第18話「ダザイ」
アクタ
ナツの父親。優しくて真面目。
ナツ
10歳。女。
母親が自殺している。
ダザイはアクタの言った通り、他人をやけに嫌っていた。しかし、その言葉は鋭いところをついてきていた。ダザイは頭がキレる人物がなのだろうか。そうだとしたら僕なんかには太刀打ちできなさそうだ。そう思っていたら、アクタが全員に向かって言った。
「ダザイは、昔からああいう奴だ。しつこく話しかければ話してくれる...はずだ」
そう言って、アクタは直ぐに戸を叩いた。時間がないのだろうか。アクタは焦っていた。すぐに戸の小窓が開いた。
「なんだ?しつこいぞ!」
もっともなことをダザイは言ったが、しつこさを感じているのならこちらのものだ。それにしても、ダザイの感情が読みにくい。小窓からは目元だけしか見えなくて、表情が分からないからだ。人を説得させるときは相手の様子をうかがう必要がある。この状況だと言葉と目元から感情を読み取らなければいけない。
「だから、知っていることを全て話してくれないか?」
アクタは先程より強い口調で言った。ダザイの目が鋭くなっていった。明らかに怒っているのが分かった。
「ワシが何をしたのだ?なにもしてないと言っておるじゃろ?これ以上、その口を開くな!」
そう言って、またダザイが小窓を閉めようとした。アクタがそれを右手で全力で止めにかかった。
「ダ、ダザイッ!話を…話をしてくれるだけで…いいっ…から」
戸全体が震え始める。
「おま…えっ!しつこい…ぞ!」
端から見ると、子供の喧嘩のような感じだった。僕達とナツは少し距離をおいて見守っていた。
「お願いっ…だ。話を…聞きたい…っ」
アクタはそう言ってダザイに気づかれないように、左手でドアノブを指差した。僕はまさかと思ったが、近づいて行ってそのドアノブを回してみた。なんと、開いた。
「うぉっ!」
ダザイの驚く声がした。ダザイがバランスを崩して倒れた。あっけなく扉が開いた。鍵をかけていなかったのだろうか。
「いたたたたっ。おまえぇ何をする!」
そう言ってダザイは立ち上がった。ダザイはかなり年を取っているようだった。白髪でよぼよぼの皮膚。そして細身で足が震えている。そんな感じなのに、アクタと張り合っていたと思うと、すごい根性だと感心してしまった。
「すいません。でも、どうしてもダザイさんからこの集落についてお話を聞きたかったんです」
僕はダザイに頭を下げながらそう言った。ダザイは僕の下げた頭に手をのせて、それを支えにして起き上がった。とても人使いが荒そうだ。
「謝ればいいってもんじゃないじゃろ?頭を上げてみろ!」
僕の頭に手をのせたままダザイは言った。
「すいません。頭を上げるので手をのけてくれませんか?」
ダザイにもう一度倒れられても困るのでそう言った。
「いやじゃ!そのまま上げてみろ」
これはいじめなのだろうか。老人に文句を言うのは気が引けるが、とても苛立たしかった。何もできずに頭を押さえつけられていると、いきなりカイラが叫んでこっちに向かってきた。
「じじい!若いからってなめてんじゃねぇーぞ!!!」
「あぁ?おま.......」
ダザイが何か言い始めるよりも前に、カイラがダザイの背中に蹴りを入れた。誰にも手加減しないカイラの蹴りはダザイを一瞬で倒した。しばらくして、倒れていたダザイが口を開いた。本当に死んでなくて良かった。
「ここは......天国かのぉ?」
「いや、地獄だ」
カイラがすぐにそう言った。色々と皮肉がきいている。脅しだと思うが、カイラはもう一度ダザイに向かって構えた。それをみてダザイはすぐにまた口を開いた。
「分かったから、落ち着いてくれ。ゆっくり話をしてやろうぞ」
「やっと話す気になったか」
カイラはそう吐き捨てて、アクタがその後を引き継いだ。
「ダザイ、すまんな。話してくれるだけでいい。この集落の最近のことについて話してくれ」
「あぁ、わかっとる」
そう言うとダザイにアクタが手を差し伸べた。ダザイはその手を取り、立ち上がった。まるで、仲直りをした兄弟のようだった。




