第28話「錆と寂」
僕たち3人は街についた。その街は閑散としていた。瓦礫によって作られた家々の中には、崩れかけている家もあった。街の中心に向かって僕たち三人は進んでいった。この街は独特な形をしていた。外から街に入っていく時に見た限りでは町全体がきれいな円形に模られていた。家々は基本的に2階建てで、円形から四角形まで様々な形のものが入り混じっていた。外からは分からなかったが、建物が密集していて道幅が狭かった。砂漠の暑さを凌ぐために建物で影を作っているのだろう。街の中は驚くほど涼しかった。
「たくさん家があるな・・・」
カイラが静かにそう囁いた。
「そうっすね。人はいないっすけどね」
カズがそう言った後に続くのは僕たちの足音だけだった。砂を踏む僕たちの足音だけが聞こえる。僕は足を進める度に違和感を感じ始めた。おそらくカズが言った通り、いくら街の中を進んでも人がいなかったせいだ。それでも僕たち3人はカイラを先頭に狭い道の中を進んでいった。当てのない旅を続ける僕たちは常に食料と寝床を探している。人が見つからない限り、人がいそうな街の中心に進むしかなかった。
「道が開けそうだぞ」
カイラがそう言った。僕たちが進んでいた道の先が明るくなっていた。
「やっと街の中心につくんすかね」
「人がいればいいんですが・・・」
道が開けた先には円形の広場があった。広場は石畳でできていて、やはり人がひとりもいなかった。広場の中央にはぽつんとひとつだけ祠が建っていた。
「誰もいねぇじゃねえか」
カイラがそう吐き捨てた。カズはその場に座り込んでしまった。
「ここまで来たのになんも無しっすか。ああああああああああ。飲み物が欲しいいいいい」
顔を覆いながら地面に向かってカズは叫んでいた。
「にしても、こんなに大きな街なのに人がいないなんて怪しいですよ」
僕はカイラに向かってそう言った。
「それもそうだ・・・な」
カイラはそう言って、広場中央の祠に近づいていった。僕もカイラについていった。祠は形のいい丈夫な瓦礫を寄せ集めてできていた。しかし、とても古びていた。その様子から考えると人の手入れはだいぶ昔にされなくなってしまったようだ。あちらこちらに穴が開いていた。祠の高さはカイラの背丈ほどだった。普通の人が少しかがめば入れるくらいの大きさだった。祠には両開きの戸が付いていた。カイラは躊躇うことなく祠の戸に手をかけた。その瞬間、あたりの空気の流れが変わった。止まっていた時間が進み始めたような気がした。遠い昔のこの街の様子が・・・浮かびあっがてくる・・・ような?
「何してるんすか?」
カイラも僕も肩がビクッとなった。
「なんだよ、カズかよ。びっくりさせんなよ」
広場の入り口で落ち込んでいたカズがいつの間にか近くに来ていた。
「もう、心臓とまるかと思いましたよ」
さっきまで感じていた感覚は祠のせいではなかった。ただ、カズが近づいてきていただけだった。自分がとてもバカらしく思えてきてため息が出た。カイラはその瞬間に勢いよく祠の戸を開いた。
「なんだこれ・・・」
カイラの視線の先には4足のかわいらしい生き物がいた。よく見てみると生き物の像のようだ。こちらをじっと見て動かない。
「なんですかね。これ・・・」
「かわいいいいーーーー!」
カイラのテンションが上がった声に僕の声がかき消された。
「なんなの。この生き物めちゃくちゃかわいいんだけど」
そう言いながらカイラはその生き物の像を撫で始めた。
「見たことないかわいさ。何世代の生き物なのかな?」
生き物の像を撫でながら目を輝かせてこちらにそう言うカイラは、らしくなくて少し面白かった。
「その生き物は、犬って言うんすよ」
カズが得意げにそう言った。
「イヌ?」
カイラはカズに聞きかえした。
「そうっす。犬っす。4足で、しっぽがあって、毛におおわれてて、かわいくて、人間に忠実で・・・。自分も飼ってたっす」
「ええぇーーー!こんなかわいい生き物飼えるの!?お前でも?」
「昔は誰でも飼えたっすよ。てか、そこら辺を歩いてたっすよ」
「こんなかわいいのが歩いてるの?しんじられない!」
カイラはカズと喋っている間もずっとイヌという生き物の像をずっと撫でていた。
「にしてもこの銅像、どっかで見た覚えがあるっすね・・・」
カズはそう呟きながら銅像をじっと見ていた。




