第百三話:白狐の極光(オーロラ)と、影の潜入(インフィルトレーション)
第百三話:白狐の極光と、影の潜入
「……よし、フェーズ二だ。コン、白玉から広域支援プログラムを射出しろ!」
ショータの合図と共に、本殿の白玉が眩い輝きを放つ。
「任せろ! ――天つ狐のオーロラエクスキュージョンッ!!」
北の空に再び極彩色のカーテンが広がり、正一位の加護を纏った逞しい白狐の援軍が戦場へ降り注いだ。白狐たちはその聖なる咆哮で、果心居士が撒き散らすフィールドのデバフを次々と中和していく。
だが、本陣の天海は冷徹にその光を見上げた。
「……同じ手は二度食わぬ。魔銃列隊、照準を天空へ! ――ひ、ふ、みッ!!」
三列に並んだ兵たちが、一斉に銃口を空へと向けた。放たれたのは、狙えば百発百中の魔導弾『フルマジックジャケット』。空を舞う白狐たちを正確に撃ち落とさんとする三段撃ちの連射が、天を貫く。
「今だ! 骸の兵にできた隙を逃してはなりません!」
「遅れるな、帝国騎士団! アーシェ殿に続けッ!」
銃撃が空へ向いた一瞬の空白。アーシェと、負傷したガイに代わり陣頭に立つ副官ゼルが、一気に防衛線を押し上げた。防弾チョッキの重厚な感触を信じ、騎士たちは泥の波を掻き分けるように突き進む。
乱戦の最中。骸の兵に囲まれながらも、ベリさんと隼人正の一騎打ちは激化していた。
馬上から大太刀を軽々と振り回し、黒百合の瘴気を叩きつける隼人正。ベリさんはそれを紙一重でかわし、虚無の魔力を一点に凝縮した槍を突き立てる。
「……フン、馬上でふんぞり返るのもそこまでだ。……少しは『重心』も学んだらどうだ?」
「抜かせ! 貴様の虚無など、我が大太刀の錆にしてくれよう!」
火花を散らす一進一退の攻防。
だが、その激闘の喧騒から離れた、天海の本陣の真北。
積もった雪が、不自然に揺れた。
……キキョウだ。
彼女はショータが授けた『熱源遮断』の隠密迷彩を纏い、天海の背後へと音もなく忍び寄っていた。その手には、かつての主君を討つための、鋭利な殺意が握られている。
「三段撃ちの死角」を完全に突いたショータ。
空の激突、地の肉薄。そして影の暗殺。
三つの局面が重なり、戦国の亡霊たちの「無敵」が、音を立てて崩れようとしていた。




