第四十八話:白銀の誓いと、新たなマネジメント契約
第四十八話:白銀の誓いと、新たなマネジメント契約
「……くっ、全霊を……注ぎます! 私は、この子たちの未来を……ッ!」
アザトースの巨躯の上で、ローレライは自身の命を燃料に変えようとしていた。しかし、そこへショータが白玉を介して、奔流のような黄金のエネルギーをねじ込んだ。
「勝手に一人で損切り(心中)してんじゃねぇ! コン、全ユーザーの信仰心をローレライにバイパスしろ!」
「任せろ! 正一位のネットワーク、なめるななのだ!」
コンが叫ぶと、社に集まった五千の兵、そして避難してきた街の人々の「祈り」が、巨大な光の回廊となってローレライへと流れ込んだ。数万人のロイヤル・カスタマー(信徒)による圧倒的な支援。それは、個人の魔力を遥かに凌駕する「集合知の力」だった。
――ズ、ズガァァァァンッ!!
内側から耐えきれなくなったアザトースの肉体が、凄まじい破裂音と共に霧散していく。闇が晴れ、雨が止み、雲の隙間から一筋の陽光が差し込んだ。
力の反動で、ローレライの身体が糸の切れた人形のように地上へと落ちていく。
「ローレライーーッ!!」
真っ先に駆け寄ったのは、泥まみれのモリガン三姉妹だった。
ショータたちが追いついた時、三姉妹に抱きかかえられたローレライは、辛うじて息を弾ませていた。だが、その艶やかだった水色の髪は、全ての魔力を放出した代償として、雪のように真っ白に染まっていた。
数日後。天狐の社の奥、特別療養室。
ショータが調合した現世のサプリ(という名の魔力回復薬)と、コンの浄化魔法による「悪魔払い(デトックス)」を受け、ローレライは静かに目を覚ました。
「……モリガン様。ヴァハ様、ネヴァン様。……申し訳ありません、私は……」
「いいの。ローレライがいてくれれば、それだけでいいのよ!」
幼いモリガンが、白銀の髪を優しく撫でる。ローレライはその温かさに涙をこぼし、穏やかな微笑みを浮かべた。
「……分かりました。これからは、貴女方のやりたいことをおやりなさい。私は……それを、陰ながら見守ることにいたします」
そこへ、盆栽の剪定でもするように卒なく包帯を巻き直していたショータが、営業マンの「アフターフォロー」のトーンで口を開いた。
「見守るだけじゃ、この先この三人のマネジメントは務まらないぞ。……ローレライ。傷が癒えたら、ここで働かないか?」
「……えっ? 私を、雇用するとおっしゃるのですか?」
「ああ。うちの社は今、エンタメ事業と警備部門が人手不足なんだ。お前みたいな『現場のプロ』がいないと困る。……主君たちのそばで、給料をもらいながら公私混同できる。……悪くない契約だろ?」
「……。ふふっ、貴方という人は。……承知いたしました。私の全霊、今度はこの『社』のために捧げましょう」
卒なく、しかし今や「魔王軍の最強の絆」さえも社の資産に組み込んだショータ。
白銀のマネージャー・ローレライを迎え、天狐の社は、世界を統べる「異世界総合芸能・防衛庁」へと、また一歩近づいた。




