線確保』と『追加グッズの在庫確認』だ。……ほら、卒なく動けよ」
ショータの容赦ない業務指示が飛ぶ。ローレライは涙を指先で拭うと、現世の「デキるチーフマネージャー」のような鋭い目つきで頷いた。
「承知いたしました、プロデューサー。……売上目標、必ずや達成してみせましょう」
卒なく、しかし今や「魔界の脅威」を「帝都の希望」へと完璧にリブランディングしたショータ。
天狐の社は、一宗教法人を越えた異世界最大の「総合エンターテインメント・コンツェルン」へと、その歩みを加速させていた。




