第27話「日差し」
久々の投稿です。
地面から這い上がってきた朝日はゆっくりと青空の中にその身を浮かべていった。雲はひとつもなく、風は穏やかだった。照りつける日差しがやけに暑かった。まだ、昼前なのに陽炎が遠くに見える砂丘と空の境目に見えていた。
「ふたりはどこに行ったんだろう…」
僕はいなくなったふたりを探して、砂丘の尾根を辿り歩いていた。しかし、目前に広がるのはひたすらに砂ばかりだった。ふたりの影はまったく見つかりそうになかった。
「あつすぎる…水が飲みたい…」
そう言って僕はその場に仰向けに倒れた。そのまま、僕は砂丘の尾根から谷間まで転がっていった。すると突然、涼しくなった。顔を上げると砂丘の影に入っていた。影は思っていたよりも涼しかった。そのまま、仰向けになって目を瞑っていた。
「お!ナギト。起きてたのか」
カイラの声がぼんやりと聞こえてきた。走馬灯が始まったのだろうか。
「まだ、寝てんのか?早く起きろよ!おい!カズ、お前。水、飲みすぎな!」
「えー全然たりてないっすよ。一昔前の野球部の顧問の先生じゃあるまいし。水くらい、いいじゃないっすか」
「なんだ、そのヤキュウブのコモンって。てか、水くらいって言うが、ここは砂漠だからな!自分の小便でも飲んで足しにしとけ」
カイラの物凄いサバイバル術が聞こえてきたあたりで僕は意識がはっきりしてきた。
「水…水を…ください」
カイラに向かって手を伸ばしながら僕は力なくそう呟いた。
「あぁあ…水ね。分かった」
そう言って、カイラはもう既に軽くなっていた水筒を僕に渡した。
「ありがとうございます…」
僕はその水筒を受け取って、その中の少ない水を一滴も残さずに飲み干した。
「ごちそうさまでした!」
そう言ってカイラにその水筒を返した。
「ゲッ!お前、全部飲んだのか!」
「えっ。全部飲むのダメでしたか?」
カイラの顔が陰っていくのが分かった。
「私、もうここで死ぬかもしれない。お前のせいで!」
カイラが珍しく弱音を吐いたので僕は戸惑いを隠せなかった。
「えっ、そんなこと言わないで下さいよ…」
と言いながら、半泣きで声が震えかけた。カイラの口角が微かに上がったように見えた。
「ごめんごめん。そもそも、私がお前を起こさずに丘の影に逃げたのが悪かったな」
そうだった。僕が起きたとき一人だったことを忘れていた。そもそも、そこがおかしいかった。
「なんで、置いていったんですか」
「起きたときというか、起こされたときなんだけどな。あの巨大生物が大きな音を立てながら地面に体を埋めていってたんだけど、地面が揺れて目が覚めたんだよ。そしたらないきなり地面が崩れ始めてそのまま砂丘を転がっていってさ。死んだかと思ったよ。そしたら目の前で寝ながらカズも転がってきてたんだよね。そこで私がカズを掴んで…」
「寝てる俺を砂丘にぶっ刺したんすよね」
カズはカイラの話を遮って、ため息をつきながら不満そうに言った。
「そう。それでかろうじて下には落ちずに無事だったわけだ。でかしたぞカズ」
「おかげで起きたとき、口と鼻の中にめちゃくちゃ砂が入ってたっすけどね」
結構、無茶をしていたことに僕は驚いた。加えて、カズの話に少しだけ同情した。
「朝から大変だったんですね」
「ほんとだよ。あの巨大生物のせいでよ」
カイラが地面を睨みながらそう言った。
「何だったんでしょうね。あの大移動は。あ、それとここは何処なんですかね」
「分からんな。目印になるもんがあればいいが」
辺を見渡してみたものの、一面が砂漠だった。
「たぶん、丘の上の方に行ったら何か見つかるっすよ」
「そうだな」
カズの提案で砂丘を3人で登っていった。砂丘を登ると日が照って暑い代わりに視界がかなり開けた。
「クソ暑いな」
カイラがそう言って慰めるように吹いた風は生ぬるかった。
「暑いですね…。なにか…見えましたか?」
そう言いながら僕はあたりを見回していた。
「暑い!暑い!暑い!やってらんないっす」
そう言ってカズは丘から降りていった。言い出しっぺから諦めるなんてなんともカズっぽい。
「てめぇぶっ殺すぞ。逃げんじゃねぇ!」
案の定、カイラの暴言が飛んできた。カズが足を止めてこちらに戻ってきた。やっぱり度胸がない。
「何も見えねぇなぁ」
カイラはそう言いながら、戻ってきたカズを脇の下から両手で抱えあげて日傘にしていた。日を目一杯浴びているカズは白目を向きながら汗を滴らせていた。
「なんだこの日傘は。やけに重いし、雨漏りしてるぞ」
真顔でカイラがそう言った。
「もう怖いですよ。何してるんですか、カイラさん!」
僕はカイラがカズを許すように促した。
「え、何の話だ?早く行くぞ」
「え、どこにですか?!」
「お前は見えないのか?あそこの街っぽいのがあるのが」
そうだった。カイラは視力が僕よりうんと良かったんだった。
「見えないです…」
「じゃあ、ついて来い」
カズを抱えながらカイラは歩き出し始めた。僕も送れずについていく。




