↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『飽き性な俺の器用貧乏、異世界で「神の模倣者」へと至る 〜3ヶ月で極めて捨てる生活を卒業し、天狐様と終わらないクエストへ〜』  作者: A古町
第1部 第1章Celestial Fox

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/659

第四十七話:純真の歌声と、献身の暴走

第四十七話:純真の歌声と、献身の暴走

 降り頻る雨を切り裂くように、幼きモリガンの歌声が響き渡った。


「――♪~」


 かつて魔王軍四天王次席として「狂気」を振り撒いたモリガン。だが、退化したその小さな喉から溢れ出すのは、驚くほど澄んだ、純真そのものの旋律だった。


 続いてヴァハとネヴァンが、震える手を握り合いながらコーラスを重ねる。


 正一位の社の霊力と、三姉妹の根源的な魔力が共鳴し、戦場に柔らかな光の粒子が舞い踊る。世界を無に帰そうとしていたアザトースの巨躯が、まるで深い眠りに誘われるかのように、その動きを決定的に鈍らせた。


「……効いているのか!? 破壊神の処理速度クロックが落ちているぞ!」


 ショータは【異世界プロデューサー】の視界で、アザトースの魔力波形が「攻撃」から「沈静」へと書き換わっていくのを捉えていた。


 しかし、それだけでは足りない。

 アザトースはあまりに巨大すぎた。一度動き出した「無」の慣性は、幼き歌声だけでは完全に停止させるには至らない。再び闇の右手が、ゆっくりと、しかし確実に振り上げられる。


「……やはり、わたくしが……。私が始めたことなのです」


 アザトースの肩の上。歌を止めていたローレライが、悲壮な決意を瞳に宿して立ち上がった。彼女の全身から、命の灯火を削るような青白い魔力が噴き出す。


「モリガン様、ヴァハ様、ネヴァン様……。貴女たちの自由な未来は、このローレライが命に代えても繋ぎ止めましょう!」


「おい、待て! ローレライ、早まるな!」


 ショータが叫ぶ。彼女は自分の魔力をアザトースの核へ逆流させ、自爆に近い形で無理心中を図ろうとしていた。現世の言葉で言えば、「最悪の損切り(心中)」だ。


「ローレライ! やめてぇ! 一緒に歌いたいって言ったのに、いなくなっちゃダメぇ!」


 モリガンの絶叫。しかし、ローレライの魔力は既に暴走の臨界点に達しようとしていた。


「……。チッ、どいつもこいつも『自分勝手』な情熱ばっかり持込みやがって……!」


 ショータは歯噛みしながら、白玉を高く掲げた。

 

「コン、リリィ、キキョウ! ローレライの魔力暴走を『中継バイパス』しろ! 彼女の命を燃やすんじゃなく、社の『信仰心(電力)』を流し込むんだ! 『命の使い捨て(デス・マネジメント)』なんて、俺のプロデュース理論には存在しない!」


 卒なく、しかし今や「自分を犠牲にする愛」すらも論破しようとするショータ。

 絶望の心中か、それとも奇跡の共演か。

 雨の戦場は、一人の側近の命を懸けた、最後の「契約改定」の瞬間を迎えようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。